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夜会の断り


 ぼんやりと見慣れない丁寧な私宛の文章の招待状を幾度も黙読してから、やっと冷静に内容が理解出来た。


 簡単に言えば、私を歓迎する為に王家が主催でうちうちの夜会を来週の日曜日に開くから来てくださいと堅苦しく書いてある。


 うちうちと言えば親戚とか親しい友人関係とかの少ない人数かもしれない。

 そんな場だとしても居候の私は遠慮したい。

 私は巻き込まれただけで、ここに来たくて来たり、呼ばれて来て居る訳じゃない。歓迎という気持ちは私も素直に好意的に受け取れるけれど、歓迎とう会に出席する気にはなれない。


 しかも、確かその日は順調だと生理がくる。私は割と順調なタイプなので日記でそう記憶している。しかも重い日に当たりそうだ。そう思うと今から気も重くなってきた。


 嘘のない上手い体調不良の理由ができた事に、招待状を繰り返し読んでみて良かったと思う。それに、その時のここの対応が分からず心配していた所だったからたずねるには調度いい機会だ。いきなり聞くには恥ずかしくて聞きにくいと思っていたから。


 ネガティブ思考が変なポジティブに動いたらもう、夜会を仮病でサボる以前に生理痛が酷くなる予定なので招待は受けられないと決まった。


 いや、元から行きたくないから行けなくなる気満々で、行かなくて良かったと妙な喜びすら感じて決めてしまう。


 当たらなかったとしても、慣れた親戚や従兄弟従姉妹達とで法事で遊んだ集まりの記憶しかない私が、いきなり王家の親戚友人関係の知らない人達の中で何を話して、どうすれば良いか分からない。そんな中で食事をするとはハードルが高すぎる。せひに、その場の人達だけで楽しんで貰いたい。


 ここに私の親や親類か、せめて気を許せる人が居ればいいが、全く居ない他の血縁関係の中に一人では余計な気を使いすぎるばかりの予感もする。そして、私が何か失敗する自信が今からある。絶対する。こそこそ笑われて凹みたくない。


 だから、誰から見ても場違いな私は断るとすぐにリンダに伝えよう。


 けどせっかくのお誘いだ。

 ネガティブなのも優柔不断なのも自覚している。

 だから、色々お世話になっているのだから、くちくち悩まずに迷惑やドタキャンするより断るなら早い方がいい。キッパリ、スッキリとしよう。

 その時に忘れず女の子の知識が無いことで慌てないように方法をリンダに聞いておこう。


 招待状を見つめての一人脳内会議は、一方的な方向のまま終了した。大きく息をついて、話がしやすいリンダが部屋に居てくれた事に感謝しつつ目を向けた。


 するとそこには、テンション高いように瞳を輝かせる乙女が胸の前で両手を組んで私を見据えていて一歩引いてしまう。

 よく見ると、その潤んだ大きな瞳で可愛いらしさ倍増のリンダが犬のマテの姿勢と重なってしまう。


 目が合い言葉を聞いた途端に私は負けそうになってしまった。

 リンダが待ち切れなかったかのように弾丸級で話はじめたからだ。


「ユウリ様。日にちもございませんから、これから総侍女長に夜会の報告をしてまいります」


「報告はいらないよ。うちうちみたいだし、これは断るつもりなのよ…ね?」


 私の言葉に息をのむ様子のリンダだけど最後まで言った。


「ユウリ様!王家主催の内輪の夜会でございますよ!人数は限られておりますが、その意味は限られた方々の特別な夜会という事なのですよ!招待も限られており参加したい者が誰でも参加出来る夜会ではありません!

