日常日記……その④
「ありがとうございました」
店内に僕の声が響く。
生きるための糧(お金)を稼ぐために学校終了後にコンビニに出向きせっせと働く。
それにしても最近、視線が痛い……自称・姉の『七条春菜』さんと自称・妹『七条緋影』さん……そして、自称・僕の母を名乗る『七条千明』さんたちの影響なのです。
「ひより君、今日も憎たらしいほど(・・・・・・・)とびっきりの笑顔でかんばってくれているね」
「あっ、店長、どうされたのですか?」
とっても柔和な雰囲気と恵比寿スマイルが印象的な店長が発注を終わらせて、レジまでやってきた……けど何だかいつもより殺伐しているような気がする。
「少し話があってね、早めに発注を終わらせたんだ」
「はい? お話ですか?」
店長からお話なんて……も、もしや、先月のドーナツ販売コンクールで販売数が全国3位になったからご褒美かな、ワクワク。
「キミ……クビ」
店長ぉぉ、それは爆弾発言だぁぁぁーっ!
「な、なななななな、なぜですかぁぁぁ!?」
心よーっ、落ち着け、り、理由があるはずだ……うーん、遅刻なし、発注も適正だし……ああっ、廃棄のお弁当を持って帰っていることかな。
「ひより君……ぼかぁーねキミのことをすごく評価していたんだ」
「だ、だったら何故ですか、僕は売上貢献を精一杯やりましたよ! いっぱいうなぎや恵方巻きも売りましたし……ドーナツのお供にコーヒーも勧めまくりました!」
「……クレームハガキにね」
ドン! と出されたクレームはがき……その数150枚。
手にとって確認してみると可愛い丸文字が多いぞ。
『あの可愛らしい店員を辞めさせないと彼の人生終わらせちゃうぞ♥』や『我らが学園のアイドルであり聖域の春菜お姉さまのご寵愛を受けようなんて、富士山の火口から二千回飛び降り自殺したあとインドに行ってニューハーフになってください、でないと店燃やします』などの数々。
うあぁぁ、これなんか『あんなにか弱くて幸薄そうな緋影さんと一緒に地下から出てくるなんて貴方は何を脅して酷い事したの! 今すぐに死なないと生まれてきたごめんさないと言わせてあげる、この人類の敵!』などが。
およよ……クビになってしまいました。
突然の最後の出勤……仕事帰りの傷心した僕にコンビニの駐車場で待ち伏せしていた私立猫の台学園の女先輩に「あたしたち! 姫百合を愛でる会の意思を受け取りなさい!」と言われて石を投げられた。
部屋につくと僕はばったりと倒れてしまった。
精神的疲労などではない……ただ、頭に当たった石の影響かも。
混沌とする意識の中で誰かが僕の部屋に入ってきた。
「兄っちゃん」
「あれっ、その声は緋影さん?」
うっそりした雰囲気、だけど何処か隔たった愛情を注いだ可愛らしい声音。
意識が朦朧として瞼を閉じていた僕は声の主が七条緋影だとなんとなく理解できた。
「怪我してるの……」
ペロッとしたの感触が具体的に頬に伝わってきた。
「緋、緋影さん」
「兄っちゃん……誰にやられたの、うちが加害者を捕まえて、少しばっかり脳をいじって一生兄っちゃんの性奴隷になるように××ライダーの生き残り怪人に頼んで改造してもらう」
そんな方向で心配してもらえるとこちらが不安になる。
突然、傷口がしみる。
ひよりは瞼をあけると黒髪のとびっきりの美少女が涙を浮かべた目を細めて、薄くリップをひいた唇をヘの字にして消毒液に浸した綿で手当をしてくれていた。
ファッションに無頓着そうな薄着姿の緋影……手に収まるそうな小さな双丘にぐっと僕の顔を埋める。
人肌の温もりと少しだけ薬品の香りが鼻腔をくすぐる、僕は緋影に覆いかぶさるように抱きしめられた。
「兄っちゃんはうちの恩人なの……だから、うちが一生面倒みてあげる。記憶がないとか貧乏だからなんて関係ない……うちの全ては兄っちゃんのもの……ぐふふ」
胸にジーンとするものがこみ上げた刹那。
消毒液とは違う香りの綿を口元にあてられた。
するとあら不思議……一瞬で意識が狩られてしまいました。
緋影の唇から最後にこぼれた言葉。
「ぐふふ……兄っちゃんと蜜月、うちと地下楽園に行こうよ……えへへ……クロロホルム……好き」
この子……病みすぎているきがするぅぅぅーっ