9 裏切られた勇者は
ダイレクトでこの話に来た方は、一話目から読んでくれると嬉しいです
森を進みながらも、総隊長の持つ共明石は点滅を繰り返す。
受け取った緊急事態の合図は、すでに十を超えるだろう。ゆっくりと変色していく石の光に、ロールスはおそれを募らせていく。
繰り返される合図は、一体何を伝えるためのものなのだろうか。罪人に何度も逃げられた? 抵抗が激しく始末ができない? 第三者の介入?
予想を立てることはできる。が、ロールスが一番恐れているのは、予想を超える何かが起きることだ。モルドールの言葉が、再び頭の中をぐるぐると巡る。
しかし頭は別のことを考えていても、ロールスの歩調に変化はない。魔法師であるというのに、審問会の速い進行に遅れることなく追走する。
共明石に赤みが差し込む。合図の発生源まで、もうそう遠くはない。
そして深紅の明滅が途切れたとき、ロールスの鼻を、何度も嗅いだ慣れ親しんだ臭いがくすぐった。
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「え?」
理解できない現状に、素っ頓狂な声が口から洩れる。
なんでエミールは、オレに冷笑を向けているのだろうか。
なんでオレの腹から、黒い細い刃が飛び出しているのだろうか。
なんでその刃が、エミールの手から伸びているのだろうが。
焼けるような感覚に、しかしオレの脳は麻痺したように回らない。黒装束がオレの剣を除けて立ち上がるのも、何もできずにただ見送る。
「……二〇九、随分と遅い動きじゃないか」
「いや、ちょうどよかったでしょ。それに俺が何もしなかったところで、二〇六はやられなかっただろうし」
「……まあ、それもそうだが。だとしても今回は随分と我慢したものだな」
わからない。この二人は、一体何の話をしているんだ。
「最高のタイミングを待っていたからね。見ろよ、元勇者サマの顔、傑作だよ」
嘲るようにエミールは目を細め、からかうように口角を吊り上げる。
「エ、エミールさん?これって一体……」
「ありゃりゃ?どうやら勇者サマは未だに状況を理解なさってないようですねぇ……なあに、簡単なことですよ」
下卑た表情のまま、ゆっくりとオレの耳へと顔を近づけていく。
「……俺も異端審問会の一員だった、それだけだよ」
そうささやくのと同時に、オレの腹に刺さっていた剣を抜き取った。
「が……!?」
思い出したように脳が回転を再開する。
エミールは異端審問会、その告白にオレは初めて、エミールが敵であることを認識する。
逃げないと。しかしその意志に体は答えることなく、糸の切れた木人形のように地面へと崩れ落ちた。
「へえ? 毒がもう回ったのかな? 初めて使う試作品の一つだったんだけど……うん、大成功だ」
満足げな様子のエミール。オレは必死に起き上がろうとするが、まるで首から下が飾り物のように動かすことができない。しかしそれなのに右腹の、エミールに刺された傷は激しい痛みを主張し続ける。
「それにしても勇者サマって馬鹿ですよね。これから処刑するという人物に、関係のない人間を同行させると思いますか?」
エミールはオレの頭に足を乗せ、そのままぐいぐいと踏みにじってくる。
騙された。初めからエミールは、オレを殺すためのスパイだった。
オレを信じるという言葉も助けたいという言葉も全部演技。オレを騙す茶番劇でしかなかったというわけだ。
「さて、種明かしも終えたことですし、そろそろお楽しみタイムと行きますか」
突然、エミールの声音が一変、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のような、この場にはまるで合っていない陽気な声だ。
「えーっと、二〇六、アレは持ってきてくれている?」
「ああ、持ってきているが……お前は相変わらず趣味が悪い」
「どーせ殺すんだから問題ないでしょ」
