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カゲオトに揺れる ~少しズレた恋と、護る者の影~  作者: パミーン
第1章 誰そ彼に咲く

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8/8

第8話「掟」

8話までやっとこれました!

これが出てる頃は僕は地獄のように本業の方をやっていることでしょう。

予言通りになっているかな?


設定が甘いところ、矛盾したところがあれば教えてください。

 私の名は天宮蓮奈(あまみやはすな)。裏社会に足を踏み入れたことで見えていなかったものが見えてきた気がしている。


一つは自分の置かれている環境について。これまで生きてきて当たり前だと思っていたものがそうではなかった。私はどうやら依頼を受ける前からずっとカラスという裏社会最強の掃除人(スイーパー)に護られていたみたい。それがいつからなのか、なぜ護ってくれているのかというのは分からない。


 もう一つは私の幼馴染である葛原粕男(くずはらかすお)について。今までは向き合うことをしてこなかったけど、どうやら私は粕男のことが気になっている。でもそれが恋かどうかと言われるとまだ恋ではないと断言できる。そして粕男は何かを隠している。


 カラスとは接点がほとんどないからどうしようもないけど、粕男に関してはきちんと向き合って関わろうと思っている。けれどもここ最近は粕男の方がそれを拒否してる感じなのよね。だからこそ粕男が何かを隠しているというのが分かってしまう。


「そういうわけで今日からインターンとして2週間、事務をやってもらうことになる葛原美月(くずはらみづき)さんと葛原涼美(くずはらすずみ)さんです。双子で見分けがつかないと思うので、ストラップの色で判断してください」


 昴君が運転手となって車での通勤になって1ヵ月、今朝の朝礼で課長がインターンで来た大学生のことを紹介した。


 そういえばこの前美月ちゃんからインターンの話でメッセージをもらっていたわね。今日からだとは思わなかったわ。


「よろしくお願いします!2週間と短いですが、少しでもお役に立てるように頑張ります!」


「……よろしくお願いします」


 元気いっぱいに挨拶してくれたの美月ちゃん。相変わらず人懐っこいわね。一方、言葉数が少ない方が涼美ちゃん。感情の起伏があまりないから分かりにくいけど、この子もすごくいい子。そして私のことが大好きでずっとくっついてくるから美月ちゃん同様甘やかしてしまうのよね。


「……蓮奈お姉ちゃん、久しぶり」


 早速ぎゅっと抱き着いて離れない涼美ちゃん。ずっとこうしてたいけど、仕事があるからね。


「涼美ちゃん、気持ちは分かるけどお仕事だからね。お昼休みは一緒に過ごしましょう?」


「……分かった」


「では美月さんと涼美さんは早速営業用の資料の作成を教えます。こちらに来てください」


 課長に呼ばれた二人は教育係を紹介されて事務作業を始めた。私も最初の頃はそうだったな。懐かしいわ。


 そうやっていつものように業務が開始された。あれ?そういえば今日は粕男の姿が見えないわね。どうしたのかしら?


「今日って粕男は休みですか?」


「いえ、朝来た時にはいましたけど、朝礼前にはいませんでしたね。来て早々サボるとかあり得ませんよねー」


 同僚に聞くとどうやら朝からサボってるとは……。ホント、呆れてしまうわ。


 その時だった。美代子さんが急に大声で叫んだ。


「みんな!机の下に避難して!今すぐに!」


ズドドドドドドドド!


 いきなりすごい音と共に窓ガラスがパリンパリンと割れていく。急いで机の下に避難したけど、ずっとズドドドドと音が鳴りながら部屋中がパンパンと音を立てている。


 何これ!?銃声なの!?怖い!怖いよ!私は恐怖でずっと震えが止まらなかった。





Side???


 蓮奈達営業部が襲われる前からすでに戦いは始まっていた。カラスは屋上で上空から投下してくる分家の戦闘員達を相手にしていた。


 本来であればあっという間に殲滅できるのだが、そうはいかない。というのも戦闘員の中に分家の者が紛れていて殺してしまった場合、血の掟を破ることになってしまう。戦闘員達は皆フルフェイスのヘルメットに防弾チョッキなどの軽装備をしている。


(くそっ!見分けがつかないから殺すに殺せない。叔祖父も考えたもんだ)


 そういう訳で手加減をしながら相手を戦闘不能にするしかなく、戦闘員もただの下っ端にも関わらずそれなりに格闘の技術があって非常にやりづらいことこの上なかったのである。


 すると2時の方角から一台のヘリがやってきてビルの下の方へと降りていった。


(おいおい、まさかそのヘリで攻撃しようとしてるのか?)


