126話:リッチ侯爵の誤算
おはようございます。今日は久しぶりにアニメーターのお仕事をしてきます。腕が訛りまくってそうですが・・・
こいつ中々やるニャ!以前戦ったロレンツォ大尉より遥かに強いニャ!
わたしのレベルは86。こいつらも80を超えてそうだニャ。一対一にゃらともかく複数相手だと防戦一方だニャ・・・
二人の襲撃者が同時に短刀で攻撃してきた。一人は突き、一人は薙ぎ払い。後ろに飛んで躱して・・・いや、ここは前に出るニャ!王子の護衛として中に入り込めたけど、さすがに武器は持ってこれにゃかったから懐に潜り込まにゃいとジリ貧ニャ!フードと頬を浅く斬られにゃがらも突きをギリギリで躱し、薙ぎ払いは小手で受ける。かにゃりの衝撃があったけど、構わず突きを放った姿勢で固まっている正面の敵に掌底をぶち込む。
手ごたえが薄い!?敵はとっさに後ろに飛んだようだニャ。間髪入れず薙ぎ払いが終わった敵がそのままわたしのわき腹目指して突きを放ってくる。空中に背面飛びし短刀を躱すと、倒立状態で回し蹴りをお見舞いしたニャ。二人と少し距離が開いたところにもう一人が背後から迫る。地面に降りた瞬間を狙われてる?わたしは両足を開脚させてそのまま地面に座り込む。頭の上を短刀が通り過ぎ、フードは斬り飛ばされ髪が数本宙に舞ったニャ。すかさず両手を軸に地面スレスレの回し蹴りを叩き込んで敵を空中に浮かばせ、もう一回転しながら立ち上がり背中を蹴り飛ばしたニャ。すぐに態勢を整えた3人はほとんどダメージがにゃいみたいで短刀を構えてジリジリと近寄ってくる。せっかく顔を隠してたのにフードがにゃくにゃって猫耳が露わににゃっちゃった・・・
「ひぃ~きっついニャ。このままじゃ数分ももたにゃいニャ。ソフィー早めにおねニャ!」
プルーニャでも苦戦している。こいつらマスダさんの迷宮の16階層並みの強さだ。レベル80以上だね。ボクは陛下と王子の前に陣取って二人の襲撃者を相手取る。
「【雷撃2】!【爆発1】!」
襲撃者に放った雷撃はあっさりと躱され、躱したところを狙った単体用爆発魔法は両手をクロスさせた襲撃者に防がれる。威力を落とした爆発魔法は効かないね。かと言って威力を上げたら他の貴族が巻き込まれかねない。再び迫って来た敵は陛下を狙っている。左右から切り込んで来た刃を躱してしまうと後ろの陛下がやられる!?
「【雷撃2】!」
両手を斜め前に突き出し二人に雷撃を放つ。その瞬間を狙っていたかのように二人の敵がボクの正面に回り込んで同時に突きを放って来た。ここだっ!
「【雷撃2】放電!!」
バリバリバリ!!
新しいスキル「魔法強化」で威力が、「精神強化」で放電時間を増した雷撃がボクの身体の前方に放出された。雷撃は手の先以外からでも出せるんだよ!油断していた敵は雷撃をもろに食らって、直立したまま紫電の蛇にローブを焼き切られた。はだけたローブの下から現れたのは長い耳を持った美形の女性。こいつがハイエルフか?ソフィー様を殺した奴の仲間・・・思い出したら怒りが湧いて来るね。
感電して動けない敵に向かって縮地で肘鉄をお見舞いする。もろに入ったはずが感電からすでに回復した腕に受け止められる。強化したとはいえ雷撃レベル2じゃたいして効いてないのかっ!?腕を掴まれ動けないところをもう一人の敵が短刀で攻撃してくる。ちっ!
