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幕間13話:20階層ボス

 「迷宮」に入って6日目、地下20階の扉の前までやって来ました。

 16階以降は魔物が急に強くなり、わたしやトゥリパーノの攻撃では一撃で倒せなくなりました。

 それでもオルテンシア様の光線は一撃で魔物を屠り、貫通した光線は背後の魔物が数匹いても関係なく貫いていきます。

 マスターさんも常識外れの剣速で次々に魔物を斬り捨て、最初の頃に見えた無駄な動きが少なくなりました。

 時々口走る「竜破斬!」とか「雷撃剣!」とかは意味不明ですが。


「みんな準備はいいか?」


 マスターさんが扉の前でこちらを振り返り声をかけます。


「はいです!」

「OKだ」

「待ってくださいマスター」


 あら?オルテンシア様が何かあるようです。


「今回はわたしに前衛をさせてください」


 オルテンシア様が前衛?確かにできるとは聞いていますが、ここまでオルテンシア様が前衛に出られたことがありません。


「・・・俺じゃ不服か?」


 マスターさんが少し不機嫌そうになっています。


「ええ、そろそろマスターに手本を見せようかと思いまして」


 オルテンシア様が不敵に笑います。なんでしょう、二人の間に火花が散っているように見えます・・・


「ま、まあたまにはいいじゃないか。オルテンシア様も運動不足になってるのかもしれないしな」


 トゥリパーノが二人の間に割って入って助け舟を出しますが、激流に流されてしまったようです。


「おまえ、近接戦闘が弱くなってるだろ。近接だけなら俺の方が強いぞ」

「戦闘というのは力だけ、すばやさだけで強い弱いを判断するものではありません。すべてをバランスよく扱える経験がものを言うのです」


 確かにマスターさんは目に見えて強くなっていらっしゃいますが、オルテンシア様も引きません。どうなってしまうのでしょう・・・


「オルテンシア、お前何か隠しているだろ。言えよ」

「・・・」


 オルテンシア様が無言になります。本当に何か隠し事があるのでしょうか?

 二人のにらみ合いが続きます。今まで仲良くやってきたのに急に何があったのでしょうか!?

 トゥリパーノ助けて!振り返るとトゥリパーノが矢を持って独り言を呟いています。


「ん~この矢はそろそろ限界かな~新しいの調達しないとな。うん」


 明後日の方向を見て関わらないようにしています。役に立たないトゥリパーノです。


「はぁ・・・」


 マスターさんが深いため息を吐きました。


「もういい。前衛をやりたいなら好きにしろよ。俺はバックアップに入る」


 マスターさんが折れて前衛を譲るようです。良かったです!これでまた仲良くやっていけますね!


「・・・ありがとうございます」


 オルテンシア様がマスターさんに頭を下げてお礼を言います。しかし、本当に何があったのでしょうね?


 左手に剣を持ったオルテンシア様が扉の前に立ち、斜め後ろにマスターさんとトゥリパーノが立ちます。わたしは当然後衛ですね。

 オルテンシア様は振り返ることなく「いきます」と言って扉に手を掛けました。扉が開き腕一本分の隙間ができるとオルテンシア様がそこに右手を突っ込み、


「【光線エネルジーア・ラッジョ10】!」


 光が迸り目が眩みます。今10って言いました?確か威力がありすぎるから最大でも5までしか使えないとおっしゃってましたが、10!?


 爆発とも思える光の奔流が収まるとオルテンシア様が中に突入します。続けてマスターさんが、そしてトゥリパーノが・・・


「目がぁ!目がぁ!!」


 目を押さえて転がりまわっています。オルテンシア様ばかり見ていたのでしょう、死ねばいいのです。


 トゥリパーノは放っておいてわたしが先に中に入ります。そして、足が止まりました。


 中には部屋を埋め尽くすほどのワニの頭を持った人間!?がいました。

 光線の攻撃で正面だけは横3m、奥は暗くなって見えなくなるまで死んだ魔物の光の粒が舞っています。

 わたしはれべるあっぷの光に包まれ続けました。一体いくつれべるが上がったのでしょう!?

