白線は夜空に魔法とともに
プロローグ~約束と中学卒業~
「ねぇ、約束して。絶対にそばにいて守ってくれるって、どこにも行かないって約束して」
そろそろ、残暑から本格的に秋へ移ろうかという時期、ごく普通の家の普通の庭で二人の子供が話している。
「もちろん、僕は君のそばにずっといるよ。約束だ」
「じゃ、指切りしよ」
女の子はそういって小指を差し出す。男の子は少し苦笑しながら小指を差し出す。
「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本の~ます。指切った」」
二人そろって言葉を発し笑いながら約束した。
「それと、もう一つ。」
女の子は顔を赤く染めながら男の子の額にキスをした。
「どうしたの?」
男の子が尋ねる。
「うん、君頭いいから忘れないと思うけどこうした方がこの約束がより一層特別で大切な物になると思って」
「確かに、今のは絶対忘れられないね。」
そして響く二人の笑い声、こうしてこの日は幕を閉じた。
「朝か、珍しい夢を見たな」
時計を見てみれば朝の五時三十分、一介の中学三年生の彼南 真治が起きるのには随分と早い時間である。
「やっぱり、今日でここを離れ戻ることになるからあんな夢を見たのかな。梨佳と彩香は元気かな」
そんなことを口に出しながら彼はカーテンを開け春らしい澄んだ空を見上げた。
しかし、その空の色は青くはなかった。正確に言えば群青なのだ。日没のような濃い青色。
四年前、彼が小学六年の時、青々としていたこの空は群青色へとその色を変えた。
選択戦争、そう呼ばれている。六年前この世界はそれまではなかった物を手に入れてしまった。
「魔法」一般的にはそう呼ばれている物、今までの常識や事象をすべて覆しかねないものである。
魔法が世にもたらされてから2ヶ月たったそれだけでこの世界の人々は魔法を現代のものとして扱いなれてしまった。全くもって人間とはほとほと物になれるのが得意らしい。
魔法が世にもたらした功績は大きい。車は化石燃料を使う必要性はなくなり専用の魔力増幅器により運転者の魔力をエンジンに伝え走るようになった。
電車は、古代の遺産として世界遺産に登録された。
医術の面では、出血多量による死など突発的なものは防ぐことができないにしろ専門の魔法師がいる病院に行くことで重度の病でも時間をかけることでほとんど完治できるようになった。
しかし、便利をもたらすものは不幸もまたもたらすのである。
魔法の登場とともにこの世界に姿を現したものがある。
「魔物・魔龍・魔鉱石」これらが代表されるものだが、魔鉱石は人間の持つ生命力に悪影響を与え、魔物・魔龍にとって少なからず魔力を持つ人間は格好の餌になるのだ。
魔法がこの世界に現れたのかはいまだにわかってはいない。しかし魔法の副産物として魔物・魔龍が現れたことは事実なのだ。
捕食しようとするもの、されまいと抗うものが同時にいるときに起きるものそれは戦争である。
人類と魔物・魔龍の戦争は二年に及ぶ歳月を経て人間側の優勢で幕を閉じたことになっている。
なっているというのは、今も戦争状態にあるからではない。国際会議の場で各地域代表は空の色を変えてしまうほどの大魔法を発動することを決定したその結果として魔物・魔龍のほとんどを封印することができた。
封印できただけで、根絶できていないから幕を閉じたとなっているとはそういういみなのだ。
「さて、着替えてこの街で最後のトレーニングに行くか」
真治は、パパッと着替えをおえて部屋を出た。
「さて、皆さんは今日で我が校を卒業するわけですが皆さんには無限の可能性と希望があります……」
校長先生やPTAの代表によるありがたいお説教を二時間も聞き続けようやく卒業式は終わった。そう、終わったのだ。
「今日で最後だな。もうここに来ることは二度とない。」
校門で後ろを振り返る。三年間見慣れた校舎を見上げ少しだけ頭を下げる。