 カラスの推察通り、ズドドドドとマシンガンの音がした。


(関係のない人まで巻き込むなんて……。絶対に許せない!)


 蓮奈を殺すためなら手段を選ばないという強硬策に出た叔祖父に対して完全にキレたカラスはギアを上げた。


 刀を抜き、刃と峰を逆にして「瞬雷」を繰り出した。峰打ちであれば死ぬことはない。相手が手段を選ばないというのであれば、こちらも手段を選ばない。まだまだ投下してくる戦闘員を次々と戦闘不能へと追い込む。


 そしてついに投下してくる戦闘員がいなくなった。と同時に事前に用意しておいたロケットランチャーを担ぎ、下方にいるヘリをめがけて発射した。


(使うことはないと思っていたけど、まさか使うことになるなんてね)


ドガーン!


 命中したヘリが落下していく。ヘリから戦闘員が脱出するのを確認したカラスは戦闘員が地面に着地した瞬間を狙って銃で狙撃し、戦闘不能にさせた。





 こ、怖かった……。営業部の皆も腰を抜かしている人もいれば未だに震え上がって動けない人もいる。その中で美代子さん、美月ちゃん、涼美ちゃんはテキパキと動きながら営業部の皆のケアをしている。


「蓮奈ちゃん、大丈夫だった?」


 美代子さんが来てくれた。来てくれただけでだいぶ安心することができた。


「はい、でも怖くて腰が抜けたみたいで立てないです」


「仕方ないわよ。あんなの喰らって平然としてられる方がおかしいから」


「でも美代子さんは平然としてるじゃないですか」


「いやいや、流石に私もこれはヤバいって思って隠れてたもの。とりあえず今日は仕事どころじゃなくなったわね。多分これから警察も来るし、しばらくは休みになるんじゃない?」


 その後、美代子さんの言う通り、警察が来て現場検証を始めた。同時に救急隊もやってきて私も含めた営業部の皆はケガなどがないか検査するために病院へと搬送された。


 どうやらケガ人は一人もいなかったみたい。美代子さんの指示がなったら誰かが犠牲になっていたかもしれない。そう考えるとあの時の恐怖がフラッシュバックして震え上がってしまう。


 そういえば粕男は大丈夫だったのかしら?騒動が落ち着いた後、他の階から見に来た人もいたけど、姿を現さなかったし、搬送された時もいなかった。


 その時、粕男が死んでいたら……というのが頭を過った。胸がズキンとした。そして粕男の安否が気になり、無性に不安になってきた。粕男、死んでないよね?生きてるよね?私は手に力を込めながら粕男の無事を祈った。





Side???


 天宮商事が何者かに襲撃されたというニュースは日本中を駆け巡った。当然だ。ヘリを使ってまで派手に攻撃をしたのだ。こんなことは未だかつてなかったことだ。メディアは挙って連日報道することとなるだろう。


 そのニュースをほくそ笑みながら見ていた人物がいた。葛原象次郎(くずはらしょうじろう)である。


「はっはっはっ!愉快愉快!これで本家も我々が脅威だと分かっただろう!」


 これまで裏社会最強と呼ばれてきたのは葛原本家の方だ。ずっと分家はそのおまけという立ち位置でいた。本来であれば分家にも本家に負けない逸材がいる。だからこそ、いつか陽の目を浴びるために陰でひっそりと、そして着実に実力、組織力を高めていったのだ。


「時が来たのだ!本家よりも分家の方が優れているということを分からせる時がな!」


コンコン!


「入れ!」


 象次郎の部屋がノックされ、入ってきたのは象次郎の息子、葛原幻狼(くずはらげんろう)


「親父、次の作戦を教えてくれ!本家に十分な準備をさせずに次の手を打つ。油断は禁物だからな!」


「さすがは俺の息子だ!次は天宮家を襲撃しろ!ついでに向かいに葛原本家があるから一緒に攻撃して構わない」


「いいのか?場合によっちゃあ死人が出るかもしれないぞ?血の掟に背くことになるかもしれない」


「俺はな、元々血の掟なんざ従うつもりはないんだ。別に本家に死人が出ても構わんよ。というよりそれくらいしないといつまで経っても本家と分家の関係は変わらない!これからの日本の裏社会を牛耳るの我々だ!」


