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続く来客3


 よくよく普段を思い返してみると、これまで私がついた嘘や胡麻かしは、よく見破られてこっちが何でバレたと驚かされてきた気がする。


 まさか今回も?


 フォルに驚かれていたし、普通は妖精や精霊が見えないんだろう。なら、私もそのように振る舞わなければならない。祝福を受けたなんてバレてしまったら、この世界での一般人生活を送る夢が遠ざかってしまいそうだ。


 嫌な考えに陥ってしまい、隣に座るフォルの様子を横目で伺うと、フォルも何やら考えこんでいる様子だった。


 それにしても、ソファーに座り組んだ足は、スラリと長くモデル並にスタイルが良い。俯きがちに片手を顎にかけている様は、声もかけるのも憚れるほどの世界をつくっている。おまけに、緑の瞳を持つ整った顔に綺麗な金髪が日の光に煌き全体がキラキラしている。私の世界にフォルがいたら王子様と騒がれること間違いなしだ。


 いや、この世界のこの国で王位継承権二位の本当の王子様なんだけど…。何故かあまり緊張せず普通に話せてしまう。美形なのに。

 初めに気持ち悪くなるほどのお世辞に引いてしまったからだろうか。


 今日は、フォルと構えず普通に話せてしまうまとまった時間があったので、改めて絵本の世界の王子様のように感じてしまった。


 フォルの王子様ぶりも、周りからみれば完璧なんだろう。平凡な私にさえ標準装備で、気持ち悪く聞こえるくらいのお世辞で褒めたり、レディのようにエスコートしてくれる。やめてほしいスキンシップもだ。


 今も仕立の良さそうな、前よりフリルの少ないシャツと紺のパンツとロングブーツを厭味なく着こなしているフォル。


 もし、フォルが少し昔の白雪姫の絵本の世界の王子様なら、馬は必ず白馬だろう。そして、それに跨がりキラキラの笑顔でいるのだろう。


 そして、煌めく金髪を顎ラインのストレートで毛先を内巻きヘアにして、頭上には小さな王冠を付けているはずだ。

 豪華で繊細な刺繍のついた赤いジャケットに白のマント。青と紺のストライプのかぼちゃパンツ。そして忘れちゃいけない白タイツ。


「姫。あなたのように一瞬で私を虜にする姫に、これまで会った事がありません。美を司る女神も我が身に気が付き隠れてしまいそうなお美しさだ。ぜひとも私とダンスを一曲お付き合い願えませんか」


 舞踏会でも、そんな姿で椎名さんのようなお姫様をエスコートするんだろう。かぼちゃパンツに白タイツで…。すね毛が飛び出さなきゃいいけど。いや、きっとすね毛も金色だろうし、周りも気をつけているはずだ。


 もし今、隣の美形な王子様がそんな姿をして、ポーズを決めて世界を作り真剣に考えこんでいたら…。


 だめだ。笑える。爆笑ものだ。


 笑いが声にでそうになってしまい、妄想から抜けだそうと慌てて首を横に振る。


「ユウリ楽しそうだね」


 声の方を見ると、こちらを伺っていたらしいフォルの緑の瞳と目が合って分かった。


 そうか。私の世界から知っている椎名さんにフォルが似ているから、初めからあまり緊張しすぎなかったんだと。


 今頃になって、閉じ込められている椎名さんの存在を思い出した私は冷たい人間なのかもしれない。

 いや、椎名さんと友達でもなかったし、自分の状況を考えると仕方がないはずだ。


 けれど、自然と庭に目が向かい椎名さんがどうしているかと考えてしまい、笑いも引っ込み心が痛くなってきた。


 椎名さんが罪を犯して罰せられているにしても、厳しい生活になっているだろう。

 反対に巻き込まれた立場の私は、周りによくしてもらっている。周りからは当然とはいえ、私的には割り切れない部分もある。


 やっぱり早く、客人の立場から離れて働いて生活した方がいい。この世界の常識や身の回りの事や働く事への不安はあるけれど、特別な役割も無いのに今の待遇は良すぎる気がする。


 自分の目標を改めて確認して席を立とうと腰を浮かせたら、フォルに手を引かれてまたソファーに逆もどりしてしまう。


 何かと思ってフォルを見ると微妙に嬉しい言葉。


「ねぇ。ユウリ。城外に行ってみたいんでしょ?なら僕の付き人にならない?市井にも連れて行ってあげれるよ」


 すぐさま付き人をお断りして、市井への誘いだけを熱心にお願いした。


 働きたいが、高貴な方との関わりは最小限にしたいんだと、やんわり訴えてみたが通じただろうか。


「ユウリの気持ちも分かるけれど…。僕にも叶えたい願いはあるんだ。大丈夫。市井の生活にならないとしても、さっきのようなユウリの笑があふれる事になるように考えてみるよ。」


「いや、いずれは市井で一人で働いて暮らして行きたいんです」


「ユウリの頬を涙で濡らしてしまうような事はしない。約束しよう。例え望まない事で涙を飲んでもらう事になったとしてもね。大丈夫。飲んだ涙はいずれ喜びの涙となり、この柔らかな頬を濡らす事になる。その時は、ずっと僕が隣にいるから」


「それって…」


 ぜんぜん大丈夫に思えず、漠然とした不安が沸き上がる。けれど、フォルは時間だからとキラキラの笑顔で指先に口づけて出て行ってしまった。


 もう、誰が来ても絶対にドアは開けない。

 それには、寝てしまうに限る。起きていても、振り回されるか噛み合わない会話ばかりだ。寝る。


 心に決めて、テーブルの上もそのままに寝室に向かった。




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