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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
第1章 学院と女子寮での生活編
20/59

19踏み 激闘! 盗賊団!!

「なんだよ……みんなで、よってたかって」


 泣きそうになる。いや、既に半べそかいている。


 僕じゃないよ。ヤラシがだ。


 エルを筆頭にみんなから(サラは除く)言い寄られて、半べそって……最初から言わなきゃいいのに。

 ほら、ウッド先生も口元を手で隠して笑いを堪えているじゃないか。


「ぷぷ……むっつり……」

「えっ!? そっちかい!」


 思わず僕はサラと繋いでいた手を振り払い、平手の甲で先生を軽く叩く。


「先生、先へ行きましょう。時間無いのでしょう?」

「ぷぷ……あ、そうだな。エルくん」


 僕達は、ウッド先生が先行し後ろからはヤラシが半べそで付いてくる。近くの森周辺を見廻っていると、森の影からナイフを持った1人のみすぼらしい格好をした痩せ細った男が出てきた。


「ヒャッハー! ここは、通さねぇぜ!!」


 僕とグレイスは、リックの肩に手を置く。


「え? えっ!?」

「リック、あれが正しい『ヒャッハー』を使うべき人だ」


 如何にもな盗賊っぽい男は、ナイフを舌で舐める。


「ヒャッハー!! 有り金全部置いてきな、でないと可愛いおべべが切り刻まれるぜ!!」


 再び僕とグレイスは、リックの肩に手を乗せる。


「見ろ! リック! あれこそ『ヒャッハー』の達人だ。キミみたいな、イケメンが使う『ヒャッハー』などない!」


 リックは、頭を抱えながら座り込んだ。これで『ヒャッハー』を使わなくなればいいのだけど……



「くっ……オレはまだまだ未熟だ!」


 駄目だ……どうやら、手遅れらしい。


「何、ごちゃごちゃやってやがる! 早く有り金置きやがれ! このローレル・ハインツ・シュナイダー盗賊団が怖くねぇのか!?」


 え! 何、その盗賊団。なんか凄く貴族っぽい名前なんだけど。

 エルが、大剣を構えながら一歩前に出る。


「えぇ……と、ローレル……なんでしたっけ?」

「ちっ! よく聞け! ローレル・ハインス・シュタイナー盗賊団だ! おれ様は、その頭領ゲルグだ!」


 微妙に名前が変わってる!! そして盗賊団の名前にゲルグ要素が全く無い!!


 僕は、辺りを見回すが人の気配が全くなく、仲間は上手く隠れているみたいだ。


「まぁ、まだ、おれ様1人だけどな!」


 違った。

 ゲルグは、胸を張りながら回りに仲間がいない事を自分で話した。

 ウッド先生をチラッと見ると困り果てた顔をしている。


「ウッド先生、どうしますか?」

「うーん、困ったね。特にまだ悪い事をしているようには見えないし……」


 僕の質問にも、やはり困った表情のまま動かない。


「よし。すいません、ゲルグさん! あなたの実績を教えてください」


 思い切って僕は、ゲルグに聞いてみた。周りは、そんな事話すわけないと呆れる。


「ふふん! よく聞けよ、小僧。“万引きゲルグ”とは、おれ様の事だ!!」


 知らない。そして、小者過ぎる。万引きは、犯罪だ。だけどそれ以上に見た目言動から、小者感に溢れている。

 ウッド先生が一歩前に出ると、ゲルグは一歩下がった。


「悪いけど、これで手を打ってくれないか?」


 ウッド先生は懐をゴソゴソ探る。正直僕達は、ウッド先生の言動が理解出来ない。どうしてこんな奴に……


 そして、ウッド先生はゲルグに向かって放り投げる。ゲルグの足元にコロコロと銅貨1枚が転がった。


 銅貨1枚。僕の住んでいた町だと、お酒のエール1杯分。多分、王都だとエールも買えないだろう。

 ゲルグは、サッと銅貨を取り懐へ入れた。


「そうだよ、大人しく有り金出せばいいんだよ」


 ゲルグは下卑た笑みを浮かべている。ウッド先生も僕らも思わず顔を伏せて笑いを堪えていた。

 なんで、9人もいて有り金が銅貨1枚なんだよ。ゲルグもゲルグだが、ウッド先生もウッド先生だ。

 ゲルグは、すぐに立ち去るかと思ったが、まるで品定めするように僕らをジッと見ている。そして、再び下卑た笑みを見せてきた。


「ふーん、ガキばっかりかと思ったが中々上玉じゃねぇか。よし、決めた。お前ちょっと来い!」


 ゲルグは、そう言うとサラに近付いていく。それを見たエル、フローラ、セリカが軽くショックを受けたのを、僕は見逃さなかった。

 大丈夫だよ、3人とも。ゲルグは、ただの少女愛好家だ。

 

 ゲルグがサラの腕を掴もうとする。


 ドゴオッ!!


 サラは持っていた細長い棍で、ゲルグを突き、一撃を与える。それを目の当たりにした僕、リック、グレイス、ウッド先生、そしてヤラシも股間がキュッと締まる感じがした。

 もちろん、音は脳内補完だ。それほどの一撃だった。


 ゲルグは、ピクピクと泡を吹き倒れる。


「先生、この人どうしますか?」

「うーん、万引きしているみたいだし、放って置く訳にもいかないか。エルくん、そこの木にでも縛っておいてくれ」


 僕とグレイスで、木の根元までゲルグを運び、エル達が縄で縛りつける。

 サラが、何やら紙と筆を取り出し、何かを書いて縄で紙の端を挟み張り付ける。

 そこには……




『この者、少女愛好家で万引き犯の変態です。ただいま、放置中。餌を与えないでください』

 

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