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いまさら田中といわれても

「どうやら後三時間後に世界の終わりがやってくる」


 館内放送でそう知らせが入ったとき、ラボ全体に衝撃が走った。私は飲んでいた紅茶を白衣に零し、動揺を隠せぬまま急いで司令室へと戻った。


「馬鹿な……早すぎる!」

「奴らめ……! 我々を出し抜いて、世界を終わらせるつもりか!」

「そうはさせるか!」

 怒号が飛び交うマシンルームで、私も慌ててモニタを覗き込んだ。


「田中博士!」

「うむ。進み具合はどうだ?」

「…約七割と言ったところです。博士! 早くしないと、奴ら、あと三時間で世界を……!」

「わかってる。落ちつけ」


 部下をなだめるはずの声が、若干震えてるのに気がついた。私は腕時計を覗き込んだ。何しろ時間がない。奴らの動きからして、後三時間で世界の終わりがやってくる。何とかそれまでに研究を完成させなければ……! 私は一歩前に進み、大きく息を吸いこんだ。


「……聞け!! 奴らは我々に後三時間の猶予しか与えなかった! 全員配置につけ! 予定より二倍の速度で開発を進める!」

「了解!」


 焦りや迷いを吹っ切って、号令をかける。研究員たちが一斉に私の方を振り向き、敬礼を返した。それから館内は目まぐるしく人々が行き交い、急ピッチで研究が進められていった。


「博士! 完成です!」


 悲鳴のような歓声が聞こえたのは、それから約二時間と三十二分後だった。モニタには完成した研究作品が映し出されていた。

 間に合った。

 私は思わず椅子から立ち上がった。皆疲れた顔をしているが、達成感でいっぱいのようだ。私の周りでも眼下のマシンルームでも、一様に歓喜の和が広がっていく。


「やったぞ! 間に合った!」

「博士! おめでとうございます!」

「博士、皆に一声どうぞ」

「ありがとう」


 差し出されたマイクに思わず目が緩む。私は司令台の上に立ち、頑張ってくれた彼らを見下ろして静かに語りかけた。


「……聞いてくれ。諸君の協力もあって、我々は【世界を終わらせる極秘兵器】の開発に今日成功した! 世界を終わらせるのは向こうの研究者ではない。奴らの開発する兵器の完成はまだ三十分弱かかるだろう。勝者は我々だ。さぁ諸君、スイッチを入れろ! 我々の手で世界を終わらせようじゃないか!」

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