「もう、来ることはないけど。三年間ありがとな」
そして、歩き出そうとしたのだが。
「お~い、南く~ん」
後ろから聞こえてくる声、間違えなく星が散っている。この声は絶対にあいつだ。
振り向いた真治の先には予想した通りの顔があった。
ショートの黒髪に大きめの目をした女の子。名前は進藤 葉子という三年間一緒だったクラスメイトだ。
「いいのか葉子俺なんかのところに来ているとお母さんとはぐれて迷子になるぞ」
冗談半分、本気半分で葉子に言う。
なんで、半分本気かって。それは葉子の身長がうちの学校の女子の平均である160cmをかなり下回るうえに性格が凄いおっとりの天然系なので一緒に行動していてもたまにいなくなったことに気付かないのだ。
もちろん、そんな人物が人ごみの中にいたらわからなくなってしまうのだ。そして、今日は卒業式である。卒業式と言えば家族や友達と別れを惜しむ場でもあるわけで人はとても多い。だから心配したのだ。
「も~またそういうこと言う、私が心配してきてあげたのに」
「心配してもらうのはありがたいんだけど、葉子だって家族と色々と話していただろ」
「私はいいの、お父さんやお母さんとはいつでも話せるけど真治君とはもう二度と喋れないかもしれないんだよ」
俺がこの街の高校に進学しないことは葉子にだけ伝えていた。俺には守らなくてはいけない約束があったから。
だから、高校生になるまでは叔父夫婦に厄介になっていたのだが来月から高校生になる俺はバイトも出来るし親父たちの遺産もあるので何とか一人でも暮らしていけるので元いた場所に帰るのいだ。
「そんなわけ無いだろ、俺のアドレスも携帯の番号も知っているんだから話そうと思えばいつでも話せるじゃないか」
そう、生きている人間にはいつでも会うことが出来るのだ。会おうとおもえば。
「それは、そうだけど。でも、やっぱりこうやって面と向かって話すのが最後になるということが大事なんだよ」
なおも葉子は食いついてくる。俺はなんか葉子の気に障ることを言ったのだろうか
「分かったよ。今日の五時から空いているか? 何でも好きなもん食わせてやるぞ」
何かは知らないが自分のせいと内心で結論付けした俺は謝罪の意味を込めて葉子を茶に誘った。
「ホントに! ありがとう」
「じゃ、また後でな」
約束を取り付けたので改めて校門を後にした。葉子も葉子で両親のところに戻っていった。大丈夫だろうか?
「何でもとは言ったが」
机の上に並べられたデザートの数々。午後五時三十分葉子と近くの喫茶店で先ほどの約束を遂行中の出来事である。
この友人、身長に反してよく食うのである。これだけ食っているのだから少しぐらい身長が伸びてもいいはずなのだがまったくもってこの栄養はどこに言っているのか。
「おいしいね、真治君も食べたら」
「いや見ているだけでおなかいっぱいだよ」
少し苦めに入れたコーヒーを飲みながら答える。確かにちょっと食べたい気持ちもあるにはあるんだがこの後お別れ会と称して叔父家族とのパーティーが自宅で催される予定になっているのであまり食べ過ぎると後で地獄を見るのでそんなに食べておきたくは無いのだ。
「なんか、私だけ食べちゃって真治君にうぅ」
「おい待て、何でそこで泣きそうになるんだよ」
「だって、私だけ食べていて真治君が食べないんだもん。真治君無理して付き合ってくれているのかなと思って」
誰にでも気を使える子。それが葉子だったことを忘れていたのかも知れない、これがこの子と過ごす最後の時間になるかもしれないということを知っていたはずなのに次のことを考えていて今目の前にいる子との時間をおろそかにしていたのかもしれない。
「わかったから泣くなってな。あ、すいません。ショートケーキ一つ追加でお願いします」
少なくとも、葉子との時間を無駄にすることは無い。葉子が言っていたとおり葉子とこうやって過ごすのが最後になるかもしれないのだから楽しんでおいて損は無いはずだ。
「やった。これで気兼ねなく注文できるね」
