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不思議な来客達2


「おい悠理、大丈夫か?」


 幽霊ではないと分かれば、慌てたような声に温かみを感じる。もう怖くもない。あの可愛く遊び回る小さな妖精達の上の精霊ならば大丈夫。

 単純なもので、予想もしていないファンタジーに脱力するだけだった。


「大丈夫です。お茶を用意しますからソファーへ座って下さい」


 ここでも私を止めようとした精霊達と少し揉めたけれど「大丈夫です」の一言で押し切り何とか一人でお茶の用意を始められた。その頃になって、やっと落ち着けてきた気がする。


「なんだかやけに落ち着いてない?」


「そうだな。少しつまらんな。元気は出たようだが」


「小さき者にも怯えて可愛いらしかったのにね」


 つまらないとはなんだ!私で遊ばないでよね。


 後ろからもれ聞こえる声と感じる視線に、背中をムズムズさせながらそんな風に思う。けれど精霊達を見ないように、集中して緊張しながら作業を続けた。

 なぜなら、私の入れるお茶は気を使うクロスですら言葉を選び美味しいとは言わないからだ。この状況でリンダを呼ぶわけにもいかず、私は頑張っていると自分で自分を勇気づける。


 これまでの時間で妖精達とは楽しく意志疎通して遊べるようになって嬉しかったし、小さな身体で精一杯の得意とする事を見せてもらえて力の凄さを実感していた。

 水、風、火を何もない所から生み出した小さな一人の妖精達の力。


 妖精でも感動したのに、その上の精霊……。うわお!

 最早、未知の生命体すぎて神々しくすら思え対応に困る。さんざん心中で悪態ついて、態度も受け答えも悪かったけれど大丈夫かな。きっと大丈夫。何もしていないもの。

 もしかして、この精霊達の力を借りれば世界征服も夢じゃないかもしれない……。面倒だから、やらないけどね!ここの世界征服なんかより、私の世界に帰りたいもん!


 手順を進めながらも、自分の中から不思議な高揚感が湧いてきて、テンションの浮き沈みがどこかおかしすぎる。それに自分で気が付きながらも思考は止まらない。

 それでも顔に出ないように気をつけながら、お茶の用意をテーブルに整える。改めて見回すときらびやかで豪華絢爛な精霊達だ。


 精霊達のは、それぞれ光、闇、風、火、水、土を司っているそうだ。髪の毛の色や容姿から安々と誰がどの分野か想像して予想はつく。そして、それは当たった。


 光の髪は金色に輝きニコニコと笑っているが侮れない。闇は黒い髪で横柄な態度だけど、どこか安らぐ。そして二人は、双子のように容姿など似ている所があるが持つ雰囲気や言葉使いは違う。


 細身ながらスタイルの良い男前な言葉を話した水は青色が薄くつき透き通る髪。土は緑の髪に大きな胸やくびれた腰よりも穏やかに包み込むような暖かさが印象的で、同じ女性でも魅力が全く違う。

 

 私に背中温もりを感じさせた気配は火だったらしい。その髪は、温もりを感じる少し長めの艶やかなオレンジ色。

 風と火が座る三人掛けソファーに呼ばれたので、おずおずと二人に挟まれるように私が座る。そして、精霊達が優雅にお茶を飲む仕種に見惚れながら、感想をドキドキしながら待った。


「やっと、近くで悠理の顔が見られる。触れられる。受け入れられつつるし、俺は嬉しい」


 すぐ隣でカップを置く小さな音が聞こえると火の言葉と逞しい腕に肩を抱かれて気が反れてしまった。膝にも暖かい大きな手を置かれて密着しそうな程の距離なのに、何故かいつもよりなぜか戸惑いが少ない。いくら触れる感触が人と同じで美形でも精霊だからだろうか。


「それにしても……闇のと同じ髪色か……ん?」


 火は私の髪をいじりながら、不機嫌に呟いていたのに何かに気が付いたようだ。


「言語に防御か……。人としては大したもんだけど、なぁ?どうする?」


 どうやら、ピアスの魔具の事らしい。火が他の精霊達に向かって聞きながら手の平を向ける。すると、それぞれの精霊も手の平を合わせるように向けた。


「わかった」


 火に触れられ熱に浮されるような私に向かいニヤリとした凄みのある笑みを火は浮かべるけれど、私には全く意味がわからない。ただ、煌めく瞳の深紅に見とれていたら両サイドの髪をかき上げられ耳を出された。