そういうとエミールはオレ右手を引っ張り、這いつくばったオレの視界の内へと持ち込む。
「さて勇者サマ、俺はこれから何をするでしょーか?」
覗き込むようにしゃがむエミール。彼の手には、黒い一振りの歪な剣――いや、刃の粗いのこぎりだ。
最悪な可能性が頭に浮かぶ。
「……まさか、それでオレの腕を……」
「せいかーい! 流石勇者サマ、こんな時でも聡明でいらっしゃる」
馬鹿にしたように拍手をし、動かない右腕へとのこぎりがあてがわれる。
背中に冷たい何かが流れ込む。
「待て、やめろ……やめてくれ……」
「い、や、だ」
あっさりとのこぎりは引かれた。
「あぁぁぁァァァぁぁァァァァ!」
燃え盛るような、腹の刺し傷がかゆく思えるような凄烈な痛みが脳を突き刺す。
「そう、これだよ! これなんだよ! この声が溜まらないんだ!」
のこぎりは何度も引かれ、そのたびに皮が裂かれ肉がえぐられ神経が断たれ骨が削られる。
そして同時に、“死”というものが近づいて来ているのを理解した。
沸き上がる恐怖心に抗う術などない。右腕が完全に切られたときには、オレの正気など簡単に砕け散っていた。
「まずは一本!……あれ?勇者サマ、もう壊れちゃいました?」
額の汗を拭ったエミールは時雨の目の前で手を振るが、帰ってくるのは「いやだ……死にたくない……死にたくない……」といったうわごとのみ。
「……ちょっと、早すぎでしょ。俺まだ全然満足してないんだけど?」
ため息をつき、イラつきを隠そうともせず時雨の右腕を放り投げる。
「二〇九、趣味の時間はもう終わりか?」
「もっと楽しみたかったんだけどねえ……二〇六、連絡は済ませたの?」
「発見したとだけな。お前のが済み次第任務完了の連絡を入れるつもりだ」
「そうかぁ……あ、そうだ!」
何かを閃いたエミールは、未だぶつぶつとうわごとを続ける時雨の髪を鷲掴みして持ち上げ、その耳に口を寄せる。
「勇者サマ、最期にいいこと教えてあげますよ。……貴方を除いた他の勇者二人、確か、ユウ・サカキバラとコウスケ・アイハラでしたっけ?」
ささやく言葉に虚空を見つめていた時雨の目がエミールへと向けられる。反応有りと見て、エミールはさらに言葉を続けていく。
「魔王を倒してもらうために召喚した彼らですが、魔王を倒した後は今のあなた同じく、処分されるそうですよ?」
「……う、そ、だ……」
「信じるか信じないかはあなた次第。だけどいつの世でも、過ぎた力は邪魔でしかないとだけ言っておきましょうか」
薄ら笑いを浮かべながら、エミールは時雨の反応を待つ。しかし時雨はわめくようなこともせず、目線は再び虚空へと戻っていた。
「……なんだよつまんない。せっかく極秘情報を教えてあげたってのに、これじゃあ完全に興ざめだよ」
今度こそ興味を失ったように手を放し、エミールは地面に刺さる剣――時雨を突き刺したそれへと手を伸ばす。
エミールは知らない。時雨の瞳に映るのは、絶望などではないことを。
生まれては消えるノイズの向こうには、かつての光景――時雨の両親が、強盗に惨殺された夜が浮かんでいる。
父と母が倒れ、床に生まれる赤い湖。いつかあの二人も、彼らのように殺されてしまうのだろうか。
憎悪が掻き立たれる。そんなこと、許せるわけがない。
ならばどうするか。
生きてやる。二人の為にも、まだ、死ねない。
――あのとき、どうやって生き延びたんだっけ――
「じゃあね。殺されるために召喚された勇者サマ」
――そうだ、ひどく簡単な方法じゃないか――
何かが壊れ砕ける音とともに、鮮血が宙を舞った。
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「あぁぁぁァァァぁぁァァァァ!」
共明石に魔力し合図を送っていると、罪人の悲鳴が響いてくる。
どうやら、二〇九がいつもの悪趣味を始めたようだ。
やれやれと肩をすくめ、俺は共明石を懐にしまう。
