番外編短編・廃自販機
田舎の県道沿いを歩いていた。これから、パワースポットで有名な神社に行くためだったが、辺鄙な場所にあり、すでに心も骨も折れそう。
「ハァ……」
津田永真は、歩きながらため息が出てきた。最近、仕事も恋愛もうまくいかない。副業で十年以上、イラストレーターの仕事もしていたが、AIに淘汰されると言われていた。本業は事務職。こちらもAIに代替されると言われていた。将来のことを考えると余計に気が重く、パワースポットでも行き、運でもあげようと考えていたが。
「へえ。これ、昔の自動販売機?」
そんな時だった。自動販売機が廃棄されているのに気づいた。田舎の道に何台が連なり、妙な趣きがある。
錆びつき、ぼろぼろだったが、デザインはいい。色使いもカラフル。色褪せてはいたが、オレンジ、イエロー、ピンク色と、令和には決してない発想の自由さが滲んでいた。
「へぇ……」
トーストサンドが食べらる自動販売機も廃棄されていたが、珍しい。
思わず、スマホでこんな自動販売機を写真におさめていた。何かヒントが得られそう。AIに絶対淘汰されないような何かが、ここにある気がする。
気づくと夢中だった。歩くのも全く苦にならないほどだ。当初の目的もすっかり忘れてしまう。
「お姉さん、昭和レトロな自動販売機に興味があるんか?」
そんなことをしていたからだろう。地元民に声をかけられてしまった。おそらく農民と思われるおじさんだったが。
「もうちょっと歩くといい。オートパーラー・オリーブっていう自動販売機専用の食堂がある」
「え、なんですか、それ。自動販売機専用の食堂って……?」
想像がつかないが、おじさんはニヤリと笑う。
「とにかく行ってみたらいい。お姉さんの探しているものが見つかるかもしれんよ」
「そうですか?」
なんだかわからないが、気になる。
「まあ、とりあえず行ってみます」
「おお、気をつけて」
おじさんに笑顔で見送られ、さらに歩き始める。
当初の予定とは全く変わってしまったが、まあ、いいか。
旅の楽しみは、予定通りにいかないことだ。誰かの名言であった気がする。
「は?」
そして目的地についたが、本当にその場所は予想外だった。
「なるほど……。自動販売機で食事が提供される食堂ね……。そんなのアリ?」
それでも、悪い気はしない。予定通りに行かない旅行でも、なんだか楽しくなってきた。




