第6話 嫉妬と決断
お待たせしました!(少しは読者が増えたかな?)
毎月1日更新なので正月も関係ありません!
設定が甘いところがあれば教えてください。
私の名は天宮蓮奈。私は今フラストレーションが溜まりに溜まっている。その原因は葛原粕男。クズでカスな性格で幼馴染という関係の男。中国旅行で私のことを放っておいて、他の女の子を追い回していたことに腹を立てている。
粕男の妹の美月ちゃんと一緒だったのは嬉しかったし楽しかったのよ。だから美月ちゃんに文句を言うつもりはない。粕男に対してなんで少しも相手しなかったのよ!と文句が言いたいの。
でも中国旅行が終わってからの営業活動はバディを組もうともしないで逃げるし、相変わらず色んな部署の女の子に声をかけては撃沈するという通常運転で文句を言える機会がない。いい加減にしなさい!という気持ちが沸々と湧いてきている。
「どうしたの蓮奈ちゃん?かなり機嫌が悪いみたいだけど。おばさんが話聞いてあげよっか?」
「あ、美代子さん。そうですね。聞いてほしいです」
「じゃあ今日は私とバディを組みましょう。どうせここ最近粕男とバディ組めてないみたいだから勝手に代わっても問題ないでしょ」
そうして私は美代子さんに溜まりに溜まった思いを打ち明けた。
「なるほどね~。ねえ蓮奈ちゃん。今蓮奈ちゃんが抱えている感情には名前がついてるのよ。何て感情か分かる?」
「嫉妬……でしょうか」
「うーん、まあ嫉妬もあるだろうけど、なんで嫉妬するか分かる?」
「それが分からないんです。自分でもたまになんで粕男に嫉妬してるの?って思うことがあります」
「嫉妬はね、その人のことが好きだから、自分を見てほしいって思うから嫉妬するのよ」
「ええーっ!美代子さん!それはない!絶対にないですよ!粕男のことが好きだなんて!それに私、今恋しているかもしれないんです」
「へえ~、じゃあ誰に恋してるの?」
「大唐昴君です。あの美代子さんに襲われた時に私を助けてくれた人です」
「あー、あの子ね。確かにカッコよかったわね」
「でも、これが恋なのかどうかは自分でも分からないんです」
「じゃあそれが恋じゃないってなったら粕男のことを好きって認められる?」
「それはどうか分かりませんけど、自分の中で答えは出せると思います」
「オーケー!じゃあ協力できることはしてあげる!」
「ありがとうございます」
美代子さんに相談してよかった……。結構吐き出せたし、心の整理ができた気がする。
※
Side???
カラスはいつものバーでマスターと談笑しながら酒を飲んでいた。
今、全世界の裏社会では衝撃が止まらないでいる。あの中国の有名マフィアである星廉会がたった3人の男によって殲滅されたというニュースが全世界を駆け巡ったからだ。
にわかに信じられない内容であったが、それを裏づける3本の動画が流出されたのだ。何が起きたのかは分からないが次々と人が死んでいくという不気味な映像だった。そして最後にマフィアのボス、王碗韻が死んでいる部屋で黒尽くめのタイツスーツの男が3人合流したところで映像は終了するというものだった。
その映像から様々な考察、憶測が飛び交ってはいるが、未だに真実を見つけ出せないでいる。
「やはりヒョウに撮影係を依頼してよかったな。裏社会がこんなに混乱することになるとは思わなかったぞ」
「でもマスター、流出させちゃだめでしょ。仮にでも葛原家の秘伝が見破られたりでもしたら困るどころの騒ぎじゃないよ」
「ちゃんと画質も粗くしてあるし、フレームレートも低くしている。それにお前たちの姿が映っているところは最後以外全部カットしている。真実に辿り着ける者はいないさ」
スッと新たに注文したカクテルをカラスに差し出す。
「これ編集したの兄ちゃん?」
「ああ、ヒョウに依頼して編集してもらい、流出させた。おかげで次は、我こそはっていうやつらが現れないだろう?これだけでもかなり牽制できているんだ。おそらくしばらくはどこも動けないだろう。動いたら動画のように終わるって思ってるからな」
「となると次の行動が読めるね。そこまで計算してるとは思わなかったよ、マスター」
「俺はしがないバーのマスターだ。そこまで知恵は回らんよ。お前のところの社長の依頼だよ」
「へえー、なかなか頭が回るねうちの社長は。その間に他のライバル企業を潰せってことなのかな?」
「あいにくそういう依頼は受けていない。あの社長はそういうことをする人間ではない。あくまで天宮蓮奈を守るためにお前に依頼をしただけだからな」
「真っ当な人間はそうだよね。それで、次の行動はとってもいいのかな?」
「それに関してもまだ依頼は来ていない。だがおそらくそろそろ動きがあるはずだ」
「じゃあ手を出しやすいように手筈を整えておくよ」
カラスは出されたカクテルを一気に飲み干しバーを後にした。
※
美代子さんに悩みを相談して3日、粕男とバディを組めないので美代子さんとバディを組んで営業活動をしている。溜まっていたものを吐き出せたせいなのか、この3日で5本も新規契約を取ることができた。とても調子がいいわ!