二〇九とは長い付き合いだ。奴が暗部に入ってから、かれこれ五年くらいだろう。歳が近いからか、俺と二〇九は何かと気が合うところがある。
ただまあ、やはり今行われている、無力化した相手を嬲る趣向は共感できない。どちらかというと俺は、万全の相手を打ち負かす方が好きだ。
つまるところ戦闘狂というやつなのだろう。
(……満足できたかといえば、今回の任務はそうでもないな)
俺は元勇者との戦闘を思い出す。流石騎士団長が直に師事しただけあり、剣術、体捌き、対応力のどれをとってもかなりのレベルだ。油断があったとはいえ、倒されたときは少しだけ焦りを感じた。
しかしダメだ。二〇九に奪われたこともあるが、元勇者は、俺にとどめを刺すのをためらった時点で戦士としては完全に失格である。そんな奴を打ち負かしたところで、たいして満足心なんて感じやしない。
悲鳴が止んだので二〇九の居場所に戻ると、ちょうど彼が元勇者の腕を切り終えたところだった。
「二〇九、趣味の時間はもう終わりか?」
「もっと楽しみたかったんだけどねえ……二〇六、連絡は済ませたの?」
人も殺せないような未熟な心では、やはり二〇九の趣味には耐えられなかったのだろう。まるで無理矢理犯された女のような目だ。
「発見したとだけな。お前のが済み次第任務完了の連絡を入れるつもりだ」
無様な元勇者に軽蔑を覚えながらも、俺は二〇九に返事する。
「そうかぁ……あ、そうだ!」
そう言いながら二〇九は拳をポンと掌に打ち付け、再び転がる元勇者の方へと歩く。
また何かろくでもないことを思いついたのだろう。
二〇九は元勇者の髪を掴み上げ、耳元で何かしゃべる。
あまり長くはならないだろう。そう判断し、俺は先に本隊へと連絡を入れようと再び懐に手を突っ込むと――
赤い噴水とともに、黒剣を握った腕がぼとりと落ちた。
惚けたような声の後、苦悶の音が二〇九の口から漏れ出す。
二の腕を押さえる彼の正面には、毒で動けないはずの元勇者が立っていた。
「……な、なんであんたが……なんで動けるんだ!」
二〇九の問いかけに、元勇者は答えない。かわりに左手に持つ剣を右肩に構え、一切の躊躇なく剣撃を放つ。
二〇九は咄嗟に短剣を抜き迫る剣を迎え撃つ。
しかし鋼鉄であるはずのそれがまるで藁にでもなったのか、白刃は腕ごと短剣を分断し、二〇九の胸部を左肩から右脇腹へと斜めに切り裂いた。
「がああ!」
膝が崩れかける二〇九に対し、元勇者は再び腕を振り上げる。それを見た瞬間今までの硬直は何だったのか、一直線に二〇六へと駆けだした。
剣閃が二〇九の首を斬り落とすより一瞬早く、俺の手が二〇六へと届く。
二〇六が地面を転がるが、そんなことを気にするほどの余裕はない。
痛みに顔を歪ませる二〇九の傷を簡単に調べ、俺は軽く安心を覚える。出血はひどいが、どの傷も致命傷は免れていた。
「ぐぅぅぅ……ごめん、助かった……」
「二〇九、お前は逃げろ」
起き上がろうとする二〇九に俺は冷たく言い放つ。
「何が起きたのかわからんが、そんな傷じゃあ戦えん。無駄に命を失うより、逃げて応援を呼べ」
「……わかった」
彼も自分の状態は理解しているのだ。反論など返ってくるはずもなく、二〇九は俺に背を向ける。
「これで連絡を取れ……持てるか?」
「ああ……死なないでくれよ」
最後にそういって、二〇六は森へと消え去った。
「さて……少しはましな顔つきになったようだな」
剣を二本取り出し、たたずむ元勇者と相対する。
何故動けるのとか、そういったことはどうでもいい。今のオレにとって重要なのは任務の遂行と、この高揚感のみだ。
十秒……二十秒……お互いに向き合ったまま、お互いが微動だにしない。
三十秒……勇者の右腕が動き、未だに血のあふれ出る切断面がこちらに向けられる。
まるで無意味に見えるその動作に警戒心を強めるが、元勇者はそれ以上何もしてこない。
お互いの姿勢が多少変わったのみで、再び場に鎮静が降りる。
(まさか、ただのこけおどしなのか?)
