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愚者の真実



私は踵を返して、ある意味勇んでビルを出ました。

不安ですが、彼女のゾクっとするような声が耳元に残っています。期待に胸ふくらます、というような状態に自分がなっていることを意識しました。なんだか変なところはありますが、条件のいい就職先が決まったことは事実のようでしたし、そうすれば借金も返して、まだよくはわからないけれど、全体として自分の好みである「楽園」マークの彼女に実際会って、二人で話ができるという状況になっているのです。ある意味「楽園」が落ちてきたとも考えられるのでした。半分は胡散くささを残してはいても、光明がみえてきたのではないでしょうか。


外に出て、見上げると正面に「エース」と書かれた看板が見えました。来た時に見かけただろうかと記憶を探りましたが、わかりませんでした。すぐに見つかったことを喜ぶより、不審な感じの方が強く残りました。

とにかくそのガラスだらけの店に入っていきました。その店はガラスでできているようなのですが、透かして先が見えるということはなく、いろいろ組み合わせて海の底のような感じになっています。本当は海底に入ったことはないのですが、どこかで見たりしていたイメージ通りでした。

案内の人はいないのか見回したのですが、誰もいないようなので、その緩やかなカーブの付いた薄ぼんやりした通路を進んでいきました。すると中は迷路のようになっていて、二、三度曲がったら、完璧に自分の位置を見失いました。

すぐテーブルがあって、座席があるというカフェみたいなものを考えていたのですが、言ってみればカラオケボックスのような、個室になっている感じで全然部屋に行きつかないのでした。彼女がすぐわかるように一番入口に近い席と考えていたので、それは誤算でした。そういう仕組みにはなっていないようでした。と、するとあの無人の受付に戻らなくてはいけないのかと思いました。

しかし、よく見ると潮の流れのように通路の明かりが徐々に点滅して、何か行き先を告げているようにも感じられます。同じ場所を上下に円を描くようにしているとも見えるのですが、足元に注目すると、やはり点滅して通路を指示しています。これは無人の誘導システムなのだろうと見当を付けて、私はそれを辿っていきました。するとそれまでの青い照明がピンクになっている部屋に着きました。

ガラスのドアには「楽園」と表示されていました。

私はひどく絶望してしまいました。


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