全て私共でご用意させて頂きますのでユウリ様が心配するような事は何もございません。素敵なドレスを始め躊躇なさらないようおつかえさせて頂きます。私共にお任せ下さい!」


「いや、そんな夜会ならフォルに私から断るから…。最近、調子が悪い気がするし。」


 私の嘘の前振りに何故か目を見開くリンダだが、私も負けられない。


「フォルニール様を愛称で呼ばれる仲なんですね…。わかりました。けれど、体調不良も含め総侍女長に報告はさせてあただきます。今日はご静養下さいませ」


 目線を強く煌めかせて私をみつめて予想外の返答をするリンダにムキになってしまいそうだ。


 だぁかぁらぁ。フォルとはそんなんじゃない。本人相手には、フォルニール様と言ってるけど、つい口から出てしまっただけだ。

 そんな風に思われるなら、なおさら行きたくない。ただでさえ堅苦しくて緊張するのわかりきってるじゃん。

 しかも何か失敗してドレスなんか汚したらどうするんだ。気になって恥ずかしくてたまらなくなるでしょうが。


「それでも総侍女長には不参加と伝えてほしい。でね、あの、その日…生理にあたりそうだしどうしたらいい?」


 リンダとはいえ恥ずかしくなりながら忘れず聞けた。


「まぁ!大丈夫です。全てお任せ下さいませ」


 その言葉に嬉しそうな顔をしてリンダは、礼をしたあと素早く部屋を出ていった。


 リンダの態度の意味がわからない。もう今日は休みにしてもいいかと考えたけれど、勝手に休みにできない小心者の私は、うっかり体調不良になる予定だと書かないように気をつけながらフォルに断りの手紙を書いた。


 そのあと解説を進めても、ちっともはかどらない。


 頭の中で、すぐに行かないと決めて周りに悪い気がしたり、ほんの少しの憧れも出てきたからだ。


 日本人の私がこれからドレスを着る機会は、あって結婚式の時くらいだろう。それも機会があるとは限らないと気がつくと憧れが出てしまった。


 解説の手を止めて、断りの封書をみながら想像してみる。


 高い天井の広い天井と豪奢なシャンデリア。大きな花瓶に華やかな花がバランス良く配置され、周りにはタキシードやドレス姿のきらびやかな美形の老若男女。


 頭の中はおとぎ話の舞踏会だ。


 その中で飾られた花近くの壁にへばり付くように私は立つだろう。ドレスが浮くくらい似合わないだろう。

 私が見つめ先はダンスや談笑している老若男女だろう。


 多分そうなる。元から人混みも苦手だし異世界の中にある異世界だ。


 以前に生理の体調不良で保健室に行ったりもしたから、そんな場でだれかに迷惑かける事はいやだ。やっぱりハッキリと断りの手紙を書いて良かった。正解だ。ドレスは、いつか結婚式をあげられる時に着られたらいいや。


 一人頷きながらリンダたくす手紙を引き出しにそっとしまった。


 そのあと部屋にきたのは以外にも総侍女長だった。前と変わらない厳しい先生の態度に、背筋を伸ばして丁寧なお辞儀で迎え入れた。


「ユウリ様。私にそのような態度は必要ありません。どうかおかけください。


「はい」


 不要と言われても、どうしても厳しい先生と話をするようで緊張してしまう。ソファーに浅く腰を降ろし、膝の上に手を重ね足も揃えると姿勢に気をつけて隣に立つ総侍女長を見上げた。


「リンダから話は聞きました」


 そう切り出されたので、きっぱりと生理予定と普段の生理中の様子を話てフォル宛の断りの手紙を言付けた。

 恥ずかしいので理由は、内緒でともお願いも忘れていない。


 そのあとでトイレの前の洗面所で生理用品の場所と使用方法を教えてもらい落ち付けた。


「ユウリ様のご心配も分かりましたが、私はお届けするだけです。それに前にも申しましたが、夜会でなくても礼儀作法は覚えておくと役立つ物です。明日から練習を始めましょう」


「ごめんなさい。よろしくお願いします」


 どこか視線が柔らかくなった総侍女長が部屋を出るのをドアまで立ってお辞儀で見送った。そして、ドアが閉まると一気に緊張がとけた。


 なんだか、ここにきて初めて何かをやり遂げた気がする。これで、問題が一つ片付いたとウ〜ンと声をだして大きな伸びまでしてしまう。


 爽やかな気分でお茶でも飲もうかと振り向いた途端に思い出してしまった。


 そういや、覗かれて盗聴記録されてたんだった…。多分、上の人は男の人よね…。なのに生理の辛さと心配を語る私って…。


 顔が赤くなるのが自分でも分かる。慌てて気楽に出来る洗面所に駆け込んだ。





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