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◯◯◯◯◯さん

作者: 葱使 芽々
掲載日:2025/11/21

私は昔から、自分の名前が認識できなかった

そもそも呼ばれる機会も数えるほどしかなかった

名前は認識できないが、相手がこちらを見て呼びかけていることはわかるので

これまでそうやって判別して過ごしてきた


アルバムを開いても、写真には写っていないし

特に大きな功績を立てて目立つようなこともない


自分はいてもいなくても同じの

空気のような存在だと日々感じていた


そんな中、ある町の祭りに呼ばれ

急に「歌ってください」と言われたので

ギリシャ神話の歌をひとつ、披露した


会場はやや静まり返った後

顔見知りの数人がちらほらと拍手をしてくれた


それから数日後、

歩いていると突然「あの‥」と声をかけられた

「お祭りで歌っていた方ですよね?」


「はい、そうです」と答える


相手の人についてはよく知らないが、

どこかで見かけたことがあるような気がする


勇気を出して、質問した

「あの、失礼ですが私のことをご存知で‥?」


「もちろんです!みんな昔からあなたのことを知っていますよ

 お名前は‥お祭りの時に知ったんですけどね!」


「はは、そうでしたか〜(私は自分の名前を認識できていませんけどね)

 しかし、みなさん私のことを知ってくださっているなんて

 俄かに信じられませんね‥

 祭りで歌う前はこうして声をかけられることもありませんでしたし‥」


と、率直な疑問が口をついて出てしまった


相手は少し困った表情を浮かべたので、しまった‥と思ったが

頑張って答えてくれそうな雰囲気だったので見守った


「それは〜そうですね‥

 どうかお気を悪くされないでくださいね

 実は私と同じように、あなたの存在は昔から知っていながら

 お名前を知らなかったという人が結構たくさんいるんです。

 あなたはここにいらっしゃることが当たり前で、それが日常だったので

 特段声をかける機会もなく、お名前を知らなくても問題なかったんです


 でも先日のお祭りで、お名前を知れましたし

 せっかくなので声をかけさせていただきました!

 いつもありがとうございます!!」


どゆこと?と若干咀嚼不足な部分がありつつも

反射的に「いえいえ、こちらこそいつもお世話になっております‥」とお辞儀をした


相手は帰路の方角を見たあと、こちらを笑顔で振り返り

「これからもお願いしますね!ぱんとてんさん!」と言い残して走って行った


ずっと何層にも厚い雲に覆われていた空が

少しの雲を残してサーっと晴れ、初めて

「自分は、ここにいてもいいんだ(ここにいるという選択肢があってもいい)」

と思うことができた 


まだまだ不思議なことは山ほどあるし

不可海なことも三々起こる


でもそんな世界も、自分のことも

今はなんとなく好きだ



私の名前は ぱんとてんさん

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