 そんな事を気にしている場合ではありません。オルテンシア様は正面の開いた空間に躍り出て、いつの間にか両手に持った剣で縦横無尽に斬りまくっています。


「ステッラ援護頼む!!」


 マスターさんは入り口にいるわたしの護衛として、近寄るワニ頭を斬り捨てています。


「は、はい!精霊さんお願い力を貸して!暴風魔法2!【竜巻(とるなーど)】!」


 風が渦を巻きワニ頭数人を巻き込んで天井にぶつけます。落下の衝撃が加わってもワニ頭を倒すことはできませんでしたが、地面に這いつくばっているところに周りからワニ頭が殺到し踏みつぶされて死にました。


「くそっ!数が多すぎる!」


 マスターさんも必死に応戦されますが小さな切り傷がどんどん増えていきます。血煙が舞い魔物の断末魔が響き渡り地獄のような光景が広がります。


「精霊さんがんばって!土砂魔法1【地震(てっれもーと)】!」


 わたしと側にいたマスターさん以外の半径10mほどに地震が起こりワニ頭たちが転倒していきます。


「遅くなった!【乱れ撃ち2】!」


 ようやく目が見えるようになったトゥリパーノが弓の範囲攻撃をしました。いつもは9本なのに今回は20本近くに増えていました!?


 ザクザクザクっとワニ頭たちに矢が降り注ぎ、ワニ頭たちを瀕死状態に追い込みます。その隙を見逃さずマスターさんが走り寄って剣を振りかぶります。


「うおおおおお!【竜撃覇1】!!」


 いつものよくわからない技名を叫びながら剣を振るうと、空間が割け巨大な光球が飛び出しました。光球がワニ頭たちにぶつかると一瞬遅れて光が爆発しました。


 ドオオオオオオオンッ!!


 凄まじい爆音と爆風が耳を馬鹿にしてくれましたが、目の前の100匹近くいたワニ頭をことごとく吹き飛ばしました。


「すげえ・・・」


 技を放った本人が一番驚いてます。いえ、本当にすごいんですけど、いつの間にこんな技が使えるようになったのでしょうか?

 近くの魔物は一掃されましたが、それでもワニ頭たちは未だ数百匹が健在です。


 はっ!そういえばオルテンシア様は!?


 部屋の奥でワニ頭がポンポンと宙に舞っています。光線が乱れ飛びワニ頭の身体の一部が飛び散ります。


「オルテンシア!!」


 マスターさんがオルテンシア様を助けようと一歩前に出て止まりました。

 わたしたちを振り返り、前に向き直って、小さく「くそっ」っと呟きます。

 マスターさんはオルテンシア様を助けにいけません。後衛と中衛であるわたしとトゥリパーノから離れることができないからです。


「オルテンシアめ、中がモンスターハウスになってることを黙ってやがったな・・・」


 わたしたちの前に10匹ほどのワニ頭が迫ってきます。


「【衝撃波1】!トゥリパーノ!左奥に範囲を頼む!少しでもこっちに引き付けてくれっ!」

「わ、わかった!【乱れ撃ち2】!」


 トゥリパーノの弓の射程は200mほど、部屋の奥まで届きます。少しでもオルテンシア様の負担を減らそうとこちらに敵を引き付けます。

 最初の10匹のワニ頭を殲滅した頃、弓で引きつけたワニ頭が30匹ほど近づいて来ます。


「【竜撃覇1】!!」


 ドォオオオオオオンッ!!


 再びマスターさんの放ったリュウゲキハで30匹のワニ頭が消滅しました。


「前に出る!ついてきてくれ!」

「おう!」

「はいっ!」





「【光線エネルジーア・ラッジョ3】」


 正面のワニ頭に光線を放ちます。すべて貫通し十数匹が倒れていきます。両手に持ったダマスカスソードで螺旋を描くように周囲のワニ頭を切り刻みます。さすがに返り血をかわす余裕はないので頭から足元まで真っ赤に染まります。


「もう少し・・・」


 わたしの狙いは最初から部屋の奥にいる小さな魔物です。その魔物がワニ頭を生み出しています。アレが真のボスですね。

 大きさは30cmほどで、これだけ密集しているワニ頭の足元を高速で移動しながらわたしの光線をかわしていきます。

 一直線にワニ頭を倒しながら近づくとようやくその姿を捕らえました。

 ゴブリンを小型にしたような姿で、大きな鷲鼻に赤い帽子をかぶっています。


「【鑑定(バリュータジオーネ)1】」


【個体名なし】

 20階層ボスレプラコーン:性別なし

 年齢:5

 レベル:53

 状態:恐慌

 力 :F

 体力:F

 俊敏:A

 器用:F

 英知:A

 脳力:B

 魔力:A

 スキル:召喚5 


「やはりコレがボスですね」


 レプラコーンと目が合いました。恐慌状態に陥っているようで大量の汗をかき固まっています。


「レーザートーチ」


 わたしの両目が光り、そこから飛び出した赤く細い光線がレプラコーンの額を貫きます。


 断末魔をあげることもなく、七色の光が溢れ出しレプラコーンは光の粒となり消えました。

 周りのワニ頭も動きを止め、プルプル震えた後すべて光の粒になりました。


 20階層ボス、レプラコーン。討伐完了です。

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