14話:ルカ・デルーカ2
明け方(たぶんですけど地下ですから)、ニンフェアさんが起きてきました。アレクさんは昨日の疲れからかぐっすりです。
「そろそろ沸くころかな」
「魔力の淀みみたいにゃのを感じるニャ」
「ルカ君準備してね」
「は、はい!」
先ほど起きてきたニンフェアさんに、指差し攻撃を指示されました。見たところが発火するので、皆に火を出すところを示すとともに、狙いを正確にしてうっかり失火を防ぐためです。
「でたよ」
「はい!」
わたしは射程距離まで芋虫に走りよると芋虫を指差し、
「”火よ”!!」
ありったけの魔力を込めて唱えました。
料理の時とは違いわたしの背丈ほどの火柱があがり芋虫が炎に包まれます。現れた芋虫は3匹で真ん中の芋虫が燃え盛っています。左右の芋虫にも引火してダメージを与えているようです。
「続けて」
「”火よ”!」
今度はあまり火がついていない左の芋虫にむけて指を向けました。芋虫の頭が燃え盛りもだえ苦しんでいます。真ん中の芋虫が光の粒になって消え、続けて左の芋虫も消えました。最後まで残った芋虫も、10を数えるころには光の粒になりました。
カラン、最後の芋虫が消えた後いつもの魔石以外に奇妙な筒が落ちました。
「上出来上出来。十分使えるね」
「そうだニャ、これならこの先も援護役ににゃれるニャ」
お二人に褒めていただけました。ちょっと嬉しいです。プルーニャさんがひょいひょいっと魔石を集めて最後に筒を拾います。
「これは魔道具かにゃ~?」
「どうだろね、オルテンシア様に見ていただかないとわからないね」
「ルカ君が倒したからこれはルカ君のだニャ」
プルーニャさんが筒を手渡してくれます。
「いいんですか?」
「いいのニャ。その代わり・・・」
ゴクリ、その代わりなんでしょう?・・・
「朝ごはんは大盛で頼むニャ」
「プルーニャズルいっ!ボクもお願い」
ふわぁ・・・
「朝、ですの?まだ暗いですわね・・・」
「あ、ジプソフィーラ様おはようございます。朝ごはんの用意できてますよ」
「おはようジニア・・・あっ!」
そうでした。今は「迷宮」の中でした。
「目が覚めましたかソフィー様。あいかわらずよく寝るね」
「ソフィー様は低血圧で朝弱いからニャ~♪」
「おはようございますジプソフィーラ様」
「えっと、おはようございます皆さん・・・」
顔から火が出そうでした。
「あ~おいしかった。ごちそうさま~」
「うまかったニャ~満腹ニャ~♪」
「ご、ごちそうさま・・・でした」
「ルカ君ありがとう、おいしかったよ」
「お粗末様でした」
朝ごはんを食べてようやく目が覚めました。これ以上足を引っ張るわけにはいきません。
戦いではわたしとルカ君は役にたたないみたいですけど、ルカ君は料理が作れますし、わたしも何かお役にたたないと。
そういえばルカ君は火が出せるのでしたね。本当に魔物を倒せるのでしたら役立たずはわたし一人・・・
ジニア!わたしに力を!!
「片付け終わったら出発するよー」
「あ、ニンフェア」
「なんですかソフィー様」
「あの・・・少し湯あ・・・体を拭きたいのだけれど・・・」
それを聞いてニンフェアとプルーニャが脇をクンクンしている。
「そうですね、あまり匂うと魔物を引き寄せてしまうかもしれませんし、アレクを興奮させてもいけませんし」
「んなっ!」
アレクが真っ赤になっています。ニンフェアの悪い癖ですね、からかうのは。
「んじゃお水だすニャ」
プルーニャが杖を出して湿っている地面に突き刺し、ルカ君が桶をだして水をためています。
「アレクは外出てなさい」
ニンフェアがアレクを外に追い出し扉を閉める。
「こんな所で1人にしないでください!!うわっ!魔物が!!」
扉の外で「シャアアア!」という唸り声とアレクの悲鳴が聞こえます。大丈夫でしょうか?
ニンフェアは気楽に「がんばって」とか言ってますし、大丈夫・・・ですよね?
考えてみれば昨日の朝着たドレスで宿屋から「迷宮」まで全力で走って、そのあと「迷宮」の地下2階まで魔物と戦いながら進み、そのまま着替えずに寝ました。
予定では宿屋を出発する前に「迷宮」用の装備に着替えるはずだったのです。ここで着替えてしまいましょう。
わたしがドレスを脱ごうとすると、
「あ、お手伝いしますね」
「ありがとう・・・」
ルカ君がわたしのドレスに手をかけて・・・止まりました。
ニンフェアとプルーニャが体育座りをしてルカ君をじっと見ています。
「えっと・・・」
「あ、あ、わたしも外でてますね!」
「あ・・・」
いえ、もういいんですけど。
まだ続けるおつもりなんですかね?
男性の振りを。




