1話 現実とは程遠い現実
とある高校の昼休み。
「おーい漣。
購買行こーぜ。」
「お、新太。
おはよう。」
「おはようって笑
もう昼休みだからな。また、ゲームしてたのか?」
「部活終わってからアニメとか色々溜まってるもん消化してたらもう朝になっててさ。」
「はぁ、これが8種のインターハイ優勝者とは思えないな。」
「陸上とこれとは関係ないべ。って、開かねぇ、誰だよ鍵閉めたやつ。…鍵も開かねーじゃん。どーなってんの。」
刹那、蒼白い光を放った魔方陣が教室の床に現れた。
突如表れた魔方陣によって教室は静寂に包まれたが、すぐにその静寂は破られた。
「きゃぁぁぁぁぁ!!!?!?!??」「なにこれなにこれどうなってんの!!??!!?!!!??!」
突然の出来事にパニックを起こす生徒たち。
そんななかでも冷静なクラスのリーダー的存在の斎勇士。
「みんな落ち着け!こんなときこそ冷静になるんだ!古河!ドアを開けてくれ!」
普通はパニックになっているはずなのに冷静で視野も狭くならないのは素直に尊敬できる。
「いやだめだ、びくともしない。」
斎が皆を落ち着かせようと努力するも届くはずなく、どんどんエスカレートしていく。
何が起こっているのか分からず呆然とするもの、窓を割ろうとするもの、必死にドアを開けようとするもの、寝ているもの。
やがて、教室は蒼白い光で包まれた。
蒼白い光で包まれていた教室が元の姿に戻ると、あれだけ騒がしかった教室は静かになっていた。
残ったのは蹴倒された机や椅子、こぼれた飲み物、食べかけの弁当やパン。
その後、この出来事は、世界中を騒然させる事件となった事件となった。
辺り一面真っ白な空間。感覚が狂いそうなくらい真っ白。
そこで漣は目を覚ました。
起き上がると目の前には白いローブを着た金髪碧目で大きな羽の生やしたとても美しい女性が立っていた。
「初めまして。私は女神イリスです!貴方達を召喚しちゃいました!」
「女神…あー、勇者やれってことね。」
「え、あ、あ、そうなんだけどね。冷静ねあなた。」
「そりゃ、驚いてはいるけど魔方陣に女神ってそれしか考えられないし。」
「ま、まぁそれはそれで話が速いわ。詳しくは向こうに行ってから言われると思うけど、私から一つプレゼントがあります!」
漣はイリスから紙のような長方形の物を受け取った。
「それは、私が作ったステータスプレートよ。
ステータスはすべて100にしてあるわ。なんで?って思うかもしれないけどそれは向こうで貰ったステータスプレートに自分の魔力を流し込んだら分かるわ。
いい、ここからはとても大事な話をするわよ。
あなたからは他の他の人とは比べ物にならない程強大な魔力を持っているの。
だから、それをあなたに渡したのよ。
あなたの力を王都の人間が知れば、分かるよね?あなたが別にいいと言うならそれは捨てて貰っても構わない。けど、向こうでまともに生活したいと思うならそれを国王に見せなさい。
以上女神イリスからのとーっても大事な忠告でした!