「親父……、その覚悟受け取った!それなら俺達分家は血の掟を破ってでも本家を潰す!皆には伝えておく!」


「よし!その意気だ!そのまま天宮家と葛原本家を潰してこい!」


 この時象次郎は忘れていたのだ。血の掟を破るということがどういうことになるかということを。それよりも本家を潰すということのみに傾倒していた。





「ということだ。はっきり言ってバカとしか言いようがない。爺さん、どうするか決めてくれ」


 カラスの兄である豹一郎(ひょういちろう)は分家の会話の盗聴に成功し、先ほどのやりとりを祖父である虎太郎(こたろう)に聞かせていた。


「はあ、まさか身内が——しかも血の繋がった兄弟が血の掟を破るとはのお。あやつは葛原一族全員を敵に回すことになるということを忘れておる。仕方がないがこのデータを葛原の全ての一族に流してくれ。このまま評議が決まるじゃろう」


 虎太郎は肩を落とした。仕方のないことだ。血の繋がった兄弟をこれから殺さないといけなくなるからだ。


 血の掟はどんなことがあっても葛原一族同士の殺し合いを禁じている。葛原一族は別に虎太郎の本家と象次郎の分家だけではない。全国各地に葛原一族はいるのだ。それ故、血の掟の効力は絶対なのである。


 もし掟を破った場合、一族間で評議がかけられる。評議で掟を破ったと見做された場合、一族が全力をもって破った葛原家を滅ぼさないといけなくなるのだ。血の一滴も残してはいけないという一家断絶。


「これから鹿鴉雄(かげお)に天宮家と葛原家が攻撃に遭うことになることを伝える。俺達もすぐに避難だ。爺さん、婆さんと母さんを頼んだ。俺は天宮家に行って全員に避難するよう伝えてくる」


 豹一郎は電話を掛けながら家を出て天宮家に向かった。


「鹿鴉雄か!叔祖父の分家が血の掟を破った。それでこれから天宮家と葛原家が攻撃に遭う。だからお前は美鶴(みつる)雀朱(すずか)、それと蓮奈をどうにか止めて避難するようにしてくれ!あん?分家はどうなるかだって?残念だが一家断絶の評議が下るだろうよ。はあ!?ったくお前って奴は……。分かった!とりあえず避難は頼むぞ!」


 通話を切り、鹿鴉雄らしいなと思いながら豹一郎は天宮家の門を叩いた。





 私達営業部は会社から帰宅を命じられた。営業部だけじゃなく、しばらくはあのビルを使えないということなので、違うオフィスを探して見つかるまでは全社員休みとなった。


「あーあ、せっかくインターン始まったばっかりなのにこんなことになるなんて最悪だよー」


「……別にいい。私には蓮奈お姉ちゃんがいるから」


 残念がる美月ちゃんと私にぎゅっとくっついて離れない涼美ちゃん。双子なのに性格は全然違うのが面白いわよね。


「それより粕男はどうなったのかしら?何か連絡とかあった?」


「カス兄から連絡なんてくることないから分からないよ。どうせ今ごろ会社戻って大変なことになって驚いてそうだけどね」


「……カス兄はどうでもいい」


 二人とも粕男に対して興味がないのを考えると本当にクズなんだなって思うんだけど、率直な意見を聞いてみたいと思ってしまった。


「ねえ、粕男のことホントはどう思ってる?私は最近粕男が何かを隠してる気がするのよ」


「「……」」


 二人ともこちらを凝視している。え?何か変なこと言った?


「あー!もー!蓮奈お姉ちゃん!あー!でもー!」


「……ついに来た!ワクワク」


「二人ともどうしたの!?」


「こら!三人ともどこ行ってるの!課長が呼んでるわよ!これから正式に指示があるみたいよ!ほらほらさっさと行く!」


 突然美代子さんが現れて私達に課長のところに行くように促す。何かちょっと怒っていたような感じだったわね。どうしたのかしら?


 って美代子さんが二人に拳骨してる!二人ともシュンとしてる……。何があったのかしら?


「あれ~!蓮奈じゃ~ん!こんなところで何してるの~?」


 あっ!粕男だ!無事だったのね……。


「バカ!粕男のバカ!心配したんだからね!どこ行ってたのよ!」


「は、蓮奈~!こんなところで抱き着かないでくれよ~!いや~、モテる男はつらいな~!」


「はっ!何私に触れてるのよ!エッチ!」


バチン!


