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愚者の楽園



彼女は静かに立ち上がると、こう言って外へ出て行ってしまいました。

「さあ、行って。あなたは戻ってこれるわ」


私はしばらく呆然としていましたが、部屋を出ると照明に導かれるまま、だんだん奥深く、なんとなくそう思っただけなのですが、進んでいきました。どのくらい時間がかかったのでしょう竜宮城のような、入口だけですが、光り輝くプラント工場に着きました。内部はがらんとして瓦礫のようなものが散乱しています。一部が真っ暗になっていました。私の作業場はそこにあるようでした。

そこで赤い服を着た人が待っていて、ずいぶん陽気そうな人でしたが、酔っているのかもしれません。その人に作業の説明を受けました。


ここでの作業は肉体的にも、精神的にもきついものでした。

それを話すと長くなりますので簡単に説明しますが、ドームと呼ばれる管理区域があって、その穴に入って、単独で作業するのです。と言っても実際に作業するのは電気掃除機のようなロボット、このロボットは私をモデルに教授が作成した物のようでしたが、彼をまずドームに入れることが仕事でした。

ドームに近づくとまず耳鳴りがしてきます。溶接炉でのような熱風ではなく、直接温度が皮膚に張り付くような熱があります。タラップを下り、高いところの電球を取り換えるように覗き込み、上からはがれた壁の一部のようなものが時々落ちるからですが、上を窺いながらロボットを所定の場所に置くのです。

ドーム内は青白い光で充満しています。脳と言わず内蔵と言わずすべてが揺すぶられるように振動します。吐き気もひどく胃袋もひっくりかえるようです。たぶん遠くから私を見れば青白い光を発しながら揺れているのがわかるでしょう。

私の作業はそれだけでは終わりません。

ロボットもひどく消耗するからです。彼が何をしているのかは正確には私にわからないのですが、部屋の配置換えのようなことをしていると思ってください。あちらのものをこちらに動かし、出てきたごみは片付け、そこに何かを運んでくるというような作業です。

5時間ほどするとかれはぐったりとして、もうほとんど動けなくなって助けてくれみたいにアームを動かすのです。私はそれをモニターで見ていて、彼が合図をしたらまたドームに戻って彼を回収します。そしてスリープと呼んでいる装置に彼を収納して彼の回復を待つのです。これで一日、と言ってもそれが本当の一日であるかはわからないのですが、その一日の作業が終わって私も眠ってしまいます。こんなことが何年も続きました。



『こんな生活でしたが私は幸せであったと思います。眠れば優しい光にあふれた、色とりどりの花々の咲き誇る楽園に暮らしていました。澄んで純粋な大気に、偽りは住めません。彼女の愛を確信し、その愛に満たされ、そこで多くの祝福を受けた彼女との暮らしに私は満足していました。』





       完


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