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46話:ナターレ奪還作戦(仮)

「ナターレを奪還します!」

「拝命いたします。我が主よ(ノストラスィニョーラ)


 はぁ、仕方ないなぁソフィー様は。旦那様はそんな命令するわけないだろ・・・どうせ帝国に逃げろとか書いてあったんだろうね。


「今この屋敷にいる影たちの命令権をお父様より引き継ぎました。わたしの指示に従ってください」


 あちゃ・・・それこそあり得ない。影の命令権は保有者の死亡によってのみ引き継がれるんだから・・・

 旦那様が生きている限りソフィー様が命令することはできないよ。あれ?裏の統領がなんで?・・・


「裏の影を預かっているクリザンテーモと申します。プラトリーナ・ディ・ナターレ様の生前の命令に従い、只今よりジプソフィーラ・ディ・ナターレ様を後継者と認めます」


 え?・・・ナニソレ?ソフィー様のお母上であるプラトリーナ様がそんな命令を?

 ソフィー様もマジで?って顔しちゃってるよ・・・


 旦那様を守るはずの裏の統領がソフィー様の所にいるということは?本当にソフィー様が後継者?


「あ、ありがとうございますクリザンテーモ。えっと、影は何人いるのかしら?」

「今、裏のことは口頭で申し上げることはできませんので、後ほどお伝えします。表の影は総員12名、今この場にいるのはニンフェアたちをいれて6名です」


 うん、6人いるね。裏は11いや、12人かな?


()()()()()()()は行えますか?」

「・・・可能です」


 ソフィー様もぎりぎりを責めるなぁ・・・軍隊は5人で小隊、小隊が3つ集まって中隊だ。中隊長をいれて16人だね。


「では影の中隊長は任せます。小隊の編成もまかせていいですか?」

「ふふふ、ジプソフィーラ様は面白いお方だ。おっと失礼、承りました」


 うわぁ・・・クリザンテーモが笑うとこ初めて見たよ。

 プルーニャの目が点になってるし。


「ニンフェア、ここからエリカまで馬車でどのくらいですか?」

「ここからなら半日ほどかな」

「分かりました。出発は明日の早朝・・・朝食後です・・・裏の影の移動方法も任せます。隊列を組む必要はありませんが、いつでも中隊での行動が出来るようにしておいてください」


 しっかり朝食を取るのはいいことだね。クリザンテーモが一礼して退出していった。

 さて、この新しい情報を伝えたらソフィー様はどうするかな?さらに厄介になっちゃったよ・・・手の平に握っているメモの内容を思い出すと憂鬱になるね。




「なんですかニンフェア、話って?」


 場所を変えソフィー様にあてがわれている個室に移動した。


「先ほどの手紙と一緒に影から情報が入ってきてね」

「ああ、さっきの紙片ですか?何かあったのですか?」


 あまり重要な事だと思っていないのかソフィー様が小首をかしげて尋ねる。


「まあ、少し難度が上がったと言うか・・・リッチ侯爵が追加の兵を送ってきたらしくてね」


 ソフィー様の動きが一瞬止まった・・・さらに厳しくなったからね。


「援軍はどのくらいですか?」

「騎士50に歩兵200だね」


 ふ~、息を吐いてソフィー様がソファに腰を下ろした。数秒テーブルを見つめていたけど微笑を浮かべて顔を上げる。


「1個連隊でしたっけ?、想定内です。問題ありません」


 大ありだと思うけど・・・ソフィー様はどんな戦略を練ってるんだか?


「最初から言っているように一点突破で館に入ります。多少増えても変わらないです」


 人差し指を立てて気楽に左右に振る。うん、かわいい。そうじゃなくて・・・


「入った後が問題だと思うけどね・・・」


 無事に入れたとしても侯爵兵に囲まれることになる。こちらは中隊規模、侯爵兵は連隊規模だ。その差は10倍を超える。


「ちょうどいいのでわたしの新しいスキルと効果についてお話しておきますね。クリザンテーモも聞いておいてください」

「・・・はっ」


 ソフィー様が天井を見上げて声をかけるけど、返事は部屋の中、カーテンの影から聞こえた。ソフィー様の首の角度がギギギっと上から横へ向く。さすがにどこかまではわからないよね。見なかったことにしよう。

 クリザンテーモが当然いると思って話しているのは、指揮官らしくなってきていていい兆候だ。


「基本能力の付与は1で10%上昇です。例えば力が100の人がいるとすれば力の付与で110となりますね。武器の攻撃力を50とすれば、その人の攻撃力は160です。今回覚えた【付与魔術:物理攻撃2】は攻撃力に20%のボーナスが付くので160+160x0.2=192となります」


 つまり付与を与えられてない場合は150の攻撃力で、付与2つで192になるのか・・・

 数値で示されると具体的な強さが分かるね。


「【付与魔術:魔法攻撃2】はもう説明はいりませんね?次に【範囲拡大4】です。これは1で2人に2で4人に3で8人、4で16人に魔法範囲を拡大できます。ニンフェアに範囲拡大を使い範囲魔法の爆発を使えば・・・」

「爆発範囲が16倍に・・・なる?・・・」

「そうです」


 うそでしょ・・・ボクの【爆発】はスキルランク3で直径3メートルくらいに影響を及ぼす。それが16倍に・・・それは戦術級魔法だよ・・・やはりソフィー様はすごい。ボクの主は最高だね!