 自分から抱き着いたのにビンタかますなんて私ったら……。でも粕男に抱き着くなんて初めて……。


「いやー、これはいいものが見れましたなー!涼美さん!」


「……尊い」


「気持ちは分かるけどさっき言ったばっかでしょ!ほら!粕男も課長のところへ行くわよ!そのために呼んだんだから!」


 結局5人で課長のいるフロアに向かい、到着すると営業部の面々がすでに集まっていた。どうやら私達が最後だったみたい。ちょっと恥ずかしい……。


「やっと揃ったか。ちゃんと粕男君もいるな。では上からの指示を伝えます。まずは今回の天宮商事のビルは襲撃のせいで立て直す必要があります。そうなると多額の損失を出すことになる。ということで本社ビルを移すことになりました。急いで決めるということなので、それまでは特別休暇が与えられます。もちろんお給料は出ますから安心してください。ではこれにて解散します。くれぐれも道中気をつけてください。心配な人はタクシーを使っても大丈夫です。解散!」


 正式に休みになったのね。それじゃあ私は帰るとしますか。


「蓮奈ちゃん!それと美月と涼美!あなたたちはこれから私についてきて!」


「え?何かあるんですか?私は早く帰ってゆっくり……」


「詳しいことはあとで話すから!確か蓮奈ちゃんは車で送迎してもらってるのよね?」


「は、はい。どうして知ってるんですか!?」


「はあ……。色々とめんどくさいわね……。全部あとで分かるから車を呼んでもらっていい?場所はロウタイドよ!」





 ここは場末のバー『ロウタイド』。今ここには絹江、優美、蓮奈の母である華子(かこ)、美代子、美月、涼美、蓮奈の女性陣と軽男、柔男、聡、堅次郎、昴の男性陣が一堂に会していた。


「なんじゃ?合コンでもやるのか?」


ガチン!


 絹江が軽男にナイスツッコミの拳骨をかます。


「ねえ、もういい加減やめようよ!これ以上隠しても意味ないんじゃない?」


「……私も賛成」


 美月と涼美が声を上げる。蓮奈は「何?」と言った表情をしている。


「だ、そうだがどうするんだ?」


 とマスター。


「そうだなあ。堅次郎はどう思う?」


 柔男が堅次郎に問いかける。堅次郎も思い悩む。


「正直、多分全員がもう言いたいんだろうってことは分かる。でもそうなるとこの20年近い期間はどうなるんだ?っていうのもある」


「そうだよなあ。じゃあ多数決で決めよう!」


 堅次郎の回答に柔男が多数決を提案する。


「ちょ、ちょっと待ってください!私には何の話をしているのかさっぱり……」


「あ、蓮奈。とりあえずあなたはちょっとの間黙ってて」


「お、お母さん……。分かりました」


 拗ねる蓮奈。それを眺めながら目をキラキラさせる美代子。


「じゃあ全部打ち明けるでOKな人挙手!」


 蓮奈を除く全員が挙手をした。ちなみにマスターも挙手している。


「なんじゃ。みんな思いは同じじゃったのか」


「だって!もうみんな身内みたいなもんでしょ!それを一人除け者にするのも悪いし、こっちに配属されてからずっとじれったくて仕方なかったのよ!」


 痺れを切らした美代子。その意見にうんうんと頷く女性陣。


「葛原家と天宮家の総意と言えばあやつも認めるしかないじゃろう。20年ほどか?よく頑張ったと褒めてやればいい」


「それじゃ豹一郎、全部話してやってくれ」


「なんで俺?まあいいか。蓮奈ちゃん。ここから大事な話をする。心して聞いてくれ」


(ひょういちろう?なんでそれで聡さんが反応してるの?)


 疑問符が浮かびっぱなしの蓮奈であったが、大事な話ということで背筋を伸ばした。


「は、はいっ!心して聞きます!」


「まずは蓮奈ちゃんが産まれてからずっと葛原家は蓮奈ちゃんを騙してきたんだ。それを葛原家代表として謝罪する。すまなかった」


 頭を下げる葛原家の面々。蓮奈はここまでの流れに対して何一つ理解ができていなかった。


「それを言うなら私達もだ。蓮奈すまなかった。父さんと母さんを許してくれ!」


 結局全員が蓮奈に頭を下げることとなった。蓮奈はちょっとしたパニックに陥った。


「これから話すことは粕男についてだ」


 粕男という言葉を聞き、蓮奈は我に返った。

第1章は全10話となります。


残り2話!ありきたりな話ですが最後までお付き合いください!

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