それじゃあ、異世界ライフを楽しんでね!」
一通り喋り終えた女神は漣に向かって笑顔で手を振りなにかを口ずさむと、漣の足元には魔方陣が浮かび上がった。
「お、おい。まて、まだ聞きたいことがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ついさっきまで一面真っ白な空間にいたのに気づいたら天高くからから落下中。
下には地面ではなく雲が広がっている。
今起こっていることを頭フル回転で整理した頃には、雲を突き抜け広大な草原が見えてきた。
平常心を取り戻した漣は女神に一言。
「くたばれくそ女神ーーーーーー!!!!」
そう叫んだあと、高さでなのか魔法でなのか分からないが漣は意識を無くした。
「あはは、れんれん楽しそうに落ちてるねぇ。」
「おい、イリスあいつを王都に送ってよかったのか?」
「ん?いいんじゃない?あの子なら大丈夫でしょ?」
「なんでわかる。」
「それは、一番君が分かっているんじゃない?自分の息子なんだから。
でもびっくりしたな、単純な魔力量では君よりあるんじゃない?」
「そりゃ、俺の息子だ。
昔から魔力を使えるように訓練させてきたんだ。本人はただのトレーニングだとしか思ってなかったけど。
知ってるか?地球にもマナってあるんだぜ、誰も気づいてないけど。
そのうち、魔法を使えることを公表して世界変えようと思ってたけど途中で死んじまったがな。
ハハハハハ。」
「君が勝手に帰ってきたんでしょ。ほんとは死んでないくせに。」
「そうだけど、お前の暴走を止めなきゃやばかったろ。あの飛行機にのってた乗客全員こっちに飛ばしたときは焦ったわ。」
「だって、玩具はたくさんあった方が楽しいでしょ?」
「ちっ、くそ女神が。」
微かに感じる冷たさ。石のような物の上に寝ているのか。
漣はゆっくりと目を開ける。
まず目に飛び込んできたのは、美しい彫刻の入った大理石の巨大な柱が2列に幾つも並んでいて、柱と柱の間にはレッドカーペットのようなものが敷かれてある。
後ろを振り向くと全長8mはある女神の像がそびえ立っていた。女神像に光が差し込みとても神々しく見えた。漣は思わず「綺麗。」と口ずさんだ。
天井はゆうに10mを越えている。
「おう、漣。
起きたか。」
「んあ?
おう、2度目のおはよう。」
漣達がいる祭壇の前には白い修道服を着た人達がこちらを見ている。
50人は軽く越えている。
その中の中心にいた立派な白髭を蓄え杖をついている老人が近づいてきた。
「よくぞ来てくれた我が勇者たちよ。」
白髭老人は手を大きく広げ漣達を歓迎した。
「おいくそじじい!どーなってんだこれは!」
「ま、まて!ここは俺に任せてくれ。」
「…ちっ。わかったよ勇士。」
冷静を欠いたクラスメイトを一瞬で黙らせる斎さんぱねーっす。
「あの、すいません。これは一体どうなっているのでしょうか。」
「…おや?女神様から説明を受けていらっしゃらないのですか?
では、ご説明いたします。」
召喚されたのは漣、新太、斎を含め教室にいた15名。
漣たちを召喚したのはフリード王国というエルニスの中で頂点に立つ国だ。
数年前までは財力、戦力など世界一を守ってきたが、ここ最近帝国が力をつけ、いまでは、帝国の戦力の方がフリード王国より上回っている。
そこで、王国が目をつけたのは異世界召喚。
漣達は王国の立場を守るために召喚された。
理由はそれだけじゃない。
最近魔物が異常な程増えてきている。
近々魔王軍が本格的に動くかもしれない。
帝国に牽制をしつつ、魔王軍との戦争も視野にいれた結果だろう。
あとは、まだ誰も攻略出来ていない七代迷宮。
その七つの迷宮には七つの大罪が一つ一つに住んでると言われている。
実際のところは分からない。なぜなら誰も最深部に到達したことがないからだ。
その七代迷宮には、一つ攻略すれば何百年も遊んで暮らせるほどの宝が眠っていると言われ、帝国、その他の国、冒険者などが攻略しようとしている。
もちろん、王国もそうだ。
今回召喚したのはこの三つの理由から。
「このような理由から勇者様方を召喚させていただきました。」
一通り説明を終えた白髭は一礼をし一歩下がる。
説明を聞いて内容を理解したのはほんのわずか(オタクのみ)。
ほとんどが理解できずに呆然としている。
そりゃ、そうだ。普通では考えられないことが起きているんだから冷静でいられる方がおかしい。
皆が混乱しているなか、必死に頭をフル回転し斎は白髭の話を理解しようとしながら話を進める。
「その、つまり、えーっと、俺…自分達は、自分達には、特別な力があって貴方達はその力が必要で、その、だから自分達は召喚?というものをされたのですか?」
「この短時間でその理解力は流石と言うべきでしょうか。
ここでは、落ち着かないと思いますので王宮に移動しましょうか。
では、ついてきてください。」
「その前に一つ質問いいですか?」
「どうぞ。」
「俺達は、もといた世界に帰ることは出来るんですか?」
「それは、私達には出来ません。召喚されたのは女神様ですので。」
「じ、じゃあ俺達は帰ることは出来ないと…。」
「女神様なら出来るかと思います。
ですが、何故帰りたいと思うのですか?
