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東の国から  作者: あい
ローウェン
1/1

旅立ち

小説を書いて見たかっただけなんです。

「…今までありがとうございました」


幸徳(ゆきのり)頑張れよ。無理だけはするな」


「ありがとうございます。あの、これを…」


「ああ。しっかりと渡しておくよ」


「ありがとうございます」


 ーーー


  私が乗った船が出航した。次ここに戻ってこれるのはいつだろうか。着いたら手紙を書かなくては。そういえば美冬が、ローウェンのお土産が欲しいと言っていた。あの子は寂しがりやだから、何かかわいい物を買ってあげよう。ぬいぐるみはあるのだろうか。喜んでくれると嬉しいのだが。


「そこの少年。隣、よろしいかな?」


「はい。どうぞ」


  自分の鞄が座る場所を占領していたので急いで足元に置いて、老人に座るように促した。

  灰色の山高帽に、灰色のロングコート、汚れ一つもない綺麗に手入れされた黒い革靴、柄一つもないシンプルな灰色のネクタイ。きっと何処かのお偉いさんだろう。


「君は若く見えるけど年齢はいくつくらいなのかな?」


「今月で17歳になります」


「そうか、そうか。若いのに偉いねぇ。君もローウェンに行くんだろう。どうして行こうと思ったんだい?」


「実はーー」


  私は自分が三兄弟の中の末っ子であることを話した。それから長男は軍人、次男は政治家を勤めており、自分も何かを目指すきっかけが欲しくて、この国に行きたかったのだと老人に説明した。


「そうか。君のお兄さん達はとても立派だね。そして君も立派だよ。何かを始めようと、行動に移せているんだから。とても羨ましく感じるよ」


「い、いえ…。私なんか兄達に比べて頭もそんなに良くないし、失敗ばかりで、今回の留学の件だって何回も説得してやっと父親から許しを貰えての留学なのに、正直不安で仕方がなくて…」


「そうかい、それは大変だねぇ…。でも、君は少し勘違いをしているよ。頭が良いとか、特に優れてるとかなんて、そんなので君はお兄さん達と比べる必要は無いと僕は思う。ありのままの君が君らしく君の目指す道を作るんだ。きっとそれでいい。だから、沢山失敗をして沢山学んで沢山の人々や情景に触れ合って、気付いたら君は何かになれているのかも知れない。いや、失敬。話が長くなったね。」


「い、いえ…。物凄く良い話を聞かせて頂きました。少し気持ちが楽になった気がします。御老人。お名前をお聞きしても良いですか」


「ヤマウチ。山内実孝(やまうちさねたか)。君の名前は?」


「長津幸徳です。本当に、良い話をありがとうございました」


「いやいや、老人の長話に付き合わせて悪いねぇ。ああ。そうだ。そろそろ昼食の時間だ。では、ここで失礼するよ。待ち合わせの約束をした友人がきっと待っている。何処かで会えると良いねナガツ君」


  そう言うと、老人はゆっくりと立ち上がりエレベーターへと向かっていった。

  少し暇になったので綺麗な海でも見に屋上のテラスに向かうとしよう。


「うわぁ。とても綺麗…」


  そこには美しいラピスの輝きがこの世界一面を覆っているような海が広がっていた。あまりにも壮大で広すぎるから、この海と比べて、なんて人間はちっぽけなんだろうと、ひょっとして生きている意味なんてないのではないかと考えてしまった。ーーブワッ…!?


「あっ」


  少し湿った強い風が海全体になびいた。そのせいか、潮風の匂いが鼻に付く。商店街の魚市場のような、生臭い匂い。この匂いが、私は少し苦手だ。(ちなみに海産物は食べられる)

  とても綺麗なものが見れて満足できたので、図書室で休憩を取ることにした。

  ローウェン到着まで残り4日と5時間。

  そこでは一体、どんな出来事が私を待ち受けているというのだろうか。

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