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12話:アレサンドロ・フェラーリ

 自分はアレサンドロ・フェラーリ。ジプソフィーラ様の護衛任務で「迷宮」に来ています。

 当初は10人での護衛のはずがなぜか4人だけです。

 ロート兵士長は「迷宮」に入る前に斬られてしまい、生死不明。他の5人は合流に間に合いませんでした。

 自分は破壊工作や罠の設置、解除が専門で直接戦闘は苦手です。ルカ君も兵站部隊にいたらしくおそらく戦闘は苦手でしょう。こんな状態で「迷宮」探索などできるのかと思いましたが、ジプソフィーラ様の侍女?であるはずのニンフェアさんとプルーニャさんが・・・強い。


 先頭をプルーニャさんが受け持っていますが、魔物がでると自分が身構える前に倒してしまいます。

 プルーニャさんの後ろが自分でその後ろがジプソフィーラ様です。ニンフェアさんからは戦わなくていいから「盾」になれと言われました。身体が大きいことだけが自慢ですから。

 ジプソフィーラ様の後ろがルカ君で殿(しんがり)をニンフェアさんが受け持っています。

 時々後ろで物音がするので振り返って見ると、ニンフェアさんが地面に落ちてる魔物素材や魔石を拾っていました。魔物がいたことも倒したことも気づきませんでした。


 休憩の後、階段を下りて現在は地下2階にいます。迷宮の町で買っておいた地図を広げてみてみますが、すでに迷子です。プルーニャさんは「迷宮」にきたことがあるのか迷うことなく進んでいきます。


「ニンフェア、そろそろいいんじゃにゃいニャ?」

「そうだね、次の部屋から試してみようか」


 なにやらニンフェアさんたちが作戦でもあるようです。頼もしすぎて安心できます。


「ひーふーみー4匹か、よしアレク倒しておいで」

「え!?」

「がんばれニャ~」

「ええっ!?」


 安心できませんでした。

 部屋に入るとそこには大きな芋虫が4匹いました。


 入り口付近で皆が待機して、自分一人が前に出て剣を構えます。


「大丈夫でしょうか?」

「何事も慣れだよ。いざという時、とっさに動けるようにね」


 心配してくださるジプソフィーラ様をよそに、ニンフェアさんは気楽そうです。


「がんばってアレクさん!」


 ルカ君も応援してくれている。癒し系だ。ルカさんだったらよかったのに・・・大きく息を吸って吐く。よし落ち着いたやってみるか。


「うおおおおお!」


 剣を上段に構え芋虫に突っ込むと「ギャリリリッ!」剣先が天井に当たってしまった。まずいと思ったけど走り出した勢いは止まらず、芋虫はもう目の前に!仕方なくそのまま強引に振り下ろす。


「ふんっ!」


 ザシュッという音がして芋虫は真っ二つに割れた。


「え!?」

「ほら油断しない、次くるよ」


 芋虫が光の粒になって消えると後ろの芋虫が見えた。左右にも1匹づつ、どうする?

 振り下ろした剣先は左に流れているので右側の芋虫に飛びそのまま振り上げる。


 キシャアアアッ!


 芋虫が体を持ち上げて苦しそうな悲鳴を上げているが傷は浅い。踏み込みが甘かったみたいだ。

 立ち上がったせいで芋虫の口元が良く見える。大きな鋏のような顎をしていて、のんきに葉っぱを食べて・・・は、いないようだ。

 芋虫はそのまま倒れこむように襲い掛かってきた。あの鋏で噛みつかれたら腕なんて簡単にちょん切られるだろう。一瞬ブルッと震えがきたがすぐに落ち着き紙一重で鋏をかわす。

 態勢が崩れたが通り抜けざま構わず剣を振りぬく。

 そのまま転がり距離を取って立ち上がる。先ほどより深手を与えているがまだ倒せていない。

 剣を両手で持つと動きが鈍った芋虫の首?の辺りに突き入れた。緑色の体液が噴き出し視界が塞がれるが次の瞬間芋虫が光の粒になって消えた。これで2つ。顔にかかった体液を腕で拭うと、


「アレクさん後ろです!」


 ルカ君の声でブンッと背後に剣を振り回し前転して距離を取る。

 不思議と体が軽い。今までこんなに素早く動けたことはないのにどうしたんだろう。

 振り返り残りの芋虫を見ると口から糸を吐き出した。慌ててよけたけどブーツの先と地面がくっついてしまった。


「くっ!」


 それを見た芋虫が突進してくる。小さな足が無数に生えていて以外に速い!剣を振り下ろすが間に合わず柄で芋虫を殴りつけた。少しダメージを与えたけど突進は止まらずそのまま吹き飛ばされる。ブーツが脱げたおかげかダメージは予想より小さく、地面を数回転がってすぐに起き上がる。勢いが止まらず突き進んでくる芋虫を、剣を水平に構えて受け止める。

 芋虫は剣を嚙みくだこうとしているのか、ギシギシと剣の軋む音が聞こえる。

 少しづつ押され始め、目の前に芋虫の顔が迫ってきた。その時


「「頑張ってアレク!」さん!」


 ジプソフィーラ様とルカ君の声援が聞こえ力が沸いてくる。


「うらああああっ!」


 芋虫の顔面に頭突きをお見舞いすると鋏がわずかに緩んだ。その隙を見逃さず滑らすように剣を引き抜いて顎を切り落とす。そしてトドメとばかりに無くなった芋虫の顎の下から脳天にむけて剣を突き入れる。


「ぜぇっ!ぜぇっ!・・・」


 3つ!すると急に体の痛みが消えて力がみなぎってくる感じがした。”レベル”が上がると怪我が癒えると聞いていたけど、今までダメージもなく”レベル”が上がっていたので体感したのは初めてだ。

 いける!俺は剣を振って芋虫の体液を吹き飛ばすと、最後の芋虫に向かって駆けた。





 芋虫たちを倒し地面に大の字で転がっていると、ジプソフィーラ様とルカ君が駆け寄ってきた。まさか最後の芋虫にあんなに苦戦するとは・・・


「アレク怪我はない?すごかったですわ」

「アレクさん大丈夫ですか?痛いところは?」


 ジプソフィーラ様とルカ君に心配され疲れも痛みも吹っ飛びました!


「上がったね」

「上がったニャ。”レベル”5かにゃ?」

「そうだね、地下1階で2つ上がってここに着くまでで1つ、今ので5だね」

「”スキル”も得てそうだにゃ」

「おそらく身体強化系だろうね。耐久力があがってるみたいだし。まだまだ危なっかしいけどね」

「これにゃらソフィー様の盾としては合格かニャ」


 ニンフェアさんとプルーニャさんの言葉は聞こえませんでした。

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