貴殿方は女神様に選ばれたのですよ?
女神様に選ばれたのに何故帰りたいなどと思うのですか?」
漣達は白髭の言葉に狂気を感じた。
白髭に案内されて大聖堂を出るとき教徒達の眼差しに違和感を感じながら外に出ると、そこには、見たことのない景色が広がっていた。
このとき、彼等は『これは夢ではない。』と、突きつけられた。
ドラゴンやエルフが飛んでいてもおかしくない大空。
魔物のような小さな物体がたくさん動いている大地。
ファンタジーなどでよく見たことのあるような建物。
どれも、現実とは程遠い景色だ。
だがこれは現実だ。
地球では空想でもこの世界では現実なのだ。
ついさっきまで普通の高校生だった彼等に突きつけられた物は大きすぎた。
力無く地面に崩れるもの、絶望に満ちた表情のもの、心のなかで期待をしているもの。
地面に触れて改めて感じた。
『これは現実である。』と。
「さぁ、王宮へ向かいましょう。」
白髭の心のない言葉は、逆に冷静になる。
大聖堂が立っているのは山の上。王宮は山の麓にある。
王宮までは20分くらいでついた。
その間会話は一言もなかった。
王宮の中に入ると白髭は王宮の人間に彼等を託し大聖堂に戻っていった。
メイドに案内されたのは食堂。
細長いテーブルに背もたれの高いイスがずらーっと並んでいる。
斎を始めに次々と座っていく。
漣は一番最後に座った。
少しするとメイドから水の入ったコップが配られた。
こっちに来て初めて地球と同じものを見て少し安心した。
これからなにが始まるのか分からず互いの顔を見たり、キョロキョロしていると、漣達が入ってきた入り口とは別の入り口からコツ、コツ、コツ、と、足音を立てながら一人の男が歩いてくる。
身長は180くらいあるだろうか、赤いマントに金色の王冠を着けている。
その男は一番大きいイスに座り、後ろには部下っぽい二人が控えている。
「初めまして。
私はクルル・フリード。
フリード王国の国王です。
君達がこの世界に来た理由はヴァーンから聞いていると思う。もちろん君達が納得していないところがあるとと思う。でも、私達に協力して欲しい。それだけ私達は追い詰められていると理解して欲しい。」
【ヴァーン・ズィン】
白髭の名前。
「あの、さっきも聞いたのですがもといた世界に帰ることは出来ないのでしょうか。」
「それは出来ない。でも必ず帰る方法を見つけよう。今も研究しているところだ。確約は出来ないが出来る限りのことをする。それは約束できる。」
「そうですか…。でも、帰れる方法があるのであれば自分達も出来ることはします。」
「それは、ありがたい。
では、次に君達の能力を知りたい。
これから配るステータスプレートというものに触れてプレートを持っている手に力をこめてみてくれ。ステータスが表示されるはずだ。」
メイドから受け取ったステータスプレートにそれぞれ力をこめてみた。
すると淡い光を放ちながら数字が表示されていく。
「ちなみに、この世界の平均はだいたい10。(初期値)勇者達は70~100だろう。もちろんそれ以下、それ以上の場合もある。
みな表示されたかな?
