チョコレートコスモス
2/13
バレンタイン前日
今日もほのかにチョコレートの香りがする。
「昨日も作ってたの?」
「うん、なかなかうまく出来なくて…。明日なのにどうしよう…」
僕が好きな女の子には、好きな人がいる。
わかっていたけど、気づかないふりをしていた。
気づかないふりをしていたかった。
「明日はね、一緒に帰る約束をしたの。だから、その時に告白をしようと思って…。だから絶対失敗したくない。」
「大丈夫だと思うよ。」
口では簡単に言えるけど、実際はボロボロに傷ついてしまえばいいと思うこともある。
だけど、そんなことは言わない。
バレンタイン当日
彼女たちに会わないように、寄り道をしたり遠回りをして帰ると
家には彼女がいた。
その目には涙を溜めていた
「えっ!どうしたの?」
思わず駆け寄ると
「あのね、付き合えることになったの…!!私、彼氏って初めてで…どうしよう、嬉しい!」
「良かったじゃん」
そう微笑むと彼女も嬉しそうにした
「でね、これ、形が少し失敗しちゃったけど、いつも相談に乗ってもらっていたから…良かったら食べて!」
「ありがとう。寒いから家に帰りな」
そうして家に入り、もらった失敗チョコレートを開けると
甘い匂いが鼻から脳を突き抜けた。
一口、二口…
食べたところで涙が出てきた。
「甘ったるい」
バレンタインの日に、僕の恋は終わった。
花の形をした、チョコレートを食べながら。