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17話:完全記録

 予定の時間前に階段前まで戻ってきました。

 すでにプルーニャとルカ君が戻ってきており、夕食の準備をしてくれています。


「あ、おかえりニャ」

「おかえりなさい。もうすぐごはん出来ますからね」

「ただいま戻りました。ルカ君ありがとうございます」

「ただいま、いい匂いだ!」


 プルーニャとも早めに話し合っておいた方がいいですね。


「アレク、ルカ君を手伝ってあげてくれます?」

「もちろんです。手伝うよ」

「ありがとうございます」

「プルーニャ、ニンフェア、お話があります」

「ニャ?」

「うん」


 階段横にある小さな部屋に入ります。ここはウサギがでる部屋ですがまだ5時間も経っていないので、ウサギが沸くことはないでしょう。


「さて、まずはプルーニャにも情報共有しておきましょうか」


 プルーニャに先ほど見つけた特殊な部屋のお話をしました。


「へ~確かに5階に不自然にゃ空間はあったニャ~、それが今4階にあるのニャ?」

「うん、たぶんそれで間違いないと思う。位置もぴったりだしね」

「それでどーするのニャ?」

「入ります」

「ソフィー様・・・」


 なんだかニンフェアが不安そうですね。うまく説明できるでしょうか?


「優先順位は食料調達ですよ。プルーニャの方はどうでしたか?」

「14,5匹沸く部屋は見つけたニャ。ここから30分くらいだニャ。「お肉」は5つでたニャ」

「それは朗報ですね。こちらも10匹ほどのお部屋を見つけました。「お肉」は3つです。それとこの部屋が1匹ですね」


 これはいいですね。一度に8つ手に入れば一日で30個以上を見込めます。1個で1人1日分として6日分ですね。


「これから丸1日、6時間ごとにウサギ狩りを行います。戦えない身の上で申し訳ありませんが、2つの大部屋はニンフェアとプルーニャにお願いしたいです」

「それは構いませんが・・・その間のソフィー様の警護はアレク達ですか?」

「アレクとルカ君には1匹部屋を担当してもらおうと思います」

「ダメです。護衛がいなくなる」

「そーだにゃ、ジニア様に殺されるニャ・・・」


 う~ん、ダメですか。先にわたしの話をしますか。


「わたしに元から”スキル”があることはご存じですよね?」

「ええ」

「うみゅ」

「実はもう2つあります。ここでレベルがあがって覚えて・・・いえ、違いますね。思い出しました」


 2人は何を思っているのか、静かに聞いています。


「わたしが得たスキルは【分割人格2】と【完全記録1】です」





「”スキル”の名前も分かるの?・・・」

「そうですね【完全記録1】のおかげです。この国の記録、この大陸の記録、この星の記録、そしてわたしの正体、すべて()()()()()()()


 訳がわからないよ!ソフィー様はどうなったんだ!?・・・


「妖精族。元は精霊の一族で人間と交じわい精霊の世界に帰れなくなった一族の末裔」

「なっ!なぜ・・・それを」

「星の記録を見ました」


 少し・・・少しだけ、ソフィー様が恐ろしくなった。ソフィー様は今もソフィー様なんだろうか?・・・


「話がそれましたね。今の私は、万物森羅万象のすべてを知っている存在、と思ってください」

「ソフィー様はすごい人ににゃっちゃったのかニャ?」

「そうですね、生きた辞書?でしょうか、ふふふ」


 それで・・・自我を保てるの?・・・


「話を戻しましょう。もう1つのスキルは【分割人格2】です。わたしは同時に2つの人格で考えたり話したりすることが出来ます。今話しているのは【分割人格2】で生まれた新たな人格の方です。ソフィーはわたしを「フィーラ」と名付けました。ここまではよろしいですか?」


 マズい・・・混乱して頭が回らない・・・


「よろしくはないけど、あなたはどーしたいんだい?」

「ソフィー様?フィーラ様?どー呼んだらいーのニャ?」

「今日1日食料調達をしたらあの部屋に入ります。あの部屋はレイド部屋と言って、集団戦用の強大な魔物がいます。本来は5人で倒せるような魔物ではありませんが、今なら倒せる方法があります」


 集団戦闘(レイド)?倒せる方法?本当に何でも知っているの?・・・


「無理してまで倒さないといけないのかい?食料の目途も経ったのだしここで”レベル”をあげればいいんじゃない?」


 ソフィー様を危険な魔物の所に連れてはいけない。


「ソフィーがね、入りたいって言ってるの」

「どーゆーことだい?」

「討伐報酬の【スキルリセット】がほしいって」


 ”スキルリセット”?