もしそうなら、俺はまんまとはめられたことになる。
いらだちと諦観が沸き上がる。その感情のままに俺は均衡を破り、攻めの一歩を踏み出した。
次の瞬間、視界が宙返りした。
回る視界は地面を、黒い服の胴体を、木の葉と漏れる月明かりを通り過ぎる。
最後に見た者は、黒く爛々とする青年の瞳だった。
ロールスが最初に見たのは、そこら中に転がる大量の死体だった。
四肢や頭部のないもの、縦に横に二等分にされたもの、五体満足でもずたずたに切り刻まれているもの
そして今、体中に穴ぼこが空いたものが屍に追加される。血溜まりに倒れるそれの向こうには、血まみれのシグレがこちらを睨んで佇んでいた。
この惨状を、たった一人で作り出したというのか。
「……総員、戦闘準備。標的を囲み次第、一斉にかかれ」
総隊長の号令に従い、暗部は闇に紛れて素早く行動、あっという間にシグレを囲み込み、退路を断った。
シグレは周囲の暗部を一瞥するが、剣を構えることすらしない。
熟練した動きで、暗部は同時にシグレへと切りかかる。
次の瞬間、すべての暗部の背中から、黒い刃が飛び出してきた。
シグレは何もしていない。剣を下ろした状態で、何もしていないように見える。
「馬鹿な……何が起きた!?」
隊長が叫ぶが、もちろんシグレが答えることなどない。
代わりに、風が一陣吹く。
木の葉が揺れ、月光が散る。
淡く青白い光がシグレを照らしたとき、ロールスははっきりと彼の背中に、黒い異形の羽が生えているのが見えた。
「……なんだ、あれは……」
慄くように総隊長が呟く。しかしそんな総隊長とは違い、ロールスにはそれが何なのかはっきりと理解していた。
「あなた、覚者と合間見たことはあるかしら」
「いや……まさか!?」
「ええ。……背中に生えているあの羽、覚者の持つそれで間違いないわ」
覚者というのは、覚醒した神格を持つ者のことだ。
目覚めた神格は名を持ち、力の象徴として背中に羽を具現化する。
シグレの背中の羽は異形で片翼。しかしそれでも、覚者のそれに間違いなかった。
モルドールの言葉は、神託は正しかった。
「あれの相手は私がするわ。あなたたちは撤退しなさい」
「だが……」
「まだわからないの?あれはあなたたちの手に負える相手じゃない……自分の部下と同じようになりたいのかしら?」
迫力のこもった鋭い言葉に、総隊長は思わず身をすくませる。
エインズ最強と言ってもいい魔法師長エルシア・ロールス。彼女がそこまで言うということが、事態の由々しさを裏付けている。
総隊長は何も言わず踵を返し、木々の向こうへと消え去る。
ロールスはシグレの前へと進む。シグレはまだ、何かをしてくるような気配はない。
「『竜をも滅す――』《氷壁》!」
ロールスは魔法の詠唱を開始するが咄嗟に中断、右手側に氷の壁を生み出すと、甲高い音とともに何かが突き刺さった。
暗部を全滅させた黒い剣だ。
魔法の発動が一瞬でも遅れていたら、そこらに倒れる暗部と同じ運命を辿っていた。
冷や汗が流れる。シグレの神格を、その能力を見極めないと。
黒剣が外れたのを見て、シグレが動き出す。ロールスの方に向かって、一直線に走り出した。
近接戦闘はこちらに不利がある。
そう判断し、無詠唱で初級青魔法《氷矢》を放つ。数十本の透明な矢は、一斉にシグレへと襲い掛かった。
