第六話
カミラ、ローズマリーという二人の女冒険者とパーティを組むことにしたルーシャは、二人に連れられ、彼女らの愛用している宿へと向かった。
マーリンから幾ばくかのお金──遺産というほどの額ではないが、当面の生活費にすぐには困らない程度──を受け取っていたルーシャは、カミラたちと一緒の三人部屋を取って、彼女らについていった。
部屋に着いたら、まず軽く風呂を浴びてから、三人で今後の作戦会議を始める。
三人とも湯上りのホカホカ状態で、円陣を組むようにして話をするのだが。
ルーシャは二人の大人の女性の色気たっぷりの姿を見て、ぽーっとした様子で、綺麗だなぁと思いながら話を聞いていた。
「で、とりあえずこれが、あたしのステータスな」
ランニングシャツに半ズボン、首にバスタオルを引っかけたという姿のカミラが、自分の冒険者カードをルーシャに見せてくる。
ルーシャはカードを受け取って、そこに書かれている数字を見た。
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名前:カミラ
クラス:ウォーリア
レベル :16
パワー :296
スピード:211
タフネス:250
フォース:161
冒険者ランク:D
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ルーシャはそれを見て、少し疑問に思ったことを口に出す。
「あの、ファイターとウォーリアって、何か違うんですか? さっきの悪い人──コンラッドさんでしたっけ、あの人はファイターだったと思うんですけど」
「ああ、ファイターは剣士で、あたしみたいなウォーリアは斧を使う。向こうさんはスピードを含めたバランス重視の戦闘スタイルで、あたしらはスピードよりもパワー自慢だな。ま、どっちも前衛のアタッカーって意味じゃ、大差はないね」
「でもスピードも、さっきの悪い人よりカミラさんのほうが上です。レベルもカミラさんのほうが低いのに、全体的にステータスがかなり高いです」
「へぇっ、よく見てんなぁ、えらいえらい。──ま、レアリティホルダーって言っても結構個人差があるみたいなんだよな。あたしやローズマリーはなかなか優秀なほうみたいだね」
カミラはそう言ってルーシャの頭をなでながら、にひひっと笑う。
ルーシャは、カミラたちもひょっとするとレアリティ保持数が多い高レアリティなのではないかと思ったが、バートランドから止められていたので、口には出さなかった。
「で、こちらが私のステータスですわ」
今度はネグリジェ姿のローズマリーが、ルーシャに冒険者カードを渡してくる。
ルーシャはそれも受け取って、カミラのものと見比べてみた。
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名前:ローズマリー
クラス:プリースト
レベル :15
パワー :201
スピード:230
タフネス:202
フォース:277
冒険者ランク:D
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「……確かに、ローズマリーさんもステータスが高いです。──この『フォース』っていうのが、魔法の力の強さですか?」
「ご明察、ですわ。可愛らしいだけでなく聡明ですのね」
ローズマリーがルーシャに微笑みかけてくる。
ルーシャは顔を赤くして恥ずかしそうにした。
それを見たカミラが、からからと笑う。
「そりゃあなぁ。だってローズマリー、ルーシャの育ての親って誰だと思う?」
「誰だと思う、と言われても。そう言うからには、有名人ですの?」
「おう。有名人も有名人だ。ルーシャ、お前のおじいさんが誰だか教えてやれよ」
「えっと……おじいさんの名前はマーリンです。大賢者、らしいです」
「は……? だ、大賢者マーリン!? 伝説級の大魔法使いの名前ですわよ!? 冗談でしょう!? ていうかこのあたりに住んでいますの!?」
ローズマリーがひっくり返らんばかりの勢いで驚く。
カミラが「その反応が見たかった!」と言ってけらけらと笑った。
なおカミラ自身は、この流れを冒険者ギルドに帰る前の夜道で済ませていた。
やがてそんな騒がしさもひと段落し、ルーシャの身の上もレアリティ数の話以外はひと通り話し終えたところで、カミラが話をまとめに入る。
「よし。じゃあ、ルーシャの冒険者カードはまだできてないから、その実力を見るためにも、明日はちょっと簡単めのクエストを受けて様子見といこうぜ」
「賛成ですわ。ルーシャもそれでいいかしら?」
ルーシャは、ローズマリーのその問いに、こくんとうなずいた。
その後、ルーシャはカミラやローズマリーと他愛のない話をいくらかしたあと、眠くなった頃にベッドに入る。
そして明日の冒険にワクワクしながら、ルーシャは眠りについたのだった。