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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
第1章 学院と女子寮での生活編
7/59

6踏み 女子寮に侵入

「それで、どうして僕の部屋が女子寮なの? 男子寮がいっぱいとか?」


 学院側も許可したみたいだし、何かしら理由があるのかと考えた。そうじゃないと、こんなことあり得る訳がない。


「男子寮は、女子寮より空いている筈よ」

「じゃあ、なんで!?」

「だから、言ったでしょ? 私が学院に頼んだって」

「エルちゃん……ちゃんと……言わなきゃ……」


 フローラの話によると、僕が気を失った後に、エルが常に踏む練習がしたいので、女子寮に僕が何時でも入れるようにと、ウッド先生に頼んだらしい。だけど、それは「入寮者以外立ち入り禁止」に当たるので無理だと断られたって事だった。


 流石、ウッド先生。


 それなら、僕を入寮させれば問題ないのではとエルが聞いたら、ウッド先生から許可が降りたとの事だった。


 イミガワカラナイよ、ウッド先生……


 

◇◇◇



 ぐ~~。突然どこからかお腹が鳴る音が聞こえた。


「そろそろ、晩御飯ね。食堂に行きましょう」


 エルが僕の腕を引っ張り立たせると、部屋から出ようとする。フローラも、平然と後をついてくる。


 僕のお腹の鳴る音じゃないのだけれど……どっちだ? と、二人の顔を見るが、目が追及するなと言っている。追及するのは止めておこう……


 二階のエルの部屋から階段を降り、一階の食堂に連れて来られた僕を見て、既に来ていた先輩女子や他のクラスの女子が騒がしくなる。

当然だ。女子寮に僕が居ること自体おかしいのに、中には僕の事を知っている人も居るだろう。


 案の定、僕達の前に先輩と思われる女の子がやって来た。


「ど、どうして女子寮に男を連れて来ているんですか? 規則違反ですよ」

「先生や、学院には許可を取りました。何故、規則違反になるのかしら?」

「な!? 許可が出たのですか!?」


 先輩が驚くのも無理はない。僕も聞いて驚いてる。ウッド先生の許可が出たのは知っていたが、まさか学院までとは。というか、学院ナニしてくれてるの? もしかして、僕学院ぐるみでイジメられているのか?


 エルは先輩の女子を一瞥した後、僕を引っ張ってセリカやサラの隣に連れていく。そして、その場で机を叩きこちらに注意を促すと高らかに説明を始めた。


「皆さん、聞いてください。タイヤーの入寮は私を含め先生達、学院も許可して頂きました。入寮が決まった以上、規則の入寮者以外立ち入り禁止は無効になります。ここまでは、いいですか?」


 誰も文句1つ言わないで、聞いている。いいのか、これで? 僕はチラッとサラ達を見るといつも通りの顔をしている。

 つまり、これがエルにとっては通常運転なんだろう。


「タイヤーをこの寮に入れた理由は、この中には知っている方もチラホラ見受けられますが、彼の固有スキルです」


 僕のスキルの話が出たとき、ひそひそと話す女達もいる。しかし、エルは再び机を叩き黙らせる。


「私は、彼がこの剣術学院の切り札になると思っています」


 切り札? 何の事を言っているのかわからずにいると、フローラが僕の手を繋いできた。


「それは、皆さんもご存知のように来月から毎月行われる魔法学院との月別対抗戦です。私達のいる剣術学院は、ここ最近勝てていません。理由は簡単で固有スキルの所持者が、ほとんど魔法学院に行くからです」


 そう言えば、そんなものがあると聞いたことがある。


 毎月、剣術と魔法の学院で争われる月別対抗戦。


 詳しくは知らなかったが1対1、2対2、3対3、5対5、10対10の計21人で行われ、勝った分だけポイントが入る。例えば10対10だと勝った方に10ポイントが入る事になる。

 つまり、剣術学院が勝つには最低11ポイント必要だと、隣にいたセリカが教えてくれた。


 昔は、剣術学院の方が強かったらしいが今は圧倒的に負けている。去年は1年通して0ポイントだったらしい。エルはそれに僕を出すつもりのようだった。


「ま、待って! 詳しく話して」


 先ほどの先輩が大きく目を見開き体を乗り出す。エルは、さっきまでの僕のスキルの様子を話した。


「う、嘘でしょ? エル寮長の攻撃が当たらなかったですって?」


 先輩は、よろよろと椅子に座る。それにしても、エルは下級生なのに寮長なのか。みんな苦労するね。


「ですので、タイヤーには、まずフローラとの練習を中心に他の人も発動出来ないか踏まれて貰います」


 食堂の女子全員が僕を注視する。反論を考えているのかいくつかのグループで話をしている。

 話をまとめたのか、僕たちの前に並ぶと直立する。


「「「「わかりました」」」」


 直立したまま頭をさげる女子達を見て、僕は唖然とした。


「何で、受け入れてるの?」


◇◇◇


 御飯を食べ終えた僕は、新しい自分の部屋で立ち尽くしていた。


 新しく男子寮から持ってこられたベッドに小さなテーブルと椅子。他には何もない。そんな部屋にベッドに腰をかけるフローラがいる。


「えーと、何か用かな? フローラ」

「エルちゃんのこと……嫌わないで……欲しくて」

「え!? 別に嫌いじゃないけど?」


 僕の答えを聞いたフローラが、ホッと胸を撫で下ろす。彼女とエルは、本当に仲が良いのが今の嬉しそうな表情でよくわかる。


「フローラ。エルはどうして僕を女子寮に入れてまで、月別対抗戦に勝ちたいのかなぁ?」


 フローラは、少し深刻な表情を見せるがすぐに戻り話をしてくれた。


「エルちゃん……魔法学院に……入れなくて……落ち込んでいたの。でも……今は剣術学院が好き。だからこそ……みんなに……勝たしてあげたくて。わたしも……」

「もしかして、フローラはエルの為に剣術学院に来たの?」


 フローラは、コクリと頷く。そして、僕の手を両手で取りその大きな胸に当てて、顔を近づけてくる。

 僕の目の前には、潤んだコバルトブルーの瞳、髪からは仄かに香る甘い匂い、薄桃色の小さな唇から漏れる吐息が顔に触れる。

 僕は自分の顔が赤くなっているのがわかるくらい、心臓の鼓動が速くなっていた。


「だからお願い……タイヤーくんも……協力して。その為なら……わたし!……わたし!!…………」





「いくらでも踏んであげるから!!!」

「いや! 好きで踏んでもらってる訳じゃないから!!」


◇◇◇


 一先ず、僕は協力する事を約束し、部屋からフローラと出ると、偶然セリカと会った。


「ふーん、タイヤーくん、フローラと2人きりの部屋で踏んで──」

「──もらってないから!」


 セリカは、一言「なんだ、つまらない」と吐き捨て、自室に入って行く。この人は……全く。放課後は遠慮無しに顔を踏んでくるし。

 フローラの方をふと見ると、なんか凄く顔が赤くなっている。


「フローラ、大丈夫? 顔が凄く赤いけど?」

「2人きり……2人きり……!! だ、大丈夫だから……」


 慌てて自分の部屋へと逃げるフローラを、心配しながらも僕は自分の部屋に入った。

7/25改稿

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