愚者の選択
私は胸のときめきのまま何気なくですが、彼女の胸のところをダブルクリックしてしまったのです。すると画面が変わって、拡大された彼女が現れ、ニコッと微笑むのでした。私も知らずに、にやけてしまいました。しばらく眺めていましたが、画面の下のほうで何かが点滅しているのに気がつきました。
「あなたは未成年ですか?」
「はい,いいえ」の文字が点滅していたのでした。
私は少し考えました。
とうぜんですが質問の内容についてではありません。 この質問に答えるべきか、についてです。催促するように点滅が続いています。これは既知のことではないのか、とささやく声が聞こえます。ただ質問に答えるとどうなるのかの好奇心もあります。それにそんなひどい状態にならないだろうという読みもありました。以前架空請求のようなものに出くわしても、無視することで切り抜けました。
わたしは「いいえ」をクリックしました。
画像が変わりました。上に挙げていた彼女の手が下がって両手を広げています。「あなたに救いを!」みたいなポーズです。それに今度は深遠な笑みを浮かべています。
「あなたは二〇歳以上ですね?」
再確認の質問が表示されていました。
私は今度は躊躇なく、と思って考えました。これはひっかけですね。さっきはいいえでしたが、今回ははいです、とクリックしました。
画面の彼女はさらに手が下がりました。弥勒菩薩のポーズです。人差し指が頬を指しています。超魅力的です。
「あなたは健康ですか?」
むむっ、と私は考えました。
疑問は、健康は何に関係するのだろうか、というものです。こう見えても私は慎重な性格ですし、堅実な見方をする人間です。でも結局意図は解りませんでした。ただ私は体に悪いところはどこもなく、ほとんど風邪もひかないぐらい健康であるというのは事実でしたので、彼女を眺めながら、はいを押しました。
すると画面が変わって、南太平洋というような海と空の景色が現れました。デッキチェアーには彼女が横たわっています。それに被るように赤い文字で、「あなたは楽園に招待されました」というテロップが流れました。
ハワイアンのような音楽まで聞こえています。
私はちょっと呆然としていましたが、何やら大失態を演じたような、あるいはそれこそ恥ずかしい場面を覗かれたような気持になって、ばたばたキーボードを叩いていました。ク*、失礼、と呟きながら、ようやく強制終了を操作して電源を落としました。
それでもしばらく私は暗くなったモニターを眺めていました。




