15話:アレクとルカ君の奮闘
「”火よ”!」
わたしは最後のカエルに火を放って牽制すると、アレクさんが飛び掛かり、カエルの口に剣を突き刺しました。
「終わりだ!」
アレクさんが剣を捻ると、カエルが光の粒に変わり消えていきます。
「はぁ、はぁ、ありがとうルカ君、助かったよ」
「はぁ、はぁ、いえ、お役に立ててよかったです」
アレクさんは剣を杖代わりにして、片膝をついて荒い息を吐いています。
大型犬サイズのカエルが3匹と、牛サイズのイモリが1匹。イモリは巨大すぎてわたしの火でも表面を炙る程度で、あまりダメージを与えられませんでした。しかもカエルはわたしの火をジャンプして躱し、近寄ってきます。アレクさんが剣を大振りして牽制してくれなければ危ないところでした。
アレクさんは数を減らすために、剣を横なぎにしてカエルたちをジャンプさせました。すかさずわたしがカエルの着地地点めがけて、火を放って火だるまにしました。
2匹目のカエルを火だるまにした時、イモリがアレクさん目掛けて突進してきました。躱してしまうとわたしに向かってくるので、アレクさんは剣を手放し、両手でイモリの突進を受け止めました。
少し後ろに押されましたがピタリと止まり、どちらも動かなくなりました。力が拮抗しているようです。
火だるまになったカエルが消えた時、恩恵を受けた感じがしました。新しい恩恵ではなく火の恩恵が強くなった気がしたので、ありったけの魔力を込めました。イモリの身体を指差し・・・
ドン!
「あ!」
いつの間にか背後に回っていたカエルの体当たりを受けて、わたしは弾き飛ばされイモリにぶつかりました。魔力が霧散しそうだったのでイモリのお腹に手を付いたまま、
「”炎よ”!」
ボンッ!
イモリのお腹が爆ぜました。
アレクさんは腰からダガーを引き抜くと、逆手に持ちかえイモリの頭に突き立てました。
最後のカエルがジャンプしながらわたしに迫ってきます。もうほとんど魔力が残っていなかったので、小さな火を灯して牽制するのがやっとでしたが、剣を拾ったアレクさんが最後のカエルを倒してくれました。
「はぁ、はぁ」
きつかったです。わたしも地面にへたり込んで息を整えます。
「あ、終わった?」
「はぁ、はぁ、はひ・・・」
ニンフェアさんがお部屋から顔を出しました。息が荒すぎて返事ができません。
「お待たせしてごめんなさい」
ジプソフィーラ様が軽装に着替えて出てきました。ドレスでなくてもかわいいですね。
「ルカ君、アレク大丈夫ですか?」
「だい・・・じょーぶです・・・」
「あまりだいじょばにゃいみたいだニャ。仕方にゃい。【回復2】ニャ」
プルーニャさんの手から緑色の光が出て、アレクさんを包み込みます。
「お、おおおおぉぉ!」
アレクさんがすくっと立ち上がりました。すごいです!プルーニャさんの恩恵でしょうか!
「ルカ君もニャ」
再び緑色の光が溢れやさしい空気に包まれます。身体の疲労が癒え、小さな怪我も治っていきます。
「ありがとうございます!」
「気にしにゃい~気にしにゃい♪」
「それじゃ先にいこうか」
移動の時の陣形は最初の時と同じく、前からプルーニャさん、アレクさん、ジプソフィーラ様、わたし、ニンフェアさんです。
移動中何度か先ほどのカエルやイモリも現れましたが、プルーニャさんは散歩のついでとばかりに一蹴していきます。
時々大物が現れると、手足を切り飛ばしダガーで地面に貼り付けにし、ジプソフィーラ様にトドメをさしていただくことに。
結局ジプソフィーラ様にはできなかったので、目隠しをしてショートソードを握らせ、ニンフェアさんがジプソフィーラ様の腕を動かしていました。
地下2階と3階の間の階段で昼食をとると、午後からは地下3階に。あいかわらずプルーニャさんが一撃で倒していくので、魔物が強くなっているのかいまいち分かりません。
あ、コレって・・・わたしは自らの”レベルアップ”を感じました。今までも何度も”レベルアップ”してきましたが、今回は同時に取得した”スキル”によって自覚したのです。
何コレ・・・【完全記録1】、【分割人格2】・・・あ~そういうことですか。わたしは完全に理解しました。わたしは管理者だったのですね。わたしのお母様も、おばあ様も、帝国の女王様も。
そうよソフィー。あなたはF0の管理者から女系継承で代々受け継がれてきたF52代目の管理者。
あなたはわたしの分割人格ですね。初めまして、あなたをフィーラとお呼びしてもよろしいですか?