「可愛らしい耳だ」


 顔を傾けながら近付いてきて、何を思ったのかピアスを付けた耳を唇で挟み暖かい舌で舐めらた。


「な、ななな何を……」


 流石に私も耳を押さえ、身体を引いて距離をとると背中が風にぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさい」


「大丈夫だよ」


 首だけ振り向いて謝ると、そのまま包みこむように風に抱きしめられた。


 いやいやいや。

 抱きしめる必要はないでしょう。


「風……返せ」


「火の物ではないだろう。他のものも悠理に構いたくて仕方ないんだぞ」


 周りの精霊たちは、絡む火を爽やかに交わす風の続く口論を笑いながら見守っている。けれど、私の中ではまた悪い癖が始まっていた。


「それに悠理も困っているようだった」


「風のお前が悠理ばかり構ってどうする。所詮、悠理は人間だ」


 私を擁護する風の言葉に噛み付く火。


「なんだ?ヤキモチか?」


「違う。お前の態度が気に入らないだけだ。見てみろ土の顔を。風のお前があんな寂しそうな顔をさせてどうする。土の気持ちくらい分かっているだろう」


 その言葉に風はムッとしたように私を腕から解放すると、火に向き合う。


「そう言うなら、こんな所で文句言ってないでお前が慰めに近くに行けばいいだろう。俺に対する遠慮か?それとも、そんな度胸はないのか?」


「なんだと!」


 そんな中で笑い声に現実に引き戻されると、妄想のように水に慰められる土の精霊を巡り素直になれず揉める風と火の精霊の争いは無い。目の前では皆まとまりながら仲良く話していて賑やかだ。

 良かった。精霊が私情で喧嘩したら絶対に災害が起きそうだ。無力な人間が一番泣き迷惑するだろうと、困った妄想を掻き消した。


 正面の対となる三人掛けのソファーには水と土が座る。その左右の一人がけには光と闇がいる。

 誰、一人欠けても自然の摂理も私達の生活も成り立たない精霊達だ。


「その祝福や加護って……なんですか?」


「加護は我等の守り。祝福とは別の力だ。祝福や加護を与えても、気が付かない者も多い。ただ我等の気持ちだ。我等の存在にも気付かないのだから、断りも取り消しもあった事がない」


 いや、闇。それって一方的だよ。私の場合は取り消し出来そうじゃん。


 詳しく聞けば、精霊が祝福を授けるということは友好の証しらしく、困っていたら力を貸してくれる約束のようなものらしい。さっきの火の行為は、防御のピアスに加護を付ける為らしい。

 そして、今の私が妙なテンションでいるという事は、彼らの力を私が受け入れつつあるかららしい。私の感情すら勝手に変えてしまうような力の大きさが少し怖くなる。


 小さな妖精達が遊ぶ代わりに助けてくれる約束をしているから、精霊の力なんていらない。密かに魔力がなくても、一人で町でも目立たずに生活しやすくなるかもと目論んでいた。


 特別な力が無い事に落ち込んでもいたはずなのに、祝福が精霊の自然の力となると壮大さに怖じけづいてしまう。無駄に想像力がある自分が忌まわしい。


 魔力が当たり前のこの世界で、小さな精霊と楽しく暮らしながら力を借りながら、一人で暮らして帰れる日を待つ。やっぱり、これを目標にしよう。


「あの……でも……その、取り消しをお願いします。今のままで満足していますから」


「初めに精霊の祝福を受け、受け入れて友となると頷いたのは悠理だ。取り消しのやり方は忘れたしな。まぁ、遊びにはくるが害になるような事はしない。安心しろ」


 余りにの答えに口が空いてしまう。知らずに頷いた過去の自分の頭を持って無理矢理横に振りたくなった。

 そんな間も話しを聞く事に、何故私なのかと疑問が深まりぶつけてみた。


「にこやかに小さき者達と話をし、楽しげに戯れていたからだ。それだけだ」


 それだけ?


「きっかけは、闇のいうとうりだよ。あんな風に妖精達が見えて会話して遊べる人間は貴重なんだよ。仲良くしたいじゃん」


「風のは、よく妖精から話しを聞いていたからな。悠理は無魔力だから祝福の力に当てられるかと心配したけど、身体の調子は悪くなさそうだからもう大丈夫かも」


 なんだって?大丈夫かも?害あるんじゃん。


 話の内容よりも最後の光の言葉がひっかかる。


 そんな危険な口づけだったのに、そんな理由だけ?