()()によればレイドは2、30人くらいで討伐することを想定している魔物です。レイド部屋はある一定期間ごとに入れる仕組みで、今を逃せば次は1年後になるでしょう。そんな魔物ですので倒せばかなり有用な魔道具やアイテムがでます。その中に【スキルリセット】もあります」


 討伐することを想定、している!?誰が想定しているんだ?「迷宮」とは一体・・・


「その・・・【スキルリセット】を手に入れてどーしたいんだい?」


 ボクは相当険しい表情をしていたと思う・・・ソフィー様の言葉を聞いて「迷宮」の異質さが際立ってきた。

 フィーラがボクをじっと見つめて、ふっと優しいソフィー様の顔になった。


「ニンフェア、あなたのスキルを消してあげたいの。あなたの望まないそのスキルを」


 心を見透かされている!?


「スキルはランダムに得られるものですが、本来ある程度その人の性質にあったスキルが得られるようにできているのです。でもニンフェアはある程度の範囲を越えて、性質に合わないスキルを得てしまっています」


 性質にあった・・・か。妖精族は力や体力は弱い。精霊を先祖に持つから魔力特化だ。それなのに身に着く”スキル”は接近攻撃しろと言ってくる。


「オルテンシア様からは【縮地2】と【剛腕1】と言われたよ。確かに合ってないね」

「その2つはレベルが上がってそれぞれ3と2になっています。そしてここに来て新しく手に入ったスキルは【体術1】です」


 そんな気はしていた。ボクは脳力がB、魔力がAなのにそれを生かす”スキル”がない。


「ニンフェア、あなたの性質は遺伝子違・・・病のようなものです。理由は分かりますが、治してさし上げることが出来ません」


 ”いでんしい・・・”?


「わたしはどーにゃのニャ?」

「プルーニャは【回復2】、【俊敏2】、【斬撃1】、【体術1】、【幸運1】ですね。一撃離脱戦術型で急所攻撃しやすい【幸運1】、近接用の【斬撃1】、【体術1】、自ら治療できる【回復2】と、一人で生き抜くためのスキル構成だと思います」

「おーいっぱい増えた!やったニャ」


 プルーニャは今の状況が分かっていないのかな・・・情報が多すぎて頭が冷静に働かない・・・


「その【スキルリセット】を使えば役に立たないこの”スキル”が消せると?」

「消えるだけではありません。スキルを消すとそれに見合ったスキルを選ぶことができるのです」


 選べる!?脳力を使う”スキル”を!?・・・脈拍が速くなっている。身体が熱い・・・まさか、まさかそんなこと出来るわけが・・・


「お気づきですか?これはかなり特殊なことです。二度とない機会だと思ってください」

「で・・・でも・・・、それでも!ソフィー様の安全が第一だっ!」


 ふわっとソフィー様がボクを抱きしめてくれた。身体がビクッと跳ねる。

 ソフィー様が第一と言いながら、自らの運のない”スキル”のことばかり考えていた。

 ソフィー様の護衛として強くなるのはいいことだと言い訳をして、ソフィー様を危険なことに巻き込もうとしている醜いボクを・・・

 そんなボクを許してくれるように抱きしめてくれた。ボクより7つも下のはずなのに、母の記憶はないけど、まるで母に抱きしめられてる気がした。


「ありがとうニンフェア。とてもうれしいわ」

「ソフィー様、ボクは・・・」

「いいのよそれにね、実はわたしもほしいのです【スキルリセット】を」


 まぶしい笑顔だ。ソフィー様が望むなら叶えてあげたい。


「作戦があります。わたしを信じて」


 とても安心する。護衛対象のはずなのにボクの方が守られてるみたいだ。


 信じて、みようか。


「・・・はい」

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