『リード・エンド・リーディング』
『リード・エンド・リーディング』
㈠
「トリアエズ※の群れは、どこから検証地へやってきたのか」
静寂、後、男が地上に星を見るようにしゃべりだす。
「おお、神よ、罰を与え給え、謙遜、いや、地上には何もなかった、芸術はあの世だ」
もう一度、静寂、後、人々が集まってきて、トリアエズの様に、聞き耳を立てる。
「お前は、地上を軽蔑した、そして、あの世にしか世界の地上が存在しないと、断定した」
祖国※のことを思ってか、人々は逆に、散っていく。
「敵を作り過ぎたのだ、そして、尊敬は軽蔑へと変わり、復讐に変化する」
㈡
まだ知らない土地のことを、思い浮かべている。
「ただでさえ、拒絶反応が全くない世界に、落ちて来たのが、幸福の証か」
何が言いたいんだ、という風貌で、直視した視線は、自分のほうに向かってくる。
「沢山、楽しんできただろう、もう、お前に取り残されたのは、死、あるのみだ」
大きな声で叫んだ後、書物※をもって、此方に遣って来る。
「これを読んで、知識を蓄えろ、お前には、無知が多すぎる」
書物を渡された男は、くるりと振り返って、狂ったように、書物を破り去った。
「お前の言うことは、聞かないことにした、自分の人生は、自分で決定するさ」
㈢
太陽と月が、入れ替わりに、昼夜を創造していることの、不可思議を思う。
「称えよう、暗黒の漆黒の昼夜逆転よ」
今度は、太陽と月が、入れ替わり、月と太陽の順番になる、人々が駆けていく。
「脳内の言葉を、すべて言葉にするほど、自分は狂ってはいない、しかし、この思想は、狂っている」
自分で、その狂った思想書※を、周囲も気にせず、執筆し出す。
「己の墓地は、思想書あるのみ、芸術あるのみ、文学あるのみ、音楽あるのみ」
周囲が去って、一人になって、ふと天を見上げたら、降雨があった。
「人間と、芸術と、どっちが大切などと言う思想は聞き飽きた、どちらも不要で、どちらも必要だ」
やはり、周囲には人は居らず、一人で、意識が消失して、主人公は、倒れて、死の淵※に居る。
※トリアエズ・・・この物語の主人公、舞台の上で、狂人めいた動きを取っている。
※祖国・・・ここでの、祖国は、トリアエズが元いた天国。天国で悪行をし、地球に落とされた。
※書物・・・聖書の様で、聖書ではないもの。聖書らしいことを書いてあるが、何処かの誰かが無造作に書き散らした、偽聖書。
※思想書・・・トリアエズの人生から得た、自己の歴史から還元された、思想の断片。
※死の淵・・・現世での死のこと。やがて、トリアエズは、元いた天国に帰ることになる。