高校生、大阪へ着く
一話二話大幅改変したので、既に読んだ方も一話二話をもう一度読んで頂けると幸いです......
さて、高等学校というものは度し難いもので。
終業式が終わり、午前で他の生徒が帰る中俺は教室に残っていた。
目の前には1人の女子生徒、名前は......なんだったか、ちょっとよく覚えていない。
何故他の生徒が帰る中2人教室に拘束されているのかといえば、愛すべき我らが教師が「クラス委員は残っておいてー」と言ったまま消えたからである。
用事があるのか、ないのか。あるなら何故教室にもこずに職員室にもいないのか。
おかげでさっきからかれこれ一時間ほど気まずい空気が漂っている。
というか今日晩から大阪に行かなければいけない俺にとって荷物整理だとか準備の時間が刻一刻と削れていることが一番不味い。
「ぅあ、あの......」
「ん?なに?」
声が思いっきり上擦った。急に話しかけられてびっくりしちゃったからね、仕方ないね。決してクラスメイトと話すのに慣れてなかったとかそういうんじゃない。
「えっと......雲海君、ですよね......たしか」
クラスメイト、それも1ヶ月間共にクラス委員をした人から「確か〇〇君」、と呼ばれたことに対してメンタルに大きく傷が入ったが、その程度ならまだ顔に出さずに耐え切れる。
「うん。どうしたの?枢さん」
俺は俺に勝利した。この一瞬の間に相手の名前を思い出すことに成功していた。苗字は出てくる気がしない。
「ぇえ......!?ぁ、えといきなり名前、ですか......」
訂正、俺は俺に敗北していた。確かに名前すら覚えていない相手にいきなり下の名前で呼ばれるのは恐怖ですらある。
......あれ?でもさっき俺のこと雲海って
「あの、先生、来ませんね」
「あ、あぁそうだね。もう帰ってもいいんじゃないかな」
会話が始まってから急速に気まずいメーターが上昇している。多分八割型名前呼びのせいなのだが。
「もうちょっと、もうちょっとだけ残った方がいいんじゃないかなーなんて」
「でも俺も用事あるしな......うーん、申し訳ないんだけどこれ以上は時間がまずいかも」
「あはは、ですよね......みんな用事ありますよね......」
プレミその二、地雷を踏んだ。
多分この......思い出した、雨宮さんは俺と同類である。
夏休みに友人と遊ぶ約束もしておらず、予定が真っ白なのだろう。
俺も任務が入らなければそのはずであった。
「あ......えと、なんかごめんね。流石に一時間経っても来ないのは先生が忘れてると思うから。それじゃ」
「あ、さよなら、です......」
悲しげで虚無な表情を浮かべ目からハイライトを消した彼女を置いて気まずさが充満しきった教室から無事離脱する。
この後多分じきに彼女も帰るだろうが、正直一時間も放置されたらぶっちしていいと思われる。
なにはともあれ無事(一時間半遅れで)学校から離脱することにも成功したため、帰路を辿る。
さらにここから家まで徒歩で一時間、現在時刻が14:30であることを考えて到着が15:30。
お風呂、食事、着替えなど済ませて約16:30。
新幹線の出発が18:00で、新幹線へ真っ当な手段で行くには約一時間かかる。
つまり、大阪への用意にかけられる時間は30分である!
日曜日に事前に用意していなかった計画性のなさが悔やまれる......が、幸いなことに向こうで洗濯系統は出来るらしいため服は数着でいい。任務用の服、私服1、私服2だ。
そして生活必需品、必要装備、これらさえ有れば1ヶ月程まともに暮らせるはず。
さて、そこまで決めたら後は話が早い。
後はそれらを30分で済ませるだけである!
ガタン、ガタンと新幹線に揺られる。
そこには死にかけの俺がいた。
準備、支度は真っ当に終わり、予定通り家を出たはずなのだが。
普段電車に乗らないが為に来ると思い込んでいた便は休日ダイヤルという休日にしか来ない便であった。
よってそのままだと間に合わないことが確定し、必死に人目のつかない場所を探し出して自らの足でここまで来たのである。
「えと、大丈夫ですか......?」
話しかけてくるのは本当に偶然に隣の席になった速水。
箱庭における後輩で、小柄な体と薄茶色の髪で、中性的な見た目をしている男である。
後輩と言っても相手は24歳、俺の8つ上だというのだから敬語を使うべきかどうかよく分からない。
歳上ですしやめて下さいと言っているがやめない頑固さも持ち合わせている。
ちなみに本名は知らない。
「あぁ、大丈夫です。ちょっとぐでっとなりたかっただけなんで......」
「いつも平然な顔してる空さんが青ざめてたので何事かと」
「いやぁ、久しぶりの大規模な仕事ですからね。ちょっと緊張してたのかもしれません」
これは本当だ。過去一の規模の際の大災害が起きないとも限らない上に、今回の任務で戦闘が避けて通れないことは百も承知である。
そこに他団体もやってくるのだから手に負えない、そしてチームメンバーに扱いづらいのと戦闘狂がいるときた。
正直胃痛案件である。
「えへへ、実は僕も緊張してます。けど、足を引っ張らない為に頑張りますので!」
「足を引っ張るだなんてそんな......むしろ俺の方が気をつけますよ」
そんなふうに会話をしながらうとうととし始める。
向こうもそれを察したのか、自分の席で何やらスマホゲームか何かを始めたようだ。
そして意識をゆっくりと揺られゆく新幹線に手放した......
目が覚めた時には、そこは大阪であった。
補足:異常空間は時間経過で消えます
その際異常物体が内部に残っていた場合地上に出現します




