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昭和レトロ自販機来客簿〜悩めるお客様のあたたかい夜食〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・クリスマスの唐揚げラーメン

 よりによってクリぼっちになってしまった。


「クリスマス直前に振られるとは……」


 独り言をこぼすと余計に虚しい。SNSにはカップルたちの写真がずらりと並び、クリぼっちをバカにした投稿も珍しくない。


 赤木緑子、三十二歳。そろそろ結婚も意識していたので、心も寒い。クリスマス時期の風も冷たく、イルミネーションなんかも見たくないぐらい。


 そうして賑やかな場所から逃げるように歩いていたから、辺鄙な商店街に紛れ込んでしまったらしい。ほとんどの店がシャッターが降りている。確かにケーキ屋や本屋、花屋などがあったらしいが、近所の大型ショッピングモールに勝てなかったらしい。かろうじてコアワーキングスペースや二十四時間営業のジムはある。ここの商店街でも時代に合わせしぶとく生きている人もいるらしい。


「あれ?」


 そんな中でも妙な店があった。食堂らしいが、中に入ると、違和感が襲う。


 中には自動販売機しかなかった。しかも全部デザインが変だ。見た事もない。昭和レトロ風な自動販売機で、うどん、ラーメン、トーストサンドなどを提供しているらしい。


 看板にはオートパーラー・オリーブとあったが、二十四時間営業の自動販売機食堂?


 他に客はいない。しんと静か。クリスマスだと忘れそうになるぐらい、静寂。


 この静けさ、かえっていいかも。フラれた心の傷、こういう場所の方が早く治るのかもしれない。


「食べてみよっかな」


 ちょうどお腹も減った。自動販売機、一体どんな風に食事が出てくるのか気になる。一番気になるのはラーメンだ。生麺から茹でて作ると、意外と手間がかかるラーメン。一体どうやって自動販売機が作るんだ?


「よし、ラーメンにするか。へー、唐揚げラーメンって何?」


 好奇心が向くまま、自由になってみよう。五百円玉が使えないのには驚いたが、昭和レトロ風の派手なデザインの自動販売機、悪くない。色が華やかで自由。こういうの、令和の無機質さと正反対だ。


「はや!」


 予想以上に早くラーメンが出来上がった。しかも熱々。サイズは大きくはないが、プラスチックの器で、ちゃんと湯気も出てる。唐揚げは汁につかりぐずっとしていたが、味が染み込んでいるみたいだ。美味しそう。


「どういう事? 手品?」


 この自動販売機、中はどうなってるのか?


 まさか中に人がいたりして。


 そんな想像をしていると、けっこう楽しいじゃないか。


「ミャー!」


 どこからか野良猫も登場。緑子の足にすりすりしてきた。汚い野良だったが、よく見たら可愛い目をしてる。


「よし、食べるかー」


 店のテーブルに向かい、座ってみる。野良猫もトコトコとついてくるではないか。


「いただきます」


 野良猫と一緒に唐揚げラーメンを食べ始める。あったかい。喉や指先もほかほかしてきた。野良猫もそばにいる。どうやらクリぼっちは逃れたらしい。


「ニャァ……」


 野良猫が唐揚げラーメンを見つめていた。

 

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