表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和レトロ自販機来客簿〜悩めるお客様のあたたかい夜食〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/18

番外編短編・アルミホイル

 猪瀬星楽はオートパーラー・オリーブにいた。昭和レトロな自販機の食堂だ。うどん、そば、トーストサンドなど全部自動販売機で提供される。無人で二十四時間営業中。


 高校生の星楽は放課後にひとりで来てみたが、他に客はいないようだ。


 店の窓からはオレンジ色の夕陽が差している。店の床もオレンジ色だが、より一層濃く見える。


「よし、今日はトーストサンドを買おう!」


 見た目は派手な星楽だが、本当はオタクだ。中学の時にメイクやファッションを頑張り、クラスでも目立つグループに入っていたが、根はオタク。アニメや漫画が大好きだったが、同じくオタク友達の金澤茉莉奈にこの店を教えてもらい、一目惚れしてしまった。


 令和に生きる星楽には全てが目新しく、SNSやコンプライアンスとか無縁な雰囲気が、自由でいい。


 それに、おいしいものも食べられるのも最高。連日、ここに通い、色々な自販機の食事を楽しんでいたが、今日はトーストサンドにチャレンジだ。


「ほぉ、このトング でもつんだ」


 出来上がったトーストサンドは熱々だ。確かにやけどしそうなので、トング でつかみ、テーブルまで持っていく。


 全面アルミホイルで包まれたトーストサンド。今日はピザ味にしてみたが、このアルミホイルがいい。手作り感と素朴さがぎゅっと詰まっている。決してコンビニやスーパーには売っていないトーストサンド。もしかしたら、高級なパン屋にも売っていないかもしれない。そう思うと、レア感がより一層高まり、余計に美味しく感じてしまう。


 トーストサンドは少し焦げている部分もある。決して綺麗でもないが、逆にそこがいい。


「おー、おいしい!」


 つい独り言がこぼれるほどだったが、完食し、ノートに感想を書き込む。


 この店には来客日誌というノートが置いてあり、客が自由に感想やコメント、クレームなども書き込めるらしい。


 最近は客の誰かが人生相談を書き込みはじめ、店主が解答していた。他の客が解答することもありお悩み相談の場所と化していたが。


「でも、私は特に今は悩みとかないしな。普通に感想書こう」


 星楽はノートに今日のピザ味のトーストサンドの感想を書き込む。くるんであるアルミホイルが最高だというコメントも忘れずに、猫やうさぎなどのイラストもチマチマと書き、シールやマステでデコっておいた。星楽は平成女子風の文房具デコも好きだったりした。


 そして翌日の放課後。またオートパーラー・オリーブへ向かう。さっそくあのノートをめくると、店主からコメントがついていた。どうやら平成女子風の文房具デコには引いているらしいが、この店のトーストサンドのアルミホイルの豆知識を教えてくれた。


 昔は「トーストサンド」と印刷された専用もアルミホイルを使っていたらしい。デザインだけでなく、ちょうどいい厚みのアルミホイルで焼き加減も適正になるらしい。


「え、じゃあ、あの焼きむらがあるのってアルミホイルのせいだったの?」


 しかし、専用のアルミホイルは製造終了し、市販のアルミホイルで代用中とのことだった。


「そっか……。そんな秘密があったんだ」


 アルミホイル一つとっても歴史や背景があったらしい。しかも今は製造終了……。


 ここにある自動販売機も色々な歴史や背景があるかもしれない。例えば、廃棄されそうになった自動販売機を、店主が掘り起こし、復活させたとか……。実際、みそ汁の自動販売機もそんなストーリーがあったはず。


 今日はハムチーズのトーストサンドを買ってみたが、そんなことを想像していると、余計に美味しい。不思議なものだ。味自体はコンビニやパン屋に負けているはずだが。


 ここでの食事は味以外のものも、食べられるのかもしれない。


「さあ、帰るかー」


 ちょうど満腹になり、店を出たところ、野良猫が足元にやってきた。黒猫だが、野良らしく、毛並みは少しぼろっとしていた。


「みー!」


 しかし、星楽を見あげ、とても母性本能をくすぐる声を出してきた。


「か、可愛い……!」


 星楽は猫も大好きだ。目をハートにしながら野良猫と遊び始めてしまう。


 おかげで連日、この店に通っていた。次第に茉莉奈以外の友達とは疎遠になってきてしまったが、まあ、今が楽しければそれでいいと思う。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