「おま、まぁいいか」
こいつ、自分が気兼ねなく注文するための布石だったのかさっきまで考えていたことが台無しになった気がしたがどうでもよくなった。どうせ三年間勝てなかった相手である。いまさら勝っても意味は無いそれよりも葉子との時間を大切にしようと思った。
そんな俺は時間の許す限り葉子と最後の晩餐?を楽しんだのであった。
いわずもがな、その後でパーティーで俺がどうなったのかは想像しやすいと思うが。
第一章 再会
「梨佳、今日から高校生ねがんばって」
「ありがと、母さん」
宮野梨佳今年から清林魔法専門高校に通う一年生である。
ショートカットの黒髪にやや大きめの目身長は160cmで運動神経抜群勉強ちょっと苦手の女の子である。
魔法専門高校、別名人類最後の砦を養成する為の高校である。
魔物や魔龍は封印できたがすべて封印できたわけではない。封印し切れなかった魔物・魔龍は六年前と変わらず人を食い続け世界を侵食している。
その、魔物・魔龍を討伐・捕獲するのが魔法戦闘を主体とした魔法士である。魔法専門学校はその魔法士を育てる学校なのである。
「梨佳、十分に気をつけろ。お前はまだ若いから私みたいに無茶をするなよ」
「分かってるよ父さん」
笑いながら、父へ返事をする。彼女の父も優秀なA+ランクの魔法士だったのだが、ある任務のときに再起不能の大怪我を負い魔法士を引退している。
魔法士にはその技術、魔力、制御力の三つの力を総評したランクが存在する。最上位はSSランクで個人戦闘から集団戦闘まで長けた魔法士であるこの国ではわずか二人しかいない超高ランク魔法士である。一方最も下はEランクで魔法専門高校に入学するには最低限必要な能力である。
「ならいい。でも、授業だけじゃなくて高校生活も楽しめよ一度しかないんだからな」
そういうと父は新聞に顔を戻してしまう。
「心配しているのよ。あなたのことを」
母さんは微笑んでくれている。
「わかっているよ母さん、父さん。じゃ言ってくるね」
「はいはい、行ってらっしゃい初日から遅刻なんてするんじゃないわよ」
「気をつけてな」
両親の声を聞きながら家をでると視界に満開の桜が目に入った。今は誰も住んでいない向かいの家、主の遺言で家はそのままでだが四年間も誰も住んでいないので草木は伸び放題、家も心なしか朽ちかけていた。
その中でこの桜だけはいつも誰かが手入れをしているのではないかというくらい満開の花を咲かせるのだ。実際先月から何回か手入れが入っているようで庭の草木はしっかり手入れをされており。住人が住んでいる気配はあるのだが誰が住んでいるのかは分からない。
それでも確信はある。この家に住んでいるのいは彼女の知っている人物ではない。否彼女が知っていた人物ではない。彼女が知っている家族は不慮の事故で死んでしまったし生き残った少年も叔父夫婦に引き取られたはずなのでこの家に住んでいるのは彼女の知っている人間ではないはずだ。
「今年も南さん家の桜が綺麗ね」
いつの間にか隣には母さんがたっていた。どうやら桜に見とれていて立ったままだったようだ。
「誰が住んでいるんだろうね。」
「さぁ、でも優しい人じゃないかしら、これだけ綺麗に整備してくれているんですから」
誰かは知らない、でも綺麗に整備をしてくれている。それだけで梨佳を満足していた。昔みたいに向かいの家にあの家族が帰って来た気がしたから。
「ところで梨佳学校はいいの結構時間たってるわよ」
「え、あ、いけない母さん行ってきます」
母さんに向けて手を振りながら走り出す。
「はいはい、行ってらっしゃい」
さっきも聞いた言葉を聞きながら梨佳は今度こそ魔法高校への通学路をちょっと早めに歩き出した。
でも、内心ではやはり向かいの家に誰が引っ越してきたのか気になっていたのだった。
「どんな人なのかな」
「なにが?」
「わ、びっくりした。彩香ちゃんいるならおはようぐらい言ってよ」
