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7話:ニンフェアとプルーニャ2

「お嬢様お茶が入りました」

「ありがとうジニア」


 オルテンシア様がいる客間から一旦自室へと戻ってきました。少し落ち着ける時間がほしかったからです。

 家庭教師の先生からはこの大陸以外の話なんて聞いたこともありません。世界はこの大陸だけだと思い込んでいました。

 おとぎ話でエルフやドワーフなんて種族のお話もあったけど、ただの作り話だと。実際、おとぎ話でも獣人族や妖精族なんて聞いたこともなかったし、ましてやオルテンシア様のような存在のことなんて。

 お茶を一口飲んでなんとなく天井を見上げます。いまもそこにお二人がいるのでしょうね。


「世界は広かったのね」

「・・・お嬢様」

「ジニアは・・・」


 他の大陸のこと知っていたの?って聞いたら困るわよね。きっとお父様に口止めされていたんでしょうし、お父様も15歳の成人になってからって言っていたものね。

 もう一口お茶をすする。あ~おいし。


 お母様の秘密か・・・お父様が悲しい顔をなさるのであまり詳しいお話は聞いたことがありません。どのような秘密があるのでしょうか?お父様は婿養子でお母様が本来のナターレ領の領主だったらしいですが。


「まあ、お父様に聞くしかないわよね~よしっ!」


 残りのお茶を一気にぐいっと飲んで立ち上がりました。いざゆかん!世界の神秘と我が家の秘密を解き明かしに!




「外套はもう少し大きめの方がいいかニャ~?」

「そうだね、耳と尻尾は完全に隠さないと。ボクは外套の上から背嚢を背負えば羽は気づかれないだろうし」

「ミュ~でもダボダボだといざとゆーとき動きづらいニャ」

「じゃあ耳と尻尾切っちゃえば?」

「怖いこと言わないでニャ!!」


 ソフィー様の”レベル”をあげるための「迷宮」探索が3日後に決まった。ボクたちは準備のために本日の護衛任務からはずれて、部屋で装備を物色している。


「迷宮」が発見された当初、最初に偵察任務で潜ったのがボクとプルーニャだった。

 ボクたちも「迷宮」は初めてだったけど洞窟とゆー感じじゃなく、古い建物の中にいるみたいだった。じめじめしてはいるけど廊下は綺麗で、所々に部屋があり開けるとだいたい魔物に出くわした。


 魔物はどこにでもいる生き物だったけど、なぜかみんな鋭い牙があった。例えばサメのような歯のあるカエルとか、長い犬歯のあるウサギとか、口が針になってるチョウチョとか・・・肉食度たけえな。

 それでもボクとプルーニャならたいして苦労もせず地下5階層まで潜ったけどね。


 まだいける感じだったけどそこまでで見つけた宝箱や、魔物から出てきた戦利品で荷物がいっぱいになり仕方なく帰還したんだ。

 そしてそこまでの報告を旦那様に送ったところ撤収命令が出された。


 その後はナターレ領の利益のために冒険者に開放され、「迷宮」周辺は産出される素材を使った鍛冶工房、武器防具を扱う商店、冒険者のための宿屋、酒場などが出来て急激に村が出来あがった。


「あれから2年経ったし、村も大きくなってるかニャ~?」

「そうだね。いい杖を扱ってるお店でもできてればいいけど」


 ついさっき旦那様にオルテンシア様と面会させてもらった。「迷宮」産のアイテムとボクたちの”鑑定”をしてもらうためだ。ボクたちの正体を知っているので特に隠すこともなくなったからね。


 ボクの持っている杖は2年前の偵察任務の褒美として戦利品の中から旦那様にいただいたものだ。

 魔力を流すと炎の魔法を放てる便利な杖だと思ってたんだけど、オルテンシア様の”鑑定”によると使用回数制限があり、魔力はただの起動スイッチらしい。しかも使えるのは残りたったの5回だけとか。トホホ。


 続いてボクたちの”鑑定”をしてもらったんだけどオルテンシア様は驚いていた。ボクの”レベル”は22でプルーニャが21。俊敏さがとびぬけているらしく力はやや弱いらしいけど、元の身体能力が高いせいかしっぽ無し人・・・人族で言えば”レベル”30相当、冒険者階級はぎりぎりB級くらいだそうだ。一度しか”迷宮”には潜っていないのにナターレ領の冒険者ではトップクラスだ。


 ”スキル”も持っていた。ボクは”縮地2”と”剛腕1”、プルーニャは”俊敏2”と”回復1”。

 ”剛腕1”と”俊敏2”は”パッシブスキル”と呼ばれるもので意識せずとも自然に効果が発現しているらしい。

 ”スキル”を得ていることはうれしかったけど、プルーニャがバランス型なのに対してボクは俊敏、脳力、魔力特化型。力だけならD級と言われた・・・完全に後衛だね。

 脳力魔力を活かした武器が欲しいとこだ。


 使い捨て残念杖をじっと見ていると、


「あ~その杖残り5回だっけニャ?今回の冒険で使い切っちゃうんじゃにゃいかニャ?」

「万全を期すならもう一本はほしいな。もしくは回数制限のない杖を。現地で探さないと」

「わたしみたいに便利にゃ物をもらえばよかったのにニャ~♪」


 プルーニャが鼻歌交じりに杖をクルクル回している。

 オルテンシア様の鑑定結果は【揚水の杖B】。突き立てた場所の周囲から水分を集めて飲み水を作れる杖で、杖の頭の部分を捻ると水がでてくるのだ。この杖があれば重たい水を持ち運ばなくてもよくなりかなり便利だ。しかも使用回数制限もない古代文明の遺産らしい!

 ただし、あまり水を取りすぎると周りが砂漠化してしまうそうだけど・・・


「これでよしっと。そっちは?」

「こっちも終わったニャ」


 パンパンに膨らんだ背嚢を背負って鏡の前に立つ。横を向いたり、後ろを向いたりして最終チェック。


「うん、羽はわからないね」


 ベットの上に背嚢を置いてそのまま腰掛ける。プルーニャもチェックをして納得したのか背嚢を放り投げて隣に座る。


「これからどーするニャ?」

「そうだね、お休みをいただけるなんて初めてだから何をしたらいいやら」


 準備は午前中で終わってしまいやることが無くなった。午後から護衛任務に戻ろうかな?


「やることにゃいにゃら~」

「ん?」

「町にいってみにゃいニャ?この姿にゃら堂々と町を歩けるしニャ」

「そう・・だね。いってみようか」


 たまにはプルーニャに付き合うのもいいかな。

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