111話:眷属召喚
「ここのボスは・・・マスターの妹様の・・・アサガオ様です・・・」
え!?マスターさんの妹さん・・・わたしのもう一人のご先祖様!?
「どーゆーことにゃのニャ!?」
「マスターさんの妹さんって1000年前に亡くなったんじゃ?・・・」
そうですよね。オルテンシア様も確かそうおっしゃっていたはず・・・
「アサガオ様がまだ12歳の時にわたしとマスターは転移してきました。てっきりお亡くなりになったとばかり・・・」
なるほど、確かに人間の寿命を考えれば生きているはずがありません・・・ニンゲンであれば・・・
「自らを遺伝子改造して、キメラとして生きながらえたのですねアサガオ様は・・・」
わたしのご先祖様で元人間のアサガオ様・・・お話が通じるのでしょうか?
知能のない魔物になっているのであれば討伐するしかないですが、もし知性を残されていれば・・・
「どうしたらいいのでしょうか・・・」
転移室から未だ出ることが出来ず悩み続けます。わたしにアサガオ様を・・・殺す・・・ことが出来るのでしょうか?・・・
「ミストレス・・・」
「ソフィー様・・・」
「ソフィー・・・」
大きく息を吸い込んで、呼吸を止め、吐き出します。
「悩んでもしょうがありません!当たって砕けろです!」
「それもどうかと思うけどね・・・」
ニンフェアうるさいです。
「話してみるまで何も分かりません。戦うのは最後の手段にします!」
「「「はい!」」ニャ!」
わたしは扉に向かって一歩進み、淡く光っている床を踏みます。
カシュッ
空気が抜けるような音がして扉がゆっくりと左右に開きます。
薄暗い部屋の中央にポツンと座り込む人影が見えます。
「アサガオ様?・・・」
ピクッ
黒いシルエットがこちらを見た気がします。
ゆっくりと一歩一歩アサガオ様に近づくとようやく姿かたちが分かりました。
黒いロングヘアーに黒いヘッドドレス、黒いゴシックドレスを着た小さな女の子です。縁取りのレース部分だけ白いのでなんとか輪郭が分かりますがまっくろくろ子さんですね。背中からは小さな蝙蝠のような羽が生え、細い尻尾が見えます。
片足を曲げて座り込んでいるアサガオ様は曲げた足に両手を絡ませ膝に顔を載せ、けだるそうにわたしを見ています。
いえ、見ているのは・・・オルテンシア様ですね。
20歩ほどまで近づくとスカートの端を摘みカーテシーをします。
「お初にお目にかかりますアサガオ様。わたしはナターレ子爵の娘、ジプソフィーラ・ディ・ナターレと申します。第52代の管理者権限保有者でもあります」
ピクッ
管理者権限の件でアサガオ様が反応されました。
しかし目線はずっとオルテンシア様に向いています。
「アサガオ様、ご無沙汰しております・・・」
オルテンシア様が頭を下げるとアサガオ様がようやく顔をあげました。
「オルテンシア・・・おめおめと、まだ生きていたのですね」
アサガオ様の声には怒気が含まれています。やはり戦闘になりそうです。頭の中で付与の順番を再確認します。
「お兄様の護衛でありながら、苦しんでいるお兄様を放って置いて今頃現れるなんて・・・」
「!?マスターは!マスターはご無事なのですかっ!!」
「無事なもんですかっ!!」
ブワッ!!
まるで爆発のような風がアサガオ様を中心に吹き荒れ、吹き飛ばされそうになります。
「隣の転移室で苦しむお兄様を3ヶ月、ただ見守るしかなかったわたしの苦しみが分かりますかっ!!?」
アサガオ様が立ち上がってゆっくりオルテンシア様に歩み寄ります。吹き荒れていた風がおさまっていきます。
「レベルを削り眷属召喚し、作り出した眷属を扉の隙間から少しづつ送り込み、ライフサティスファイで生命維持し、再会するまでに3ヶ月も費やしたのですよ!!」
アサガオ様が拳を振りかぶりオルテンシア様目掛けて振り下ろします。
「オルテンシア様!!」
ポスンポスン
アサガオ様の拳が二度、三度とオルテンシア様の胸を叩きます。軽い音を立てて・・・
「申し訳ありません・・・」
オルテンシア様が膝をつきアサガオ様を抱きしめます。
「あんたにお兄様の何がわかるのよっ!!お兄様はずっとあんたの名前だけを繰り返してっ!・・・」
「アサガオ様・・・」
アサガオ様はオルテンシア様に抱きしめられながら号泣しています。
わたしたちはどうしたらいいのか分からず、ただオロオロするばかり。
「悔しいけど、今のお兄様にはあなたしかいないのよ・・・わたしはこの部屋から出ることは出来ない。お兄様の側にいることが出来ない・・・何もかもを忘れてしまったお兄様はあなたを待っているのよ!」
もしかしたらと思ってはいましたが、やはりマスターさんも記憶が消えているのですね。
首を切られただけのわたしでも数時間の記憶が消えました。灰になってしまったマスターさんは何も覚えていないのでしょうか・・・
「ミストレス、急いでマスターの元へ向かいたいと思います」
「分かりました。地上に向かえばよろしいのですね!」
号泣していたアサガオ様の泣き声がピタリと止みました。
「ミストレス・・・ですって!?」
アサガオ様から再び風が吹き荒れ、側にいたわたしは吹き飛ばされて地面を転がりました。
「ミストレス!」
「「ソフィー!」様!」
地鳴りのようなものが聞こえアサガオ様の顔が憤怒に彩られました。
「オルテンシア!!お兄様がいながら他にマスターを持ったのですかっ!!」
「アサガオ様・・・はい。現在のマスターはこちらのミストレスです」
「痴れ者があああああああっ!!死んでお兄様に詫びなさいっ!!」
アサガオ様の背後から3人(?)のアサガオ様によく似た白ゴスの子が飛び出してきました!肌の色以外髪も服も白黒が真逆です。一見するとかわいいのですが巨大な鎌を振り回してきます!!
「仕方ありません!【範囲拡大2】!【付与魔術:俊敏1】!」
全員に【俊敏】を掛けて距離を取ります。プルーニャがわたしを抱え一気に10mほど後ろに飛びのくと、ニンフェアが足止めをします。
「【雷撃2】!」
「「「ギイイイイイッ!!」」」
今です!
「【付与魔術:加速1】!【付与魔術:吸収1】!【付与魔術:力1】!【付与魔術:体力1】!」




