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第三章 郁
全5章で完結します。
今回は、第三章 郁です。
しばしおつきあいください。
「郁はいいよなぁ。頭いいし。」
昼休み、あたしは友人数人とお弁当をかこんで、胸の中でくすぶっている受験とかいうやつについて、愚痴り始めていた。
「そんなことないって。勉強が好きなだけよ。いろいろ問題解いてるとね、なんだか、わくわくしてくるの。」
郁は微笑んだ。
「何が面白いのよ。いい子ぶるのもたいがいにしてよ。」
気が付いたときには、あたしはもうさけんでいた。
我を失っていた。
「ごめん、一美。」
郁は悪くない。悪いのは、あたってしまったあたし。
そう言いたかった。そう言いたかったのに…。
バシッ
額に何かがぶつかった。
反射的に額に触れる。流れ込んでくる想い。
言っちゃいけない事って
なあに
それを言わなかったら
万事 丸くおさまる
そんなテクニック
つかわなきゃなんないんだろうか
本当の心をかくして
みんなに
つかず はなれず
そんなテクニック
もう
つかわなきゃなんないんだろうか
まだ齢18
もっと素直に
心を打ちとけあいたい
額に触れた手のひらには、全力でぶつかって息絶えた、かげろう。
ありがと。素直になってみる。
「ごめん。郁。」
かげろうの姿は、もうなかった。
ありがとうございました。
次回は智子です。
それではまた、お会いしましょう。