順番に見せてくれ。」
「じゃあ、自分から。」
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【名前】斎 勇士
【種族】人間
【職業】勇者
【レベル】1
【体力】100
【筋力】120
【耐性】150
【敏捷】100
【技術】130
【魔力】100
ーーーーーーーーーーーーーーー
すべて三桁。職業も勇者。まぁ、名前からして勇者っぽいけどね。
「おぉ!これはすごい!さぁどんどん驚かせてくれ!」
斎には及ばずとも皆チート級の能力を発揮してるなか
小鳥遊優人だけは違った。彼の能力はすべて10。いわゆる無能だ。
「ま、まぁ最初は能力が低くてもレベルを上げれば強くなれるさ。」
クルルの顔が若干歪んだように見えたのは気のせいか。
ここで、出てくるのは小鳥遊をいじめているグループのリーダー川谷裕介。
「おいおい、小鳥遊ー。なんだこれ、ステータス全部10じゃんよ。なんか壊れてんじゃない?もう一回やってもらえよ。」
小鳥遊はなにも言い返さない。
名にも言い返さないのをいいことに川谷とその取り巻きは調子に乗る。
川谷グループのせこいところは影でこそこそとやるところだ。
端から見てるとただ遊んでるようにしか見えない。
だから、回りは見て見ぬふりができる。
「だっさ。」
「ん?なんかいったか漣。」
「いや、なんでもない。」
「そうか。それよりお前どうだった?俺は全部100だったけど。」
「俺もおんなじだよ。」
なんだかんだで自分達には特別な力があるってことを実感してきている彼等。
表情も少しずつ良くなってきた。
全員のステータスを見終わったあと、夕飯まで各自用意された部屋にいるようにと言われた。
部屋のある近くは移動自由だが他のところにはいっちゃ行けないらしい。
部屋は1人部屋の8畳にトイレと洗面台がついている。
家具は靴箱にベッドと丸い机に丸い椅子、なにもない本棚とクローゼットと冷蔵庫っぽいもの、それと武器を置いておくところがある。
1人には少々広いかな?
漣は案内された部屋に入ると、すぐにベッドに倒れた。
そこで改めて実感する。現実であるということを。
少し目をつむってから起き上がり部屋を見渡す。
地球とあまり変わらない。窓の外の眺め以外は。
窓の外に広がるファンタジー。写真を撮ったら中々良さそうだ。
白っぽいレンガで作られた建物ばかり。街中には武器を持った冒険者や商人っぽい人など様々だ。
外を眺めながら現実逃避をしていると、トントンッ、と、ドアをノックする音が聞こえてきた。
ドアを開けると新太と梓がいた。
ちなみに二人とも漣の幼馴染。
「よっ、漣。
ちょっといいか。」
「おう。」
3人はそれぞれ座った。
「お前はどう思った?」
「どうってまだなんも言えないけどねぇ。」
「なんか言いたそうな顔してんな。」
「いや、食堂からここまで来るまでのあいつら見てるとゲームを楽しんでるようにしか見えないんだよね。」
「ゲームか。いきなりこんな世界に飛ばされて勇者様とか言われたらしょうがないかもね。」
漣と新太が話している間梓はずっと外を眺めていた。
「ねぇ、これって本当に現実なの?」
梓はこれを現実だと受け止めきれていなかった。
「現実だ。受け止めろ。」
「そっかぁ…もう日本には帰えれないのかぁ。」
「帰れないわけじゃないだろ。」
「「え?」」
二人は驚いた顔で漣を見る。
「な、なんだよ。
帰る方法がないなら探せばいい。探してなかったら創ればいい。それだけのことだろ。」
「簡単にいってくれちゃって。そんなことできると思うか?」
「やるさ、必ず。2年以内には帰る。それまでに必ず見つけるさ。」
「おっ格好いいねぇー。信じるからなその言葉。」
「おうよ。」
漣と新太が盛り上がってそれを見て微笑んでるのが梓。いつもの光景だ。
三人はこの世界で生き抜いて必ず日本に帰ると胸に誓った。
解散してから一時間位経ったか。窓から夕日が差し込む。これまた美しい眺めだ。
漣はずっと考えていた。これからなにをすればいいのか。
