イベント①:「正義執行!ジャスティス・パープル!」
【導入フェイズ/イベント①:「正義執行!ジャスティス・パープル!」】
ジャスティス・レンジャー!!
栄光あるその名を知らぬ者は、この世界には存在しないだろう。
原初の魔獣「ザ・スローター」の召喚を端に発した大戦、セカンド・カラミティ。ヒーローの大半が命を落とした、その激戦を生き抜いた彼らは、真の英雄として世界中から賞賛を集めた!
しかし、それぞれが負った傷も大きく、彼らは人気が絶頂のまま解散。その名声は永遠のものとなった。
彼らがその後、どんな生活を送っているか知るものはいない。あるいは、隣に元メンバーが住んでいたとしても気づいていないだけかもしれない。あのジャスティス・レンジャーが、こんな平凡な生活を送っているわけがないと。
ましてや、それが健康的で文化的な最低限度“以下”の生活であったなら――
パープル:「はぁぁぁぁぁぁ」
パープル:大きくため息をついて、椅子の背もたれを大きく軋ませる。
パープル:机の上には、請求書の山。
パープル:「参ったねぇ、こりゃ……」
パープル:あの頃は良かった。
パープル:常々、そう思う。
パープル:倒すべき敵が居て、背を預けるに足る仲間が居て、金にも苦労していなくて、
パープル:それが、今じゃどうだ?
パープル:倒すべき敵は請求書。妻子とは別居……を通り越して離婚と親権の喪失。
パープル:給料日直前にATMに並ぶ理由が分からなかった俺は、今では……。
パープル:「はぁ……。こんなときは、あれだな」
パープル:立ち上がり、公園に向かう。
GM:あなたは、知っていた。
GM:この時間に公園にいけば、一人で遊んでいる子どもがいることを。
アリス:ところで
アリス:パープルさんは平常時もパープルさんなんですか?(名前
パープル:名前は、柴田でもいいかもな。
アリス:専業ヒーローが…お金に苦労してない…だって…。
トランプ:正義の組織がお金持ちだったのだろう
アリス:さすが戦隊モノ。
アリス:パープルさん、このままだと仲間たち(ホームレス)からパープルさんとか呼ばれちゃうよ。(あだ名的なアレで
柴田:家賃は払ってないけど、多分家はある。
アリス:柴田さんに戻った。
柴田:こう、"偶然娘にであった"と言い張るために、近所の家を借りているんだ。家賃は滞納し続けてるけど。
柴田:名乗れないまでも、実子の成長を見守るのが、俺の少ない楽しみだ。
裕衣:「……」 かきかき。
柴田:ぐるりと公園を見渡す。居た。
GM:砂場でお絵かきしています。
柴田:「よう、何書いてんだ?」側に座って、絵を覗き込もう
ポリッシュ:事案が発生。
裕衣:「……っ!」 覗き込まれる前にばばばっと砂をかきまぜて消してしまいます。
柴田:「あらら、もったいねぇ」
裕衣:「もう!おじさんのえっち!」
衝撃走る――。
柴田:「えっち!?」 視線が集まりそうでヤバイ
ポリッシュ:この公園に他に人が居なくて良かったね。こんなの聞いたら絶対通報されてるよ。
柴田:それな。
ポリッシュ:もしもしポリスメン?
柴田:するな!
裕衣:「ひとがお絵かきしてるときは見ちゃいけません!」
柴田:「ちょっとぐらい(絵を)見せてくれたっていいじゃねえかよぉー」
裕衣:「だめー!お金とるよー!おじさん払えるの?」
柴田:「…………」
柴田:「無理☆」歯をキラーン
裕衣:「もう、おじさんかいしょーないんだからぁ」
裕衣:なんて、キャッキャッとはしゃぎながらも絵は念入りに消す。かろうじて、人の顔かな?という名残りはわかる。
柴田:いろいろ考えてしまうなぁ、こう、一人で遊んでいる理由とか。
柴田:「悪かった悪かった、今度、見せてもいい絵ができたら教えてくれよ」
柴田:ぐしぐしと裕衣の頭を撫でよう。
GM:知っていてもいい情報ですけど、「ヒーローは嫌い」といっているから、同年代の子どもたちと話が合わないんですね。
柴田:あー、確かに、子供ってヒーロー好きだもんな。
GM:でもってシングルマザーだから、どうしてもひとりの時間が増えてしまうと。
柴田:突っ込んで聞いておくか。
裕衣:頭を撫でられると気持ちよさそうに目を細めます。
柴田:……と、思ったがやめとくか。
GM:それもまた、君の選択だ…。
柴田:「ボール投げでもするか?」と、不器用な気遣いを見せよう。
裕衣:「うん!」
俺は現実から目を反らし続けている。
問題があるのは分かっている。解決しなければならないのも、理解している。
だが、行動に移さなかった。そのツケが、いつか降り掛かってるのは、分かっているのに。
裕衣:ボールを投げ合って遊んでいるうちに、裕衣は幼稚園のことをいろいろ話してくれます。寂しい思いをしている、とかは伏せて。
裕衣:「今度、遠足でバスに乗るんだよ。おじさん、バスに乗ったことある?」
柴田:「あるある。でっけえ2階建てのバスに乗ったことだってあるんだぜ?」
裕衣:「お金ないのに? 屋根の上?」
柴田:「流石にバスぐらいのれらぁ!」が、今の立場だと屋根の上乗ってそうだから困る。
裕衣:君が大きな声を出すと、「きゃー!」と笑いながらボールを高く投げる。
裕衣:「……さっき描いてた絵はね、その遠足のための練習」
裕衣:「上手に描けたら、見せてあげるね。タダで!」
柴田:「いよっと!」 高々と跳躍してボールをキャッチ。
柴田:「ははっ!期待してる……ぜ!」
裕衣:「とれないと思ってた」そう言って恥ずかしそうに笑うと、時間だからといって帰っていきます。
柴田:「……」 独りになると、現実に押しつぶされそうになる。
柴田:「仕事、探すか……」
柴田:が、当然昨日まで見つからなかった仕事が今日見つかるはずもなく――と、肩を落として請求書まみれの家にたどり着く感じじゃろうか。ドヤ街に行くぐらいしか手がねぇ。
GM:哀しい。
――これが、かつてのジャスティス・レンジャーの一員。ジャスティス・パープルの今。正体を明かしていなかったため、「あの人は今!?」という名目でメディアに追い回されることはない。だがそれを差し引いても、父親だと名乗り出ることができるような立派な生活ではないことは間違いない。
柴田:哀しいぜ……どうしてこうなっちまったんだ……。
そんなどうしようもない日々の繰り返しの中のある一日、君は肝を潰すニュースを耳にすることになるのだ。
――〇〇幼稚園のバスが、ジャックされたとの速報が入りました――