愚者の品格
英雄的行為には危険は付きまといます。誰が考えたって、その修理に危険がないとは思いません。けれどその事実を彼女に確認するにはひどくプライドが傷つくし、また彼女に臆病でいやな奴に思われるのだろうとは考えていましたが、咄嗟に次の言葉が口に出てしまったのでした。
「できるでしょうか?」
ちょっと弱気な言辞ではありますが、私としては与えられた使命に怯んではいないところを彼女に汲んでほしいと思いましたし、また危険に立ち向かっていく姿勢を何とか示そうという苦慮した内容になりました。要は彼女に認めてほしかったのです。
「あなたは選ばれた人間なのよ、自信を持って。危険はないとは言わないけれど、万全の態勢で私たちは挑むのよ。後遺症が出るとしてもそれはあなたの寿命の尽きるあとよ」
私は彼女の言葉を頭の中で転がすように吟味していました。
怯懦を見せないひとかどの人間と思われるという努力を続けながら、少ない情報から真意をつかもうとする試みは人間の品格を表すものです。
私は見てくれを非常に大切にしているのです。侮蔑は死よりも耐え難いものです。
彼女の話を分析すると、この作業は非常に危険であること。直接的な被害はないかもしれないが後遺症は死に至るほどであること。ただその時期は明確にされていない、ということがわかりました。これが冷静な判断というものです。でも実際には私は全然冷静ではいられませんでした。
私は彼女の手を握り締め引き寄せました。
これは純粋な行為というものではありません。感情を共有しようという意味合いはありましたが、私は彼女とキスがしたかったのです。一緒になれたら死んでもいい、というような求愛の行動です。
彼女はそれをやんわり拒否しました。いつの間にか私の手は自分の膝の上に置かれていました。
「私はあなたのものなのよ、焦らないでね」と彼女は静かに言いました。
私は塩を振られた青菜のように、ぽかーんとしていたかもしれません。
彼女が何を言っているのかわからなかったからです。
「楽園にご招待計画というのは、もともと私があなたを気に入るかどうか、ということが重要な問題だったの」
彼女は続けます。
「あなたは私に何をしてもいいのよ。私はあなたの欲求にはなんでも応えるの」
彼女は少し顔を赤らめたかもしれません。
前に商店街のくじの景品のようだな、と私は漠然と考えていましたが、やはり最初の直観のように温泉旅行ご招待的イメージは間違っていなかったんだ、それにすごく刺激的だと私は会心の笑みを浮かべました。




