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3話:鑑定

 オルテンシア様にお話を聞きたかったのですが、視察から戻った時点ですでに午後も遅く、お父様との話し合いが終わったころには日が沈みかけていたこともあり、明日にすることになりました。


 オルテンシア様が人間ではないと知っているのはわたしとお父様、手当てをしてくれたメイド長のジニアだけです。

 本来メイド長は10人いるメイドの統括役ではあるけれど、ほぼわたし専属扱いになっています。まだメイド長ではなかった頃のジニアが、わたし専属だったためメイド長になった今も側にいてもらっているのです。これでも人見知りなのです・・・

 ジニアは口も堅いし他のメイドに話したりはしないだろうけど、一応口止めしておきませんと。


 そういえばオルテンシア様って人間の食べ物でいいのでしょうか?おじい様の手紙にも書いてありましたが、魔道具の一種なのだとしたら魔力や迷宮から産出される魔石が必要なのでは?これも聞いてみないとわかりませんね。


 コンコンコン

 わたしの部屋の扉がノックされる。


「どうぞ」

「失礼しますお嬢様」

「ジニア、待っていたわ。オルテンシア様のご様子は?」

「今はお休みになっています。怪我・・・は治療のしようがないので包帯を取り換えておきましたが・・」


 まあ、あれを怪我と言っていいのか迷いますね。右腕の断面部分は金属なのか土なのか。足の裂傷も出血がなく皮膚の下には切れたひも状のものが見えていました。


「ありがとう。このことは他言無用でお願いします」

「かしこまりました」


 お休みということですけど少しお話できるでしょうか?お腹がすいているかもしれませんし。


「ジニア、オルテンシア様と少しお話できないかしら?」

「・・・眠ってはおられませんでしたが、もうすぐ夕食のお時間ですよ?」

「それです、オルテンシア様が何をお召し上がりになるのかお聞きしませんと」


 わたしは立ち上がるとオルテンシア様のいる客間に向けて歩き始めました。ジニアが何か言いたげな表情をしていましたが黙ってついてきます。




「オルテンシア様、ソフィーです。入ってもよろしいでしょうか?」


 扉をノックしながら中にいるオルテンシア様に声をかける。


「・・ええ、どうぞ」

「失礼しますね」


 わたしとジニアが中に入り、ジニアは扉の横に待機します。わたしはベッドの横まで歩いていくと椅子に腰かけオルテンシア様を見つめました。オルテンシア様も見つめ返してきます。


「お手紙拝見いたしました。生前の祖父がお世話になったようでありがとうございます。我が家にとっては恩人ですからゆっくりしてらしてください」


 そう言って頭を下げました。


「ありがとうございます。それで、トゥリパーノはいつ?」

「ほぼ1年前です。おそらく手紙を書いた直後かと」

「そうですか・・・」


 オルテンシア様は黙とうをするようにしばし目を閉じました。


「いろいろお話したいこともありますがもう日が落ちます。詳しいことは明日にしましょう。それで、オルテンシア様は何か召し上がられますか?」

「お気遣いありがとうございます。ですがご承知の通りわたしは人間ではありません。食物の摂取は不要です」


 食べ物も食べず50年も生きてきたの!?わたしなら3日で死んじゃう・・・ということは魔道具なのでしょうか?


「で、では、魔力か魔石が必要ですか?」

「ふふ」


 オルテンシア様が微笑んでわたしを見ています。何かわたし変なことを言ったのかしら?


「ごめんなさい。昔ステッラにも同じことを聞かれたので思い出してしまいました」

「そうですか、おばあ様が」


 優しかったおばあ様の顔が浮かぶ。わたしと同じこと言ったんだ。ふふ。


「わたしの身体は"超極小ブラックホール"をエネルギー源としているので、食べ物も飲み物も不要なのです」

「ちょごくしょぶらっく・・・?」


 何か魔法詠唱のようなことを言われましたがチンプンカンプンですね・・・


「ところで、ソフィー様は・・・”スキル”をお持ちなのですか?」

「あ!それです。おじい様の御手紙にありましたが・・・ごめんなさい、わたしには何のことかわからなくて」


 ほんとにわからない。おじい様はなんであんなことを書いているのか。わたしの”スキル”?でオルテンシア様を修理?するって・・・


「そうですか・・・少し”鑑定”させていただいてよろしいですか?」

「かんてい?ええ、どうぞ」


 かんてい?がどういうものかよく分からなかったけど変なことはされないよね?

 オルテンシア様はゆっくりと左手の手のひらをわたしに向けると、


「【鑑定(バリュータジオーネ)10】」


 次の瞬間わたしの足元から光の環が現れ、わたしを包むように上へと上がっていきます。そして頭の上まで来るとふっと消えました。


「な、なに?今の?・・・」

「お嬢様!大丈夫ですか!?」


 扉の横にいたジニアがあわてて駆け寄ってきます。


「ええ、大丈夫よ」

「驚かせてしまったようで申し訳ありません」


 オルテンシア様が横たわったまま顎を引くように謝罪しました。


「今のは”鑑定”と呼ばれる"科学"技術の一つで、ソフィー様の能力を調べました」

「かがく?」


 先ほどと同じ聞いたことのない言葉です。


「ソフィー様は確かに”スキル”をお持ちです。ただ、”レベル”が低いせいで発現できないようですが・・・」


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