「言いました。でも梨佳ちっとも気づいてくれないんだもん」
倉科綾香、梨佳の小さいころからの親友で一番長く付き合ってきた友人である。
梨佳と違い赤みのある黒のロングヘアーに170cmと大きめの身長から中学時代はクールビューティーというあだ名まであった美人である。
また成績優秀で運動がちょっと苦手という梨佳と正反対の性格の持ち主である。
「で、何がどんな人なの梨佳ちゃん?」
綾香は、先ほどのことを聞いてきた。
「うん、それがね」
梨佳は綾香に家の前に誰かが引っ越してきたが誰が住んでいるかわからないということ話した。庭の手入れがされていることふくめて。
「へぇ、しん君の家に新しい住人ね」
話を聞き終えた綾香は何かを考えながらそう口にした。
「案外、私たちと同い年の子がいる家族だったりしてね」
「ええ、それはないよだって向かいの家にあいさつに来ないような人だよ」
梨佳は、笑いながら否定した。
そもそも、引っ越ししてきた向かいや隣の家にあいさつに来るものではないだろうか。それすらもしないということは他人とあまりかかわり合いたくないか世間体などを気にしない人物だろう。
少なくとも、自分たちと同年代の子供を抱える親がそんな常識知らな人だとは思えなかった。
「それもそうね、でも、気にならないその家の人物。」
「気にはなるけど」
「じゃ今日の放課後確認してみましょうよ」
綾香は興味津々の顔でそういってきた。
この友人、クールビューティーと言われているが外見に反していろいろなものに興味を示すアクティブな女の子なのである。
「綾香ちゃん本当にこういうこと大好きだよね。じゃ私の家に来るんだよね」
その性格を知っているから別に断る必要はないし、綾香を家に招待するのも久々だったから梨佳は普通に了承した。
「やっぱり気になるしねその常識知らずな人物が」
「じゃ、ホームルームが終わったら校門の前で待ち合わせしよ」
「OK。」
その後も休み中に何していたとか、駅前のお店に新しい服が入荷したのなどたわいもない話をしながら二人は学校に向かって歩いて行った。
*****
「四年か、たったこそれだけしかたってないのに結構変わったなこの町も」
口から、自然とそんな言葉が漏れていた。
今朝は中学時代と同様に朝五時に起きて、トレーニングをした後に登校しながら町を見て回ろうと朝食をとりながら決め。約一時間かけてゆっくり昔を思い出しながら登校してきた。
しかし、昔のように感じたのは景色だけで、建物や駅前などは開発が進み真治が住んでいた頃とは比べ物にならないくらい都市化されていた。
「変われば変わるものか、この学校もそうだしな」
彼の目の前にあるのは清林高校だ、かれも今日からこの学校の一年生として入学する。
「あれ、もしかして真治か」
名前を呼ばれたので振り返れば見覚えのない男が立っていた。
「え~と、確かに俺の名前は真治だが、誰かと勘違いしてないかな?」
高い身長とワックスでがちがちに固めてツンツンした赤い髪、これで短ランにサングラスをつけていたら間違いなくチンピラだろうが、目の前の男も真治と同じ清林高校の制服を着ているのでチンピラというわけではないらしい。
「やっぱ、わかんねぇか。春樹だよ。西野春樹」
「え、うそだろ」
正直に驚いた。春樹と別れたのは四年前小学六年生だから成長期を過ぎているのかもしれないが、春樹は四年目身長が145cm程度だったし服装も落ち着いたものだった。
「帰ってきたんだな、お前」
春樹が肩をたたきながら言ってきた。
「そうだな、でもまだ帰ってきたっていう感覚があまりないんだよな。昔の知り合いにあったのもお前が初めてだからな」
朝という時間もあってか、昔の知り合いはおろか人とあまり合わなかったしこの町に帰ってきたのも三日前だからまだ、自分のいるべき場所に帰ってきたっていう感じがしなかった。
「それはそうと春樹、お前はなんでこんなに早い時間にここにいるんだ? たしか新入生の集合時間は朝九時に各教室だろ?」
