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愚者の面接



のど元過ぎれば熱さ忘れる、という言葉がありますが、また借金も催促がなければ忘れて過ごせるように、どうしたんだろう、と思いながらも数日が過ぎると、後遺症が消えるようにそのことは忘れてしまいました。散歩の途中で下手な猫のビラを見ることもなく、「楽園」マークの美女も消えてしまいました。と言っても実際には彼女に会ったこともないので、その画像を見かけなくなった、というのが正しい言い方なのかもしれません。時どき、ドキッとすることはあるのですが、例えばビールの宣伝ポスターのモデルが少し似ている気がしたりですが、彼女の微笑みとは全然違います。彼女の笑顔は営業用のそれとは異質のものなのです。

でも、おおむね忘れ去られていたと断言できます。私が再就職活動で忙しくしていた、という事情もありました。


それで10日ほど経った日、私は一部上場の某シンクタンク系の会社の面接を受けていました。途中採用の募集があったからですが、まあ無理かなと思いつつも、万が一という可能性に懸けて都心のビルに足を運んだのです。

ひどく広い部屋でした。正面に演壇があって、小さな講堂といった感じの部屋なのですが、やたらと椅子が置かれているのに、私しか応募者がいないようでした。私はそこでぽつねんとして、しばらく待っていますと、演壇のわきから五十代と思われる男の人が現れました。背は高く気品のある様子ですが、部屋着のような穴の開いていそうなカーディガンを羽織っています。若干白くなった髪も乱れがちです。彼はいかにも昔風の研究者というタイプに見えました。


「この会社はク*です、いや失礼」

と彼は、最初にそう言いました。


音響設計がいいのか、見えないマイクを使っているのか四方から彼の声は聞こえてきます。落ち着いて響きのある人を酔わせるような声です。


「**くん、きみは招待されていますね」

次に彼は、私の苗字を呼んでそう尋ねました。

招待ではなくて応募をしたのですが、と私は考えていました。



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