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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
第1章 学院と女子寮での生活編
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5踏み スキルの効果と後遺症

 フローラに踏まれ、僕の固有スキル『麦』の発動に成功し、蒼い光に包まれた僕は、少し身体が熱くなるのを覚えた。


 しかし、しばらくすると僕を包んでいた蒼い光が、段々と薄くなっていく。


「はっ! フローラ、もう一回踏みなさい! 早く!」

「え……? た、タイヤーくん……いきます」


 エルの声に応えたフローラが、再び僕を踏むが慌てたのか、先ほどより強く踏みつける。しかし、それがフローラの重みと足の感触がはっきりとわかる。


「ふぐっぅぅぅぅう!!」


 僕のスキルは再び発動し、今度は蒼ではなく黄色い光に包まれて、また身体が熱くなる。

 

「フローラ! もう一度!」

「えい!」


 再びエルの声に応えたフローラが、三度(みたび)僕を踏む。しかし、よほど慌てたのだろう、先ほどと違い今度は優しかった。


 二度目との違和感がある。それは、全く気持ち良──踏まれた感触が弱いのだ。

だからなのか、僕を包む光の色も変わらず身体の熱さも感じない。

ゆっくり立ち上がる僕に、エルが近づいてくる。


「どう? タイヤー?」

「エル。うん、スキルが発動したと思う。だけど、三回目は失敗みたい」

「そう……なの」


 エルは、肩を落として僕から離れていく。どうして、そんなに落ち込むのか。

寂しそうな背中を見ていると、エルは自分の大剣を拾い鞘から抜いた。


「タイヤーーーー!!!」


 突如、エルが振り向き大剣を持ったまま、向かって来て大剣を振り回し、そのまま僕の首を狙って、横薙ぎに襲ってきた。


「う、うわぁぁぁっ! いきなり何──うわあっ!」


 頭を抱えてしゃがみ込んだ僕に対して、エルは大剣の重さを利用して、身体を一回転する。そのまま袈裟切りに移行し振り抜いた。

僕は咄嗟に床に転がって回避する。


 その時、見たよ。口角が上がり八重歯()を見せつけ笑っているエルを。“赤鬼姫”の降臨の瞬間を。そして、エルのお尻を隠すには小さなピンク色の下着を。



「ハアアアアァァァ!!」


 僕が立ったのを見計らって、エルは息を大きく吐き出し、刺突を繰り出してくる。

右に大きく躱したものの、彼女は突きが伸びきる前に強引に腕力で止め、横薙ぎへと移行する。


「何処にそんな力があるんだよ!?」


 細い腕で自身より大きな大剣を振り回す彼女に驚きながらも、咄嗟に両手で大剣を挟みこみ止める。それでも、押し込もうとする彼女に対し僕は足を拡げて踏ん張ってみせる。


「エルちゃん……もう……それくらいで……」


 フローラが止めに入り、ようやくエルも力を抜く。フローラが持ってきた鞘を受け取り剣を納めるのを見て、僕もやっと一息つけた。


「ウッド先生」

「うん。想像以上だったな、エル君。タイヤー君、君はエル君の動きが確実に見えていたな?」

「は、はい」

「どうやら、動体視力まで強化されたみたいだな」


 クラスメイトから感嘆の声がもれる。


「フローラ、タイヤーと仲良くしなさいよ。今の所タイヤーのスキルを発動出来るのは、あなただけなんだからね」

「エルちゃん……頑張ってみる……あと……ごめんね」


 良かった。フローラに嫌われたら、今後剣術学院でも居場所がなくなる所だ。


 でも、フローラの「ごめんね」ってなんの事を言っているのだろう?


 エルが僕を手招きで呼びつけると、フローラの横に並ぶように指示する。エルは僕達の前に立ち、両肩を掴むと


「あなた達は相棒よ。今のところはだけど。色々試したいしね」


 そう叱咤激励した。

 

 その時僕を包んでいた黄色い光が消えて、全身から力が抜けていき、立っていられなくなる。


「え……あ、ちょっと……きゃあ!」


 僕は、そのままフローラにもたれ掛かり、押し倒すように崩れ落ちる。


 ふにゅ!


 僕は、とても柔らかいものに顔を当てる様に倒れて、指一つ動けなくなった。


「ちょ……な、何してるんですか……ど、どいて……早く」

「はぁ……はぁ……ご、ごめん。退きたいのは山々なんだけど、動けなくて……はぁ……はぁ」

「あん……や、やだ……息を……かけないで……」


 僕は、どうにか退こうとしても身体が言うことを聞かない。別に決して退きたくない訳じゃない。

 

 僕の横でドカドカドカと誰かの足音が聞こえると、襟を掴み僕を持ち上げた。


「や、や、やっぱり、あなたと仲良くなんてムリ~~!!」


 バチーーーーン!!


 フローラから本日二度目のビンタを頂き、受け身も取れない僕は、演習場の床に顔からダイブし気を失った。


◇◇◇


 僕は目を覚ますと、白い天井が見え、体の感触から何処かの部屋のベッドに寝かされていると気づいた。


 身体の脱力感は無くなっており、医務室なのかな? と、首を動かすが、綺麗に整理された本棚や高そうなタンス、白い丸テーブルに椅子が二つ。その椅子の上には、薄い水色のパンツ────パンツぅ!?


 僕が慌てて飛び起きるのと同時に部屋の扉が開き、部屋の持ち主が入ってくる。


「タイヤー、目を覚ましたのね。私の部屋に運ぶの大変だったのよ」


 部屋の持ち主はやはりエルで、後ろにはフローラもいる。


「そうかぁ、ありがとう……じゃなくてエルの部屋って事は女子寮って事だよね? 僕、入ってもいいの?」

「普通は、駄目ね」


 僕は、慌てて部屋から出ようとするが足がもつれ倒れそうになり、フローラが腕を掴んで支えてくれた。


「あ、ありがとう。フローラ」

「べ、別に……いいです。あと……エルちゃんが……ごめんなさい」

「まだ、全快じゃないのでしょ。ベッドに座っとけばいいわ」


 フローラの肩を借りてベッドに座ると、フローラとエルも椅子に腰を掛けようとする。しかし、フローラが座る椅子の上には薄い水色のパンツが鎮座しているのに気づく。


「え、エルちゃん……下着……下着!」

「え? あぁ、私とした事が出しっぱなしだったみたいね。後で仕舞っておくわ」

「エルちゃん……今、仕舞って……」


 フローラが僕を見るので、思わず視線を逸らして知らないフリをする。やはり気まずい。


「あのー、僕やっぱりすぐにでも出たほうが……」


 エルが下着を仕舞い、椅子に座ったのを見計らい質問してみる。しかし、エルからの答えは突拍子のないものだった。


「大丈夫よ。ここは、入寮者以外は立ち入り禁止だもの」

「じゃあ、僕は駄目じゃないか!」

「だから、大丈夫よ。タイヤーの部屋、隣だもの」

「イミガワカラナイデス。どうして?」

「私が学院に頼んだからよ」


 僕は、ますます混乱する。僕の部屋が何故女子寮にあるの? なんで学院は、あっさり了解しているの?


「あの……エルちゃんが……ごめんなさい」

「フローラ、もしかして、さっきからのごめんなさいは、僕を女子寮に運んだ事じゃなくて、この事なの?」


 フローラはコクリと頷くと、僕は肩をガックリと落とした。


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