「・・・16倍・・・口をはさむ事をお許しください。ジプソフィーラ様がわたしに中隊をくませたのはまさか?・・・」

「ええ、わたしに範囲拡大を使えば一度の付与で中隊16人全員を強化することが出来ます」

「その基本能力上昇付与は力だけではなく・・・」


 クリザンテーモも気づいたようだね。ソフィー様の付与は力だけでなく、体力、俊敏、器用、英知、脳力、魔力すべてに及ぶ。単純な物理攻撃でも力だけが作用するのではなく、悪路を乗り越える体力が加わり、俊敏で上がった速度が乗り、武器を扱う器用さが合わさって攻撃となるのだ。その相乗効果はいかほどのものとなるのか・・・一般兵が精鋭になるよ。


「裏の影の皆さんはどのくらいの強さなのでしょうか?」

「・・・わたしと副統領が・・・今のニンフェアたちより少し、いえかなり劣ります。”レベル”というものがわからないですが今までに感じた神力が30回ほどでしょうか」


 ソフィー様が「ふむふむ」と頷きながら、


「鑑定を使った方が早そうですわね。出てきてくださいますか?」


 スッと目の前に膝まづいたクリザンテーモが現れた。


「じっとしててくださいね。【鑑定(バリュータジオーネ)1】」


 床が青白く光りクリザンテーモの周りに眩しい輪が現れ、足元から頭上へと抜けていく。


【クリザンテーモ】

 人族:男

 年齢:42

 レベル:32(SP16)

 状態:畏怖

 力 :D

 体力:C

 俊敏:B

 器用:B

 英知:C

 脳力:F

 魔力:F

 スキル:隠密2(3)、投擲2(3)、俊敏1、工作1、分析1、指揮1、毒耐性1(計11)


 取得可能スキル:斬撃1、殴打1、体術1、忍耐1、暗視1、跳躍1、剣術1、弓術1、拳闘1、棒術1、蹴術1、刺突1、指弾1、索敵1、物理耐性1、睡眠耐性1、魅了耐性1、混乱耐性1、石化耐性1、農耕1、鉱夫1、薬草1、鍛冶1、参謀1、行政1


 ソフィー様は鑑定結果を紙に書き写しクリザンテーモに渡す。


「それがクリザンテーモの能力です。スキルポイントが5余っていますので取得可能スキルからポイント分選んで取得しておいてください。残りの者にも後ほど付与魔術を掛けますので招集をお願いしますね」

「こんなことが・・・」


 紙を持つクリザンテーモの手が震えている。ボクが最初に感じた衝撃を理解してもらえたかな?


「使いこなせるようになるまで少し時間はかかるかもしれませんが、出発は延ばせません。申し訳ないですが移動中になんとかしてください」

「承りました。・・・改めてジプソフィーラ様に忠誠を」


 クリザンテーモが深く頭を下げる。落ちたね♪でもソフィー様の側近の座は渡さないよ。


「それで、残りの影は騎士相手はできるかしら?」


 クリザンテーモは跪いたまましばし黙考し、情報をまとめて話し出す。


「わたしの能力からすると、ほとんどの者がレベル20には到達していないでしょう。最低限の護衛は可能ですが諜報、妨害活動が主になりますので・・・」

「付与魔術を考慮にいれると?」


 これにはクリザンテーモも迷っているようだ。話には聞いても実際に”付与魔術”を受けてみないとその真価はわからない。


「なんとか五分までいけるかと・・・」

「十分です。突入時には倒すのではなく防御に専念し、突破することだけを考えてくださいね」


 それからソフィー様の作戦の説明が始まった。頭が良い方だけど・・・本当に12歳なのだろうか・・・大胆な作戦だけど不可能ではない。不可能ではないけれど、ソフィー様が危険に晒される可能性もある。・・・チラッとクリザンテーモを見ると同じ考えなのかボクを見て、影の仲間だけに通じるハンドサインで「キケンダ」と告げてくる。


「・・・このようにニンフェアには陽動を行ってもらいます。あくまで脅しですのであまり被害は与えないでください。被害を出しすぎると相手も結果を出さないといけなくなりますから、こちらの被害も大きくなります。にらみ合いが長引くと助かりますね」


 笑顔で説明するソフィー様、無垢な笑顔が逆に恐ろしいね。


「以上ですが、何か質問はございますか?」

「ございません」

「ひとつだけいい?」

「なんですか?ニンフェア」


 ソフィー様はきょとんとした顔で聞いてくる。


「ソフィー様は、今・・・英知がいくらあるの?・・・」


 ソフィー様の目がまん丸になってる。これはこれでかわいいな。


「やっぱり変ですかわたし?・・・」

「変ではないけど、レベルが上がって雰囲気が変わったね」

「そうですか・・・そうかもしれませんね。今の英知はAAAです」

「なっ!?」


 クリザンテーモが驚いてる。ボクも頬に汗が流れたのがわかった。


「Aを越えてるとは驚きだよ。さすがはソフィー様だ」


 能力はAが最高だと思っていた。それ以上を見たことがないからだ。AAAか、ソフィー様ならさらにその先も見せてくれそうだね。


「ではよろしくお願いしますね」

「まかせておいて」

「お任せを」


 いよいよナターレ奪還作戦(仮)が始まる。

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