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僕は踏まれたい~踏まれるほどに強くなる~  作者: 怪ジーン
第1章 学院と女子寮での生活編
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9踏み 夜這い

「え、エル! そろそろ離れてくれないかな?」


 スキルの発動に成功したエルは、嬉しそうな顔をして、僕に抱きついてきた。

 僕の身体は蒼い光に包まれていて、何か妙な違和感を感じている。

 エルは今ネグリジェとその上からカーディガンを着ている。

 僕自身も、もちろん服を着ている。しかし、僕にくっつくエルの胸の感触が、手に取るように繊細にわかる。

 実際に手に取ってる訳ではない。簡単に言ってしまえば、裸同士でひっついている様な。

 経験が、無いからわからないけど……


 それだけじゃない、周りには誰も居ない屋上なのに、声やら何かの生活音みたいなものまで聞こえる。その時近くで、誰かの呼吸音が聞き取れた。


 僕は、屋上の入り口に視線をやると、サラとセリカ、フローラがこちらを覗いていた。


「うわあぁぁ!!」


 咄嗟にエルを引き離すと、覗いていた事に気づかれたフローラ達がやってくる。


「タイヤーくん……エルちゃん……こんな遅くに……って!!」


 フローラが、エルの格好に気付き、顔が真っ赤になっていき、自分のカーディガンを脱いでエルの腰に巻きつけ、僕をキッと睨み付けた。


「ま、待って。フローラ、誤解だから本当に」

「……へんたい」


 サラが僕の耳元で小さく囁く。僕は首を大きく横に振って、必死に否定を繰り返した。





◇◇◇

 事のあらましを説明し、何とか取り繕うとセリカが僕をずっと見ている。


「な、何? セリカ? エルとの事は誤解が解けたと思うけど?」

「そうじゃないです。タイヤーくん、今はどうなの? フローラの時とは違う?」


 確かに。言われるまで、気づかなかったけど、黄色い光の時は、身体から力が溢れる感じなのに対して今は感覚が研ぎ澄まされている。


「うん、違うね。黄色の時は力強いけど、今は聴覚とか五感が鋭くなった感じだ」

「五感? 嗅覚とかも?」

「そうだね。そこの花壇の花の香りとか、あとは多分下の部屋だと思うけど、会話とか生活音も聞こえる」


 セリカの質問に僕が肯定すると、セリカやフローラが急に後退る。


「タイヤーくん。女の子の匂いを嗅ぎたいとか、盗み聞きとか、どうかと思うわよ?」

「タイヤーくん……わたし……匂わないで」

「え、え? え!? ええええぇぇぇぇぇ!!!? ご、誤解だよ! 盗み聞きじゃないし。勝手に聞こえるんだよ!! それに、フローラ大丈夫! 匂わないから! 石鹸の香りがするだけだから!! あ……」


 フローラが、身体をプルプルと震わせている。


「わ、わ、わ、わたしを匂わないでぇ~~!!」


 バチーーーーン!!!

 はい。本日三度目のビンタ頂きましたー!


「行こう、エルちゃん、セリカちゃん、ほらサラちゃんも」


 フローラは、みんなを連れて屋上から出て行ってしまう。同時に僕の身体を包んでいた光が消えて、そのまま僕は動けなくなった。


「あ、あの~~? 誰か居ませんかぁ~?」


 屋上には、僕の声だけがいつまでも響いていた。




◇◇◇

 真夜中に、ようやく身体の動きが戻った僕は屋上から降りていく。廊下の灯りは消えている。音を立てないように、慎重に慎重に歩く。

 僕は部屋の前に立つ。ふ……大丈夫。部屋を間違えて誤解される、なんて展開は無い。


 ドアも音を立てないようにゆっくり開けて部屋に入っていき僕は、灯りを点ける。

 ほら、大丈夫。僕のベッドにサラが寝てるだけ───って、なんで!?


 まだ、特に何も無い部屋、壁にかかった僕の制服。間違いなく僕の部屋。そして、ベッドで寝てるサラ。うん、最後だけがおかしい。


「サラ、サラ起きろよ。どうしてここで寝てるのさ」


 揺り起こそうと近づくと、サラは目を開ける。

 しかし、すぐに目を瞑り、唇をキュッと(しぼ)めると、僕に向かって、両手を伸ばしてくる。

 まるで、き、キスをおねだりしているような…………


「んっ…………あ…………っ」


 僕は、サラの服の襟を掴んで、そのままズルズルと引っ張り、部屋からポイッと放り出す。

 そうそう、引っ掛かるか!


 案の定、廊下から舌打ちが聞こえた。


 …………ドアの前にテーブルでも置いておこう。勝手に入って来ないように、テーブルでドアを固定する。

 あれ? 普通は僕が入って来ないように、女の子がする事じゃないかな。




◇◇◇

 翌朝、僕は、まだ眠い眼を擦りながらベッドから起きる。共同の洗面所へ向かい顔を洗ってスッキリすると、そのまま食堂に入った。


 髪の毛がボサボサの子、テーブルに頭をくっ付け寝ている子、椅子の背もたれにもたれかかりボーッとしている子。女子寮の現実を見た僕は、入り口で立っていた。


「おはよー、タイヤー君」

「おはよ……Zzz……」

「あ、フマレくん、おは」


 僕の横を通り抜けながら、挨拶をしてくれる女の子達。慣れるの早すぎだよ……


「おはようございます、タイヤー」

「タイヤーくん……おはよう……ございます。あの……昨日は……ごめんなさい」


 僕に、挨拶をしたエルとフローラは、既に制服に着替えて身だしなみが整えられている。


「タイヤー、弛んでますわ。身だしなみ整えていらっしゃい」


 エルは、そう言うとフローラを伴い食堂の奥へと入っていった。


 エル。君だけは、身だしなみ云々言っちゃ駄目だよ。

 僕は、昨日の夜のエルの姿や感触を思い出す。


 今なら踏まれたら間違いなく、スキル発動する。

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