「【短距離転移1】!」
縮地で前に出た分だけ短距離転移で後ろに下がる。その時ボクのローブがバラバラになって砕け散った。・・・そうだ、ボクのローブも焼き切れるんだった・・・ローブの無くなったボクの背中から、鱗粉を振りまく2枚の羽が姿を見せる。マズったね。魔物に間違われると面倒なことになる。
「君たちは?」
背後にいる陛下に声をかけられた。羽が見えているはずだけどそのことには特に触れてこない。背を向けたままで話すのは不敬だけれど、ハイエルフから目が離せないのでしょうがないよね。
「ヴァレリオ元王子の護衛の者です。訳あってこのような姿で失礼します陛下。危ないので下がっていてください」
突然の襲撃なのに陛下は落ち着いているね。無駄に騒がれるよりよっぽどいいけど。怪我をした王子はプルーニャが治したけど腰を抜かして震えている。別の意味で静かで助かるよ。
敵は黒ずくめの5人と正面の壁際にいるリッチ侯爵と護衛2人の8人ですね。
大きく息を吸って吐きます。今までは特に付与の順番も気にせず入れていましたが、戦いやすい順番をニンフェアたちと話し合って決めました。加速と俊敏を同時に入れてしまうと、身体の反応速度に頭が追い付かず逆に戦いにくいそうです。実際に戦っている人に聞かないと分からないものですね。
よし、いきます!
「【範囲拡大4】!【付与魔術:物理攻撃2】!【付与魔術:魔法攻撃2】!」
まず範囲拡大でわたしとお父様にヴァレリオ王子、それにクリザンテーモさんとフィオーレ様とニンフェアとプルーニャ、さらに陛下と腰を抜かしている王子様を指定します。付与魔法はまず効果の大きい「物理攻撃2」と「魔法攻撃2」からかけます。戦っているニンフェアとプルーニャの攻撃力を上げて、次です!
「【付与魔術:加速1】!【付与魔術:吸収1】!【付与魔術:魔力1】!」
加速と吸収を入れれば「とりあえずは何とかなるよ」と、言っていたのはニンフェアです。それから枯渇したわたしの魔力を上げます。
「【付与魔術:力1】!【付与魔術:脳力1】!【付与魔術:体力1】!」
付与も折り返しです。基本能力アップを狙い、「力」と「脳力」を上げて「体力」を底上げします。残った「器用」と「英知」はなくても問題ないかとも思いましたが、「戦いは強い者が勝つのではなく、勝ったものが強いのニャ。ほんの些細なことが勝敗を左右することもあるのニャ」というプルーニャの格言を聞いてすべて入れることにしました。
「【付与魔術:器用1】!【付与魔術:英知1】!【付与魔術:俊敏1】!」
そして最後に「俊敏」です。「加速」でしばらく身体を慣らしてから入れれば、誰も動きについてこられない超高速戦闘が可能になるのです。
ニンフェア、プルーニャ、頼みましたよ!
ジプソフィーラめ!何やら魔法のような詠唱をしておったが、魔法が使えるのかっ!?身構えていたが特にこれといった効果は何も・・・?
「ニャァ~・・・」
ゾクッ!!
なんだこの悪寒はっ!?ハイエルフ共と対峙しているあの小柄な者たちか・・・んっ?あの耳!?あの羽!?・・・獣憑きに妖魔かっ!?室内だというのに風が渦を巻きローブと髪がはためいている。身体から蒸気のようなものが立ち上り身体が発光している!?ふっと姿が掻き消え次の瞬間5人のハイエルフ共が吹き飛んだ!一体何が起こったのだ!?
「フィオーレ様!お願いします!」
ジプソフィーラの側にいた一人の男がこちらに向かって走って来た。どこかで見たことがある気がするが、思い出せんな・・・
「貴様たち、あの男を殺せ!」
二人の護衛に接近する男を殺すよう命じる。これで手持ちの戦力がなくなった。しかし、わたしにはこの支配の王笏がある!
この場で、バルビエリ三世のいるこの場で支配の王笏を手に出来た!奴を支配してしまえばすべては思いのままよ!!王笏を国王に向け、いつものように支配の王笏の力を解き放つ。
「バルビエリ三世!我に従えっ!!」