シグレは躱そうとせず、次々と矢を手に持つ剣で切り落としていく。驚くのはその速度、全くと言っていいほど、左手の動きが見えない。
あっという間にシグレは矢の壁を抜ける。しかし足止めにもならないと判断した瞬間、新たな魔法の準備を始めていた。
まっすぐにロールスへと突き進むシグレを、黄魔法《連土槍》で迎え撃つ。が、地面から生えだす槍をシグレは巧みにかわし、一本も掠らない。剣を使うことなく、シグレは槍山をも突破した。
そして、剣の届く距離までシグレが接近、驚きに目を見開くロールスを真っ二つに切り裂いた。
次の瞬間、切られた“ロールス”が溶け出しシグレの体に纏わりつく。液体のようなそれは瞬く間に氷に変化、彼の四肢を縛りつけた。
「!?」
お面のような無表情が初めて崩れる。そして拘束から逃れようともがくが、絡む氷はびくともしない。
シグレが動けないことを確認し、ロールスは木陰から歩みだす。
「シグレ、これでもうおしまいよ……なにか言い残すことはあるかしら?」
「……これで、終わりだと思うか?」
遠回しな降伏勧告に、返ってきたのは挑発するような言葉。
直後、ロールスは背後に悪寒を感じる。咄嗟に勘に従い横に跳ぶと、さっきまで立っていた場所を黒剣が通過した。
地面を転がりロールスはシグレから距離を取る。
黒剣で拘束を破壊したのだろう、氷を踏みつけながらシグレは立ち上がる。
そして切れた右腕を突き出すと暗闇から、十を超える黒剣が現れ彼の周囲で止まった。
(剣を生み出して操作する能力、といったところかしら……厄介ね)
二、三本程度なら魔法で防げるが、流石に十数本となれば躱すのも容易ではない。
(できれば使いたくなかったのだけれど……致し方ないわね)
こちらに刃を向ける無数の黒剣を眺めながら、ロールスは心の中でため息を一つ。
目を瞑り、鍵言葉を唱える。
「『解放』」
途端に体内の魔力が暴走、あふれ出た魔力は炎の奔流となり、飛来する黒剣を焼き払う。
炎が収まった先には、ロールスの背中に三対の燃え盛る羽が現れていた。
そこからの戦いは一方的なものとなる。
力の抑制を取り除いたロールスの魔法はすべてを燃やしていく。新しくシグレが黒剣を生み出そうと焼き尽くし、直接攻撃をしてきたところで炎を使って返り討ち。
その結果シグレは四肢をすべて失い、戦うことも逃げることも叶わなくなる。
決着だ。
「もう一度聞こう。最後に、何か言い残すことはあるかしら」
同じことを聞くが、返ってきたのは無言と、闘志が消えていない炯々とした睨み。
突然、シグレの腹から赤い、血を材料にしたかのように赤い剣が飛び出し、ロールスの瞳へと一直線に伸びる。
しかしすでに限界であったのだろう、後少しといったところで、赤剣は砕け散った。
(……一体、シグレは今何を考えているのかしら。こんな絶望的な状況なのに、なんで諦めない)
幾多もの戦場を駆け巡ったロールスは、しかしこんな敵を知らなかった。
(……いえ、考えても無駄なのかしらね。所詮は異世界人、それも神敵となる者の考えなんて、私には理解できるはずもない)
魔力を手元に集中させ、拳ほどの炎の玉を生み出す。
「さようなら、大罪人にして勇者であった者よ」
煌々と燃え盛る小さな炎は、シグレの体に落とされた。
読んでいただきありがとうございます
17/10/7 改稿版投稿しました