賢者の質問
そうしながらも私はいろいろ考えていたのですが、状況がいまいち解らないので、相手の出方を窺いながらも、情報を引き出そうという結論に落ち着きました。
それで少し姿勢をただし、猫型装置を手に取ったのでした。
「では、始めます」
それを見計らったかのように、当然監視カメラのようなもので覗かれているのでしょうが、天井から声が流れました。私はあたりを見回しカメラやスピーカーを探しましたが簡単には見つかりませんでした。ついでに門番の様子を窺いましたが、そのままドアの前に立っていました。
「あなたは今朝、食事をしましたか?」
Y
「あなたの両親はご健在ですか?」
N。
「兄弟姉妹はいますか?」
N。
「あなたはたばこを吸いますか?」
N
「結婚していますか?」
N。
「恋人はいますか?」
N。
その時後ろで音がして、振り返ると門番が衣装?を脱いでいるところでした。仮面をとって長い髪を少し揺らしてから手で梳いています。例の彼女であることは明白です。甲冑のようなものは取り除かれ、白い水着はたぶん白いブラウスで隠されていました。タイトなスカートに緩めの上着を着ています。その彼女は少し近づいてきて、足を組み私の斜め後方に座りました。
それからも質問は続きましたが、私は上の空というほどではなかったのでしたが、考えるような内容もないため機械的にボタンを押していました。
たぶんこれには質問の意図を探らせないためのダミーの質問が加えられているようです。例えばあなたはコーヒーが好きですか、のような質問はこの場で意味をなしていないように感じました。
「これで、質問は終わります」
私には質問が許されなかったので、ひどく恨めしい気になっていました。
すると彼女が立ち上がってこちらの方にやってきました。
「それでは、その書類にサインをしてください」
と天井から声がします。