現在時刻は八時ちょうど、ちらほらと生徒の姿は見えるがみんなネクタイの色が赤や青で真治や春樹のように黒のネクタイの人物は見えない。
清林高校では、男子はネクタイ、女子は胸のリボンの色で学年がわかる。今年は三年生が赤、二年生が青で一年生は黒だ。
「あぁ、だって今ぐらいに来ておかないと大変だしな」
「なにが太変なんだ? 高校生の入学式で大変なことなんかないだろう?」
「お前、この学校に何人入学するか知ってるか?」
「三百人だろ」
「で、一学年何クラスか知ってるか」
「知らない」
魔法の専門学校でも他の高校と同じでクラスはある、魔法は個人の能力によりランク付けされるわけだが一般教養や魔法の資質によりクラス分けをしてしまうと高校生としてではなく人間としての恨み、嫉みが強くなってしまうので、この高校では適当に生徒を割り振って決めているはずだ。
「別にクラスでどうのこうのっていう問題はないだろ、どうせランダムなんだしな」
クラス発表は後でも確認できる。それより先に校舎がどうなっているか確認したかった俺は春樹に背を向けて歩き出した。
「お前、一学年5クラスだぞ。つまり一枚の紙に五十人が集まるわけだから今見ておかないと遅いろいろ大変だと思うが」
「見てくるわ」
前言撤回、初日から遅刻なんかしたら担任になる人物に目をつけられかねない。
そんなこんなで、春樹と一緒にクラス名簿を見に行くことにした。
「おっ二組だわ。お前は?」
春樹聞かれて、俺はおる人物の名前を探すのをやめた。
「三組だわ。いきなりクラス別になっちまぅたな」
春樹とは転校する前はすごい中がよかったから、一緒のクラスになれればいいなとは思っていた。
「まぁしょうがないな、実技では合うかもしんないからそん時はよろしくな」
「ああ、こちらこそよろしく」
「お前この後どうすんの?」
「クラスは確認したし、朝食を食べるときに集合場所の確認もしたから特にやることないな、暇だから校舎見て回ってくるわ」
実際、校舎がどうなっているのかは見に行こうとは思っていたから行動予定に問題はないはずだ。
「そっか、じゃ俺はこのままクラスに向かうわ。寝たのが3時だから眠いしな教室で寝てるわ」
現在8時15分、春樹と15分ほど話していたことになる。
「まずは講義棟からだな。この分だと、実験棟まで行くのは無理か」
魔法専門学校では、基本的に一般教養とクラスがある講義棟、魔法の性質を知るために使う実験棟、そして実際に魔法を使い実戦経験を学ぶ実習棟に分かれている。
基本的に魔法専門学校では魔物、魔龍と戦うための生徒を育てるため実習棟の存在が一番大きい。しかも、清林高校はその実習棟が講義棟と実験棟の間にあるため講義棟から実験棟まで行くのに5分近くかかってしまうのだ。
最初から時間つぶしのための校舎周りなので近場の教室を二つぐらい回ればいいなと決め、講義棟に向かうことにした。
*****
「一緒のクラスだったね綾香ちゃん」
「そうね、また梨佳と一緒に三年間過ごすことになるのね」
綾香と一緒に清林高校の校門の前についたのは20分前の8時40分、しかし、予想以上に生徒の数が多くクラスを確認するのに10分近くもかかってしまった。
「早くいかないと遅刻しちゃうね」
入学早々遅刻は勘弁願いたいところなので、梨佳は綾香と走り出した。
「でも、また同じクラスでよかったかもね」
「なんで」
「困ったときに綾香ちゃんに助けてもらえるもん」
運動はできるけど、勉強がちょっと苦手な梨佳、勉強は得意だけど運動がちょっと苦手な綾香、正反対ではあるけどそれゆえに仲の良さはすごくいいとても絶妙な友人同士なのだ。
「あんたねぇ、まぁいいけどね私も体育や実習の授業で助けられていたのは本当だしね」
そんな会話をしていたからだろう、教室を目指しながら走っていた二人は曲がり角、ちょうど理科室の方から人が歩いてきたのに気付かなかった。
「あ、梨佳あぶない!」
「え、わわ」
