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6話:ニンフェアとプルーニャ

「あらためましてお初にお目にかかりますオルテンシア様。このナターレ領の領主をしています、パパーヴェロ・ディ・ナターレ辺境男爵です。お会いできて光栄です」


 翌日オルテンシア様の部屋にはお父様とわたし、ジニアの三人が集まりました。

 オルテンシア様は起き上がろうとしましたがお父様がそれを手で制止して「そのままで」とおっしゃいました。


「このような姿で失礼いたしますナターレ辺境男爵様。オルテンシアです。この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません」


 先ほどジニアがお父様に昨日の会話の内容などを説明し、これからの予定など細かく打ち合わせをしていました。

 ジニアにはああ言ったけど、お父様は「迷宮」に行くことを許可してくださるのでしょうか?・・・

 一流冒険者だったおじい様とおばあ様も昔「迷宮」で命を落としかけています。

 わたしには戦う力はありませんし完全な足手まとい。おんぶにだっこで”レベル”を上げられるのかどうか・・・

 ジニアは頼りになりますがさすがに冒険者の真似事はできませんし・・・


「・・・のようにお嬢様には影の二人をつけて万全を期す予定です」


 考え事をしている間に話が進んでいました。


「ふむ、わたしとしてはソフィーに「迷宮」には入ってほしくはないけど、この先のことも考えると”レベル”を上げておくことはいいことかもしれないね」

「お父様!それでは・・・」

「正直、兵士ではなく信用できる冒険者を探したいところだけど、すぐには見つからないだろうしね」


 兵士より冒険者の方が強いのでしょうか?兵士の皆さんは毎日鍛錬されてますし、統率のとれた動きでとても強そうですのに。


「準備は?」


 お父様がジニアに確認します。


「人選は終わっています。現在買い求めているアミュレットが揃いましたら」

「指揮は兵士長のロートにまかせるけど、ニンフェアとプルーニャが無理だと判断したら撤退するように」

「徹底させます」


 どうやらお許しがでたようです。


「かわいい子には旅をさせよと言うけど、少々危険な旅だね」


 お父様、ありがとうございます。わたしは静かに頭を下げるのでした。


「ソフィー様を危険なことに巻き込んでしまい申し訳ありません・・・」

「オルテンシア様が謝る必要はありません。義父の遺言でもありますし、遅かれ早かれソフィーには”レベル”を上げさせる予定でしたので」

「そうなのですか?」

「ナターレは辺境男爵領ですが、産出される富は伯爵領を上回ります。身を守る術は早くから身につけておくべきなのです」


 ・・・そういうことですか・・・


「ソフィーもそろそろ心構えをしておいた方がいいだろうね。貴族どもが我が家をどういう目で見ているのかを。跡継ぎがソフィーしかいない状況だと、ソフィーに気に入られ婿養子に入るか、権力で脅して婿養子の座に納まるか、あるいは暗殺して養子を送り込むか・・・」


 分かっていたつもりでしたけど、お父様の口から聞くと震えがきてしまいます。


 そうです、明日、いや、今日暗殺されてもおかしくないのです。


「まあ、そうならないように常に影に見守らせてはいるんだけどね」

「ニンフェアとプルーニャですね?お名前は聞いていますけど会ったことはありませんね」

「二人だけではないよ。ニンフェア達は表の警護担当で、裏の担当はソフィーにだって名前も人数も明かせないよ」

「そうでしたか。いつもありがとうございます」


 どこにいるのかは分かりませんが、なんとなく天井を見上げてお礼を言ってみました。


「どういたしましてニャ」

「プルーニャ!」


 天井から返事がありました・・・二人分・・・


「はぁ・・・」


 ジニアがため息をついて額を抑えている。


「旦那様、よろしいですか?」

「まあ、「迷宮」に入れば顔を合わせるしね」

「ありがとうございます。プルーニャ!ニンフェア」


 ジニアはプルーニャの名前だけ怒りながら二人を呼びました。

 次の瞬間にはわたしの前に二人の少女が現れる。


「はじめましてニャお嬢さ・・・マ!!・・」


 猫耳のある女の子が頭を押さえて転がりまくっています。わたしは見ました。ジニアの本気チョップがさく裂する瞬間を・・・


「はじめましてジプソフィーラ様。ボクはニンフェア」


 男の子っぽい口調の無表情な少女には羽が生えています!羽!?・・・飛べるのでしょうか!?


「はじめに言っておくけど、コレ飾りだから」


 背中を向けて羽をゆらしながらそう言った・・・飛べないんだ・・・

 しかしなんでしょうこのお二人は?人間・・・なのでしょうか?


「獣人族と妖精族ですか、この大陸にもいたのですね」

「オルテンシア様はご存じでしたか。さすがですね、内密にお願いいたします」


 お父様は頭をかきながら苦笑いして言った。

 昨日から知らないことだらけだわ・・・次から次へと。


「人間以外の・・・人類がいたのですか?・・・」


 ニンフェアとプルーニャも当たり前に人間だと思っていたのに。オルテンシア様に続いてさらに二人も・・・頭が混乱してきました。


 魔物の中には立って歩く人型に近い者もいるそうですけど、まさか二人は・・・


「ソフィー、あとでわたしの執務室にきなさい。この世界とナターレ家の秘密に関して教えよう。ソフィーを産んですぐに亡くなったお母さんの秘密もね。本当は15歳の成人になってから教える予定だったのだけど・・・」

「は、はい」

「これだけは言っておくけど、二人は君の味方だ。安心していい」


 お父様の言葉にわたしはうつむいてしまった。少し恥ずかしい。人間じゃないからって二人を警戒するようなことを言ってしまうなんて。ずっと・・・わたしを守ってくれていたのに。

 顔を上げるとニンフェアとプルーニャがわたしを見ていました。プルーニャは少し涙目だったけれども。

 かわいい子達だな。


「今日は顔合わせだけだから、二人とも警護にもどりなさい」

「「はい」ニャ」


 二人が消えたあと、床には鱗粉の粉とその中に肉球の跡だけが残っていました。


 そういえば、わたしは挨拶をしていなかったわ。うかつ・・・


「ニンフェア、プルーニャ、わたしのことはソフィーって呼んでね。これからもよろしく」


 天井を見上げ精一杯の笑顔で挨拶をしました。今度は返事はなかったけれど。

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