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昭和レトロ自販機来客簿〜悩めるお客様のあたたかい夜食〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・紙箱

 昭和レトロな自販機で提供される食事。SNSで話題になっているのを見かけた。


「そんな、でもパンズはぺしゃっとしているし、美味しそうに見えないけどな」


 藤生美雲は、おいしいものに目がない。自称・美食家でSNSでは食事の感想をよくあげていた。年齢は三十歳だ。そろそろ痩せにくくなってくる年代だが、もう美容は全部無視だ。そのために課金し、最近では全国の様々な土地に食べに行くのも趣味だった。先月は名古屋へ行く、カフェ飯をおおいに楽しんできたところだったが。


「でもちょっと気になるわ……」


 結局、美雲は電車で三時間掛け、昭和レトロな自販機の食堂へ向かった。店名はオートパーラー・オリーブ。


 田舎にあり、交通の便はよくないものの、中心部はショッピングモールでそこそこ栄えていた。


 一方、店にある商店街が過疎化している。潰れた店が多く、ジムやコアワーキングスペースの店はあるものの、全体的にシャッターが降りている。寂れてる。いや、うらぶれている感じか。


 そんな商店街の隅に店があった。一見、ボロい小屋のような店だったが、晴れた日の昼間に行くと、さほど気にならない。夜だったら、この古めかしさは、かなり目立ちそう。


 中が案外、清潔感がある。ずらっと並んだ自販機は、今のものよりスリムではない。圧があったが、デザインはどれも自由。華やかで生き生きとしてる。令和時代よりもよっぽど多様性があるデザインに見えた。


 特にハンバーガーのデザートは、レトロというよりシュール。ニワトリがチキン料理をつくっているイラストがデザインされ、これは笑っていいのか謎。


 他の外国人観光客は大はしゃぎだ。写真だけでなく、動画まで撮影し、うるさいぐらいだったが、インバウンド中だから、こんなもんだろう。


 外国人観光客が去ると、ハンバーガーを買ってみた。一分で完成したが、驚いた。


 紙箱に入って出てきたが、熱々だ。しかもその箱のデザインも、カラフルで可愛い。今では決して見れないような鮮やかさ。


 しかも、熱しられた箱は、なんとなくいい匂いもした。ハンバーガーをくるんでいた白い紙もちょっといい匂い。


 味自体は普通。パンズもぺたんとしているし、肉もペラペラ。喫茶店や専門店で味わったハンバーガーの味とは、全く違う。


 チープだし、素朴。手作り感覚も濃厚だが、これはこれでアリ。この紙箱に入っているのも、楽しい。味よりも、見た目や楽しさを感じる。このシチュエーションがおいしいのかもしれない。


「うーん、この紙箱、なんか捨てるのももったいないな」


 結局、紙箱を折り畳み、もって帰ることにした。


 帰ったら、手帳に挟んでおこうか。見るたびに、あのハンバーガーも味を思い出すかもしれない。

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