まずは、魔法を使いこなせなきゃスタートラインにすら立てない。
そこら辺は国がなんかやってくれるだろうからそのあとだ。このままずっと、この国のいいなりになってたら死ぬまでこき使われるだろうからどっかのタイミングで勇者やめないとな。
やめてからどうすればいいんだろう。
冒険者にでもなるか。
新しい魔法って作れんのかな。
全く想像できん。
「だぁー、やめだやめ!」
勢いよくベッドから飛び起き、部屋を出た。
「あっ、靴履くの忘れた。」
午後7時。
エルニスに来てから6時間が経った。
夕食のために食堂に向かう彼等の顔はこの世界に来たときよりも良くなっている。
でも、漣はこの光景が気にくわないらしい。
食堂までも地味に遠くて、メイド無しではたどり着けないだろう。
今日は食事の前に王族との挨拶がある。
国王、王妃、王子、王女が出席するらしい。
王族は皆髪が金色。
エルニスには髪を染めるという概念がないので、髪が金色なのは王族の証。
その中に1人だけ黒髪の女がいた。
黒髪の女は無表情で目を合わせると凍りつきそうな目。だがしかし、とても美しい。セミロングのさらさらとした髪の毛、白い綺麗な肌、透き通った青い目、
1枚の絵を見ているような感覚になる。
ただ、王族の中では浮いてるようだ。
「それじゃ、みんな揃ったところで私達の紹介を軽くしよう。
私はクルル。
フリード王国の国王だ。
改めてよろしく。
右から王妃のヴィクトリア。
第1王女のクリスタ。
第2王女のシャルロット。
第3王女のエルザ。
第1王子のクリストフ。
第2王子のレオン。
以上が私の妻と子供達だ。」
名前を呼ばれた順に一礼をしていく。
「では、食事を取るとしよう。」
食堂は和気藹々としている。
皆この世界に慣れてきたようだ。
王子達も意外とフレンドリーですぐに溶け込んだ。1人を除いて。
第2王女のシャルロットはいつの間にか姿を消していた。
「俺先戻ってるわ。」と、言い残した漣は食堂をあとにした。
部屋に戻る途中、外から風が吹き込んだ。
風が吹いたた方を見ると、そこにはシャルロットがいた。
彼女はどこか遠くを眺めていた。
風になびく黒髪、夜景と合間ってとても綺麗だ、この光景を写真に納めたい。
ふと、彼女の目から一滴の滴が落ちた。食堂の時の表情とは一変してとても弱々しい。
「こんなとこにいたら風邪引きますよ、お姫様。」
漣の存在に気づいたシャルロットは、弱々しい表情から冷たい表情に戻った。
視線がとても冷たい。今にも凍りつきそうだ。
「誰?」
表情だけじゃなく声も冷たい。
「今日この世界に召喚された勇者です。」
シャルロットがなにか言おうとしたとき廊下の方から彼女を呼ぶ声がしてきた。
「シャルちゃーん、どこー?」
その声を聞くと彼女は、声の聞こえた方へ向かった。
すれ違うとき微かにシャンプーの匂いがした。
「名前、教えて。」
「古河漣。」
漣の名前を聞くとシャルロットは、薄暗い廊下に消えていった。
急に名前を聞かれたので、間抜けな顔をしてしまった気がする。恥ずかしい。
別れるときかすかに微笑んでいたように見えたのは気のせいだろうか、いや、気のせいではない。
誰ですか?あの人。勇者だって。遠くで彼女と彼女を呼んでいた声の主の話しているのが聞こえてきた。
数分の出来事だったが漣にはとても長く感じた。むしろ、一生あの空間にいたかったと思ったくらいだ。
漣が余韻に浸っていると後ろからどつかれた。
「なーにしてんだ漣。
明日8時に食堂集合だってよ。」
「お、おう。」
新太にどうしたお前?って顔をされたが上手く紛らわして部屋に戻った。
部屋に戻ってからも頭は彼女のことでいっぱいだった。
陸上ばっかやって来た漣の久しぶりの恋。
これからの展開が楽しみだ。
漣はそっと目を閉じ眠りについた。
初めまして、幸乃守真冬です。
今回からなろうにて、世界最強の召喚者を書かせていただきます。
まだまだ小説を書けるレベルではないと思いますが、これからよろしくお願い致します。
幸乃守