慌てて、走るのをやめてブレーキをかけたが完全に止まることはできずに梨佳は曲がってきた人にぶつかってしまった。
「いったぁ~」
「ちょっと梨佳大丈夫?」
ものすごい勢いで突っ込んでいった梨佳を心配しながら綾香は梨佳に駆け寄った。
「うん大丈夫、運動が得意でよかったよ。ぶつかる寸前に勢いはかなり殺せたから大丈夫」
「もう、全く心配させないでよ。初日から病院ごとなんて遅刻以上に担任からマークされるわよ」
「そうだね」
笑いながら、舌を少し出す梨佳に少し呆れながらも冗談半分、本気半分な声で綾香が声をかけた。
なんで冗談じゃないかって、梨花も綾香もそしてぶつかられた人も魔法が使える(最下級クラスの魔法のみ)ので少しの怪我ならすぐに治せるが、いくら魔法の学校といっても初日から新入生が魔法を使うのはためらわれるし、失敗した場合のリスクもある、そしてなによりいくら魔法高校でも発動可能な魔法レベルがあり、それを超える魔法の発動などは実技や担任の許可なく発動することはできないという校則があるのでたとえ自分たちが使えるのが最下級の魔法だとしても上限レベルが分からなければ使うのはためらわれるのだ。特に彼女たちのような新入生には
「所で、無事なら早く降りてもらってもいいかな、目のやり場に困るから」
そんなことを考えていたら被害者の声が聞こえてきた。
勢いは殺したといっても梨佳はものすごい勢いで突っ込んだわけで、そうなると突っ込まれた相手は当然下敷きになるわけでつまりどういうことかというと梨佳が馬乗り状態で突っ込んだ相手の上にいる状態なのである。
「わわ、ごめんなさい」
慌てて、ぶつかった人から飛び降りる。
「大丈夫ですか? 私遅刻しそうで急いでて」
「いや、けがとかはしてないから大丈夫そっちは大丈夫?」
そういって、ぶつかった相手がこちらに顔を上げる。
「「あ」」
そして二人同時にびっくりした声を上げた。
「梨佳か?」
ぶつかった相手が聞いてくる。しかし、梨佳は驚きのあまり声を出せないでいた。
「ちょっと梨佳大丈夫なのってしんくん」
声を出せない梨佳を心配した綾香もぶつかった相手を見て驚いた声を上げていた。
「お、綾香も一緒かお前らは変わってないんだな」
真治は、笑いながら立ち上がった。
「あなたもね、四年もみなかったらふつう変わっているんじゃないの? 身長とか顔つきとか」
「顔つきはともかく、身長は変わった方だと思うけどな」
「どうかしらね、梨佳はどう思う?」
「え?」
綾香は変わらずに真治と話しているが梨佳はまだ驚きから回復しきれていないでいた。
「あんた、あたしの言っていたこと聞いていた?」
綾香はあきれた声で綾香に声をかけた。
「うん、ちょっとね変わったとは思うよ。でもしん君はしん君だよやっぱり」
約束したから、いつかは帰ってくると思っていたし帰ってくるときは連絡してくれると思ったいたのだがあまりにも突然帰ってくるから梨佳は正直かなり驚いていた。
「でも、いつ帰ってきたの? その制服ってことはこの学校ってことだよね、それに……」
聞きたいことはたくさんあったがその前に真治に止められてしまった。
「とりあえずは教室についてからだな、この時間で話し込んでいたら初日から遅刻っていう最悪のスタートになるからな」
真治が見せた腕時計の時刻は八時五五分、あと五分で集合時間だった。
「そうだね、急ごうか」
「ええ、急ぎましょ」
綾香と梨佳が一緒に走り出すがその背中に真治の声が重なった。
「言い忘れてた、梨佳、綾香ただいま」
梨佳と綾香は満面の笑みで答えた
「「おかえり」」
初投稿です。
前から書いてみたいと思っていたので頑張って続けていきたいと思いますが
仕事しながら、学生しながらの投稿になりますのでもし、続きが気になる方は気長に待っていただけたらなと思います、
また、小説を書くもの初めてなのでアドバイスなどいただけると泣くほど嬉しいです
それでは、今後もよろしくお願いします