第二章2——『蒼月の都ルネティア』——
雪原を抜けたその先に、それはあった。
巨大な氷の門。天を貫くような氷壁が連なり、空すらも凍てつかせる。
その中心には、古代語で刻まれた文字が淡く光っている。
「ここは《蒼月の都ルネティア》。
封印の巫女、永き眠りの地。」
リリィは息を呑み、杖を握りしめた。
胸元の水晶が微かに震えている。
——ミディアの遺した“光の欠片”。
「この奥に、第二の巫女が眠っている……。」
リリィの呟きに、カイルが剣を抜く。
「なら、行くしかねぇな。ミディアの願いを果たすためにも。」
レオンが冷静に頷く。
「気を引き締めろ。このダンジョンは“百層の冥塔”と呼ばれる。
魔王軍ですら制覇できなかった死地だ。」
リリィは小さく笑う。
「……でも、行かなくちゃ。私たちしか行けない。」
彼女の言葉に、仲間たちは頷いた。
氷の門が軋むように開く。
凍てついた風が吹き抜け、視界が白く染まる。
こうして、“蒼月の都ルネティア攻略戦”が幕を開けた。
第一層に足を踏み入れた瞬間、
霜に覆われた迷宮の壁が淡く輝き、魔力の流れが感じられた。
「この感じ……ダンジョン自体が、生きてるみたいだ。」
リリィが呟く。
すると、氷の床を蹴る音が響いた。
白い影——氷狼の群れが現れた。
「出たな!」カイルが前に出て、剣を振るう。
閃光が走り、二体が吹き飛ぶが、残りは素早く背後を取る。
「動きが速い……普通の魔獣じゃない!」
リリィが詠唱を始める。
「《フロスト・ランス》!」
氷の槍が放たれ、狼の胸を貫く。
レオンは後方で手を組み、魔法陣を展開した。
「重力結界!」
床が揺れ、狼たちが押し潰される。
戦いの数分後、氷狼の群れは沈黙した。
「ふぅ……これで、最初の階層か。」
カイルが息を吐く。
「まだ九十九層あるんだぞ……正気の沙汰じゃねぇ。」
「でも、進もう。」
リリィがまっすぐ前を見た。
「この先に“彼女”がいる。ミディアが託した光が、導いてくれる。」
レオンが頷き、手帳を開く。
「十層ごとに“守護者”がいるらしい。
記録によると、十層の主は氷の巨人。
……このペースだと、休む暇はないな。」
リリィは水晶を見つめ、そっと胸に当てた。
淡い光が灯り、まるで“応えている”ように揺らめく。
第二層から第五層までは、罠と幻影の連続だった。
廃墟のような通路、歪んだ魔力の空間、
時にミディアの姿をした幻までが現れる。
「……これは、ダンジョンが私たちを試してる。」
リリィの声が震える。
「ミディアの記憶を使って、私たちの“心”を揺さぶってるんだ。」
カイルが壁を拳で叩く。
「卑怯だ……!」
レオンは静かに目を閉じる。
「卑怯でも、必要なんだろう。
“巫女の継承者”を選ぶための試練だ。」
その言葉に、リリィは決意を新たにした。
「なら、私たちは証明する。
——ミディアの想いを、次に繋げる力を持っているって。」
光が再び、リリィの胸の水晶から溢れ出した。
それは温かく、どこか懐かしい輝きだった。
その瞬間、ダンジョンの壁が震え、
次の階層への道が静かに開かれる。
“第一層突破”。
——そして、リリィたちの本当の冒険が始まった。