ええ、構わないわ。
帝国の女王は・・・帝国とは、代々管理者を受け継いできた一族なのですね。
知らなかった知識が一度に頭に流れてきて頭がパンクしそうです・・・私の中にF1のミストレスからF51のお母様の記録までが流れ込んできます。
空間の上下が分からなくなり、立っていられなくなりへたり込んでしまいました。
「「「「ソフィー様!?」」」」
わたしの具合が悪くなったと思った皆さんが一度休憩を取ってくださいました。
「ソフィー様大丈夫かニャ?」
「ええ、ちょっと頭が混乱してしまって・・・」
今は、何をしていたのでしょう?・・・ここは?迷宮?・・・トゥリパーノとオルテンシア様と・・・お兄様!?・・・いえ、違います。わたしはジプソフィーラです。
「ん?魔物の攻撃にそんなのあったかな?」
そう、わたしはジプソフィーラ・・・ステッラおばあ様の記録と混同してしまいました・・・
「いえ、そういうのではない・・・と、思うんですけど・・・ごめんなさい、もう大丈夫ですから」
しばらく休憩してからジプソフィーラ様が「もう大丈夫ですから」と言うので出発することになりました。
ジプソフィーラ様は気丈に振舞っていますが、何やらブツブツとつぶやいています。注意して見ていないと時々立ち止まったり、何もいないのに驚いたり・・・まるで誰かと話しているような?・・・
4階への階段が割と近くにあり、夕方くらいの時間には到着しました。
「今日はここで野営かニャ」
「わかりました。夕食の準備をしますね。アレクさん手伝ってください」
「もちろんだ」
「わ、わたしも手伝わせてください」
ジプソフィーラ様が手伝いを申し出られましたが、まさかお貴族様にやらせるわけにはいきませんし、今日はお疲れのようですし・・・
「いえ、わたしどもでやりますので、ジプソフィーラ様はどうぞお休みになってください。お気遣いありがとうございます」
「迷惑なことはしないほうがいいわ・・・」
どうしたのでしょうか?ジプソフィーラ様の様子が変ですね?独り言?
「でも・・・わたしは・・・」
夕食後軽く明日の打ち合わせをして、見張りを立てて休むことになりました。
今日はなぜかアレクさんが先に休ませてほしいとおっしゃいましたので、昨日の逆でアレクさんとニンフェアさんが先に休んで、プルーニャさんとわたしが見張りにつきます。当然ジプソフィーラ様にもお休みいただきました。
階段の中ほどは安全とうかがっていましたが、結局3階からも4階からも襲撃はなく、問題なく朝を迎えました。(しつこいようですがたぶん)
朝ごはんを食べてニンフェアさんが「それじゃいこうか」と声をかけて立ち上がります。
皆さん気づいているようですが、ジプソフィーラ様の様子がおかしいです。お疲れなのでしょうか?かなり無口になりました。何か考え込んでいらっしゃるようです。
わたしは昨年の戦争で野営には慣れていますが、お貴族様にはさぞ不便なことなのでしょう。
わたしが考え事をしている間も、プルーニャさんが魔物を蹴散らしながら進んでいきます。あいかわらず4階でもすべて一撃で一蹴ですね。どれだけお強いのでしょうか・・・
「う~ん、出ないね」
「でにゃいニャァ・・・」
昨夜の打ち合わせで真っすぐ5階への階段を目指しながら、「お肉」を落としてくれる魔物を探しますが、現れないようです。
ついに5階への階段までやってきて、ここで昼食をとることになりました。
迷宮に入って6回目の食事です。残りの食糧は2日分しかありません。