 一瞬で浮されていた様な熱が引き、不安定な感情が落ち着き冷めた目で精霊達を見回す。


「悠理。馴染んだぞ。良かったな」


 褒めるような口調の火から伸びるてくる腕を避ける。もう、神々しさも薄れ腹立たしくなってくる。それからも、精霊達の話は続いた。


 魔力が無かったり極端に少ない人は、自然な魔石から滲み出る魔力には当てられなくても、強い魔力や純粋な精霊の祝福の力には当てられる事があるらしい。

 なら、勝手に私にも授けないで欲しい。


「祝福に当てられたらどうなるんですか?」


「う〜んとね。体調が長く悪くなってから祝福が弾かれたり、受け入れられたり。極端に力が少ないと……あ。悠理は大丈夫よ。しっかり受け入れている」


「そうよね。どうなる事かと思ってたけど初めから大丈夫だったわ」


 勝手に私の味方と思っていた土と水の深く聞きたいような聞けば後悔するような冷たい言葉。普通、無魔力には大変な危険があるなら止めるだろう。


「悠理の体内には、魔力が無い。稀なる中の稀だ。だからこそ我等をこれほど感じ、我等の祝福を受け入れられると感じたから与えただけだ。だから、初めは面識のある土と光と我と三人だったろう?」


「闇と光と話しみても祝福を与え、より仲良くなれると確信したの。これまで、精霊使いと呼ばれて私達の意思が伝わり力を使える者もたまにはいた。けど、悠理ほどの者は稀なのよ」


「稀……?」


「そうだ。精霊使いではない人は、我らを認識した途端に魔力で攻撃をかけきた。小さき者を見つけた途端に金欲に走り捕獲しようとした。あげくは、己や欲深きものに捕まり私利私欲に頭を巡らせるものが多い。誰彼かまわず手を差し延べられる訳がなかろう。精霊使いか、前に我等が祝福を与えた人間のような者かは見極める」


 聞きたい事はたくさんあるのに、話しは途切れないず肝心な事が口にできない。もどかしくなりながら話を聞いていた。


「それに、城内は使う魔力が他より数段に濃い。その中で魔石を無魔力の者が身につけ、魔力にあてられず無事でいる事も珍しい。城下ならば無事だとしても、繊細な者ならば体調を崩しても不思議ないはずなのにな」


 私は神経が図太いとおっしゃりたいんですね。お腹に脂肪が貯まる身体に似合って神経も太いのかも知れないですね……。チッ。


 じゃあ、聞いてやる。

 また稀な存在になってしまった自分に落ち込むよりも大切な事だ。


「あの……他にも稀に私みたいな人がいたって、どんな人だったんですか?」


 私が稀と分かるくらいの経験があるなら、どんな人だったか教えて欲しい。もしかしたら、私と同じ異世界の人かもしれない。


「闇は相変わらず重いよね。だから悠理に、あんな神妙な顔ばかりさせるんだ。」


 私の声は光の言葉に笑う精霊の声と重なり華麗にスルーされた。


「僕と闇が一番に悠理を見つけ出したんだよ。ね、悠理、僕らは君が好きで一緒にいたいだけなんだ。だから……お願いだから、そんなに怯えないで。あ、誰かくるよ。さぁ、そろそろ帰ろうか」


 さらに、精霊達は人の話には興味がないらしくあまり聞かない。そして、気まぐれらしい。


「あ、待って……」


 追いかける私の呼びかけは無視して、徒歩でベランダに向かっていく。


「必要があれば呼べ。呼ばれなくても、また来る」


「今度は、僕一人でも来るよ」


 早い歩みの精霊達に追い付けた時には、皆がベランダから飛び立ち空に浮いた所で光と闇に言葉をかけられた所だった。

 私と精霊達の足の長さが違いすぎて追いつけなかった事が、とても悔しくなる。


「だから待ってって……」


 呼べと言うのに、待たずに飛び去る精霊達の姿を見送るしか出来ない。私の世界に帰るヒントが遠ざかるようで歯痒くなるばかりだ。


 ポーン


 私の後ろで、精霊達が言ったとおり来客を告げる壊れた様にしか聞こえないインターフォンが鳴った。それが、まだ話し足りない張り詰めた気持ちと重なり、余計に間抜けに聞こえてしまう。

 膝から力が抜けてベランダの柵を支えに大きなため息が出てしまい、更に脱力してしまった。


 そんな中で、今度インターフォンに絶対「ピン」を付けて貰おうと心に決めた。




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