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異世界冒険は放課後に!  作者: 明月 光
5/7

ようこそ! 異世界へ

 目を開けると、そこはしっかりとコンクリートで舗装された部屋の中だった。


「ようこそ! 異世界へ!」


  フカフカでいかにも高級そうなソファーでくつろぎながら、沙羅先輩がそんなことを言う。


「ここって異世界なんですか?」


  俺の質問に沙羅先輩はなにも言わず、窓の外を見るように促してくる。


  俺はそれに従い、両開きの窓を開ける。


「わぁ! すっご」


  窓から見えたものは街だ。 ただ、俺のよく知る街とはだいぶ違う。 アニメとかで見る、ザ・異世界って感じの街だった。 中世風の街並みが目の前には広がっていた。街も賑わっており、ワイワイとした心地よい音が聞こえてくる。


「本当に異世界なんですね」

「うん、そうだよ!」


  沙羅先輩はソファーから立ち上がる。今気づいたけど、さっきまで着ていたうさぎの着ぐるみではなかったし、学校指定の制服でもなかった。冒険者風の服装だった 動きやすさを重視して、布面積はかなり少なく、先輩の可愛いおへそが見えている。下はミニスカートで、さっきめくれた時にホットパンツみたいなのを履いていているのが見えた。腰に剣を収めるホルダーみたいなのが付いてて、超カッコよかった。


「いやーん、悠希君がエロい目で見てくるー」


  棒読みで嫌がる先輩。


「悪いですか? そんな格好されたら見てしまいますよ。まぁ、そんなことより、その服って?」

「うん、こっちの世界で調達した服だよ。どう? 似合う?」


  先輩はその場でくるりとターンしながら、俺に見せてくる。


「はい、似合ってますよ。というか、先輩は何着ても似合うと思いますよ?」

「そう? ありがと」


  本気で言ったつもりなのに信じてもらえなかったようだ。


「それじゃ行こうか」

「どこに行くんです?」

「衣服調達」


  そう言って、先輩はドアの方へ歩いて行く。俺はそれを後ろからついて行く。


  街の中を歩いていると、なぜか俺達をみんな見てくる。いや、俺が見られていた。俺は沙羅先輩みたいに魅力的ではないのでおかしいと思ったが、俺は自分の格好を思い出した。俺は今、制服だ。珍しく珍妙な格好なのでみんな見てるのだろう。


「衣服調達って俺のってことですか?」

「それ以外になくない?」

「すいません、先輩のかと思いました」


  歩くこと数分、沙羅先輩が急に立ち止まる。俺もそれにつられて止まり、沙羅先輩の見ている店を見る。店の中には様々な服があった。まぁ俺がよく店で見るような服は一着もなかった。おしゃれというより、機能性を重視した服ばっかりだった。


  あ、Tシャツあった。やっぱりおしゃれ用じゃないのか、無地だった。


「こちらの商品は軽さを売りにしていて、尚且つ、耐火機能が付いている代物です!」


  俺が店の服を見て回っていると、女店員さんが服の説明をしてくれる。


「お客様!」

「え?」


  俺が品定めをしていると、店員さんが急に声を上げる。 俺なんか間違ったのか⁉︎


「いい目をしてらっしゃいますね! そちらの商品は、うち一番のオススメ商品でございます」


  どうやら、なんの問題もなかったようだ。俺がオロオロする姿を見て、腹を抑えながら、笑っている先輩がいなければな!


「初めての場所なんですから、こうなるのも当たり前だと思いますよ」

「うん、そうだね。ごめんごめん。まぁ、私も最初はそんな感じだったよ」

「この衣服には、魔法技能を高める機能付きの、最新衣服なんです!」


  俺と先輩との会話に割って入ってくる女店員さんに、俺は若干引き気味だった。


  ただ、一つ思ったのは、営業って大変なんだなってことだ。こんなにもしないと、客は服を買ってくれない。まぁ逆効果な気もするが。まだ高校生の俺には、関係のないことだと思うことにした。


「それじゃあー、あれください」

「ありがとうございます!」


  沙羅先輩が女店員さんに注文すると、女店員さんは、満面の笑みになる。働くって大変だな。


「はい、悠希君。あっちで着替えてきな」


  沙羅先輩が店の試着室を指差す。俺は沙羅先輩に従って、試着室に入る。 普通は、沙羅先輩が着替えてるのを、俺がドキドキして待つってのが定番だと思うけどな。


「着替えました」

「いいんじゃないかな」


  先輩が選んでくれた服は、さっき店員さんが紹介していた服だった、軽さを重視したTシャツに、先輩と同じでソードホルダーらしきものがついたズボン。ちなみに、Tシャツは耐火機能付きだ。


「やっぱり、先輩は服のセンスがありますね。こんな僕にも合っちゃう服を選んでしまうんですから」

「えっへん、凄いでしょ」


  先輩は胸を張り、自慢げにしている。


「それじゃ、行こうか」

「はい」


  どこに行くのかはわからないが、とにかくついて行く。


  前を歩いている沙羅先輩は、いつもの長い髪をポニーテールにしてたので、うなじが見える。


「なんで、俺ちょっと興奮してんだよ」

「なんか言った?」

「何も言ってません」


  先輩のうなじに興奮してましたなんて言えるわけないよなー。


  さっきからかなり歩いてるけど、先輩は何も喋らない。ちょっと気まずいので、俺は街の風景を眺める。


  ここは商業区なようで、出店がたくさんあった。


  あの子供は初めてのおつかいかな?

 

  カップルらしき美男美女がイチャついてるな。


  俺は先輩とカップルに見えるかな? 見えないな。俺と先輩じゃ釣り合わない。もちろん、俺が下だよ。


「着いたよ」


  先輩の発した言葉で、我にかえる。


  先輩の視線の先を辿ると、目の前には、さっきの出店とは比べものにならない、建物があった。その建物の周りには、イカつい男たちがゾロゾロいる。 ここってもしかして?


「ギルドだよ」


  俺が聞こうとした答えを先輩が先に答えてくれる。


「へぇー、ギルドとかもラノベとかとだいたい同じなんですね」

「そうなの? 私ラノベ読まないからわからないや。面白いの?」

「面白いですよ。今度何か貸します?」

「ありがと」

「邪魔だ邪魔だ! イチャつくなら……って沙羅じゃなねぇか! 久しぶりだな!」


  俺たちにいきなり、話しかけてきたイカつい男は沙羅先輩の知り合いだったようだ。 こんな大男にガチで睨まれたら、ちびりそうだ。


「久しぶりガイル! ガイルにしては案外手こずったようだね」

「おう! まぁこの通り無傷だが、何かとすばしっこくてよ!」

「ガイルはスピードが足りないからね。なんでその依頼を受けたの?」

「報酬がよかった! これしかねぇだろ! 」


  なんか俺忘れられてね?


「ところでよ、その隣のひょろっちいのはなんだ?」


  確かに、俺はひょろっちいけど、お前のそのボディビルダー並みの筋肉の方がイかれてんだよ。どうやったらそんな風になんの?


「この子は悠希君。私の彼氏だよ」

「え⁉︎」

「ほうほう、こいつが。沙羅の彼氏ねぇ〜」


  言葉は落ち着いてるのに、目が落ち着いねー。こいつ、絶対沙羅先輩のこと好きだろ。やっぱり、沙羅先輩は人気だなー。ってそんなこと言ってられないな。 やばい、ちょっとちびりそうだ。



 




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