表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/166

4話:ソフィーの決意

「れべる?が足りない・・・ですか?」


 どなたかオルテンシア様辞書をください!しらない言葉のオンパレードですわ!


「そうですね、冒険者でいう階級が低いせい、と申しましょうか。生き物として力をつけると”レベル”というものが上がります。魔物を倒し続けるとある時ふっと上がるのです。”レベル”が上がると力が強くなったり、足が速くなったり、賢くなったりもします。そして”レベル”を上げていくと”スキル”を得ることができます。」


 頭を整理しないといけませんわね・・・れべる?は人としての階級が上がるといったものでしょうか。れべるがあがれば強くなれると。そして強くなると、すきる?を得られる・・・ん?


「オルテンシア様、わたしはれべる?があがっていないのにすきる?を得ているのですか?」

「・・・本来は”レベル”が上がらないと得られないものですが、ソフィー様は生まれながらに持ってらっしゃるようですね。ただ、使用には体力を消耗しますので、今のソフィー様がお使いになると体力不足で発動しないか、昏睡状態になられるかと」


 思い出しました!去年おじい様が大事にしてらしたおばあさまの形見のペンダントを、わたしが誤って壊してしまった時、元に戻って!と強く願って意識をなくしたことが。


「あれが”スキル”でしたのね・・・」

「心当たりが?」

「ええ、おばあ様の形見のペンダントを壊してしまった時に元に戻るように願いました。直後に意識をなくしてしまって、目が覚めたら3日も経過していました。てっきり夢だったのかと・・・」


 ジニアが後ろからわたしをそっと抱きしめてくる。


「あれはそのせいだったのですね。お嬢様が急に昏睡状態になられたので心臓が止まるかと思いました」

「心配かけたわねジニア」


 オルテンシア様が優しい笑顔でわたしを見ている。


「トゥリパーノはそれを見てわたしに手紙を送ってきたのでしょう」

「なるほど、この”スキル”を使えばオルテンシア様を治してさしあげることが・・・」

「いや・・・」

「いけませんお嬢様!」


 オルテンシア様の言葉にかぶせるようにジニアが叫びました。


「次は死んでしまうかもしれないのですよ!たとえ死ななくても長い昏睡で後遺症でも残ったら・・・」

「その通りですソフィー様。無茶をしてはいけません」


 ジニアとオルテンシア様に反対されました。でもおじい様はそれをするおつもりだったのだし、・・・何か方法はないのかしら?


「では・・・」

「お嬢様、夕食のお時間です。今日はこのへんになされては?」

「え?・・・ああ、そうね」


 本来メイドが主人の話に口をはさむことはありません。あってはいけません。

 それでも会話を中断させたのはわたしの性格を知っているからでしょう。

 ジニアはこれ以上踏み込ませないようにしてるみたいだけど、オルテンシア様をこのままにはしておけないし・・・おじい様の遺言でもあります。なんとかしてみましょう。


「オルテンシア様、療養中に長々と申し訳ありませんでした。ごゆるりとお過ごしくださいね」

「ありがとうございますソフィー様」





 夕食後、部屋に戻ってジニアに髪を梳いてもらいながら就寝の準備をします。

 いつもなら楽しいおしゃべりをしながらの時間なのですが、髪を櫛削る音しか聞こえません。


「ねえ、ジニア・・・」

「いけませんよ、お嬢様」

「・・・何も言ってないし・・・」


 言う前からダメ出しがきました・・・これは手ごわい・・・


「言わなくても分かります。お嬢様が生まれた時からの付き合いなのですから」


 ジニアの母が幼かったジニアを連れて我が家のメイドになったのは、20年以上前のことです。ジニアは13歳の時にメイド見習いになり、その2年後にわたしが産まれました。それから12年、ジニアは27歳にしてメイド長になったのです。

 まあ、ジニアがほぼわたし専属になってしまったせいで、実務は副メイド長でジニアの母のアドリアが取り仕切っているのですが。


「昔、厨房の食糧がネズミに荒らされた時、館中いぶしてネズミを追い出したことがあったわよね?」

「は?・・・ええ、確かに・・・」


 ジニアは訝し気な目でわたしを見てきます。


「ジニアのイヤリングがカラスに盗まれた時、森のカラスの巣まで追いかけて取り返したことがあったわよね?」

「・・・ええ、まぁ・・・」


 わたしの言わんとしていることが分かったようで横を向いてしまいましたが、わたしはなおも畳みかけます。


「それなら、わたしが一度決めたら必ずやり遂げる性格なのも知ってるわよね?」


 ちょっといたずらっぽく言ってみる。

 ジニアはあからさまに嫌そうな顔をして鏡に映るわたしを見ています。目をつむり、上を向いたり下を向いたり、うーうー唸ってから大きなため息をつきました。


「はあっ!・・・・色々調べてみないといけませんわね・・・ソフィエッタ」


 ジニアは諦めた笑顔でわたしの頭に軽くチョップを落としました。幼いころのわたしの愛称を口ずさんで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