「蓮奈ちゃん調子いいじゃない!悩みを吐き出せたのがよかったのかしら?」
「それもありますけど、美代子さんの的確なサポートがあったおかげですよ!ありがとうございます!」
「蓮奈ちゃんはホントにいい子ね。じゃあもう時間だから会社戻って報告書書いて帰りましょ」
「はい!……ってあれ!昴君だ!」
「え?どこどこ?」
「ほら、あそこの交差点の右側です」
「あら、ホントだ。どうする?声かけてみる?」
「はい、彼と会えるのは難しいので会っておいた方がいいと思います」
「それじゃ彼が横断歩道を渡ったら車停めるから行っておいで。会社には直帰したってことにしとくから。報告書もやっておいてあげる」
「何から何まですみ……」
「ちょっと待って。近くに裏稼業の人間がいる。誰を狙ってるのか分からないけど、今蓮奈ちゃんを車から降ろすのは危険だわ」
「本当ですか!?」
「ええ、裏稼業の人間ってのはね、経験とか肌感で感じ取れるの。……どうやらターゲットは彼のようね。黒い服の男達に囲まれてる」
美代子さんの言うように、昴君は黒服の男達に囲まれ、元来た道を戻り、おそらく黒服の男達が用意したと思われる黒いワゴン車に乗っていった。
「美代子さんどうしよう!跡を追った方がいいんじゃないですか!?」
「私はそこまで運転が得意じゃないの。撒かれてしまう可能性の方が高いわ。」
「美代子さんはカラスと繋がってるんですよね?連絡して助けてもらうように頼んでもらえますか?」
「残念だけど、裏稼業の人間は裏社会を通してでしか仕事を請け負えないの。前回は蓮奈ちゃんという護衛対象が誘拐されたからカラスに報告してカラスが蓮奈ちゃんを護るために動いたの。今回の彼の場合はカラスの身内と言えども護衛の対象じゃないの。だから彼を救いたいなら裏社会を通して依頼するしかない」
「どうやったら依頼できるんですか!?教えてください!」
「いつかはそうなる日が来るとは思ってたけど、デビューには早すぎるわね。まあいい機会だから行こっか。バー『ロウタイド』へ」
※
Side???
ここは場末のバー『ロウタイド』。元々は活気あるバーであり、その活気づくバーの客が引き潮のように捌けた後、本当の正体を現すという意味でつけられた店名だ。だが今はもうあの時のような活気はなく、ただ裏社会の仕事依頼の場としてしか利用されていない。
「は~い、マスター。こうやって会うのは久しぶりね」
キャットが天宮蓮奈を連れてカウンターチェアに腰掛ける。慣れない蓮奈ではあったが、キャットを見ながらゆっくりとカウンターチェアに腰掛けた。
「おいおい、お前とは随分久しぶりたがこのお嬢さんにはこの店はまだまだ早いぞ」
「いずれこの子が天宮商事のトップになれば自ずと訪れることになるわ。だから別にいいでしょ」
「私のこと知ってるんですか?」
「当たり前だ。天宮堅次郎の一人娘で多くの者達から命を狙われている天宮蓮奈なんてこの世界じゃ誰もが知っているさ」
自分が裏社会じゃ知らない者がいないとは思わず蓮奈は体を震わせた。
「こらマスター!蓮奈ちゃんを怖がらせるんじゃないわよ!今日は彼女から依頼があって来たの。仕事の依頼、頼める?」
「その前にこのお嬢さんに払えるほどの金はあるのか?」
「あ、あの……、やっぱりこういう裏のお仕事って金額高いんですか?」
「危険を伴う仕事だからな。ピンからキリまであるがそれなりにする」
「大唐昴君という人なんですが、さっき攫われるのを見たんです。彼を助けていただけないでしょうか?」
「……200だな」
「そ、そんなにするんですか!?」
「これでも安くした方だぞ。本来なら500以上はする。払えないなら諦めるんだな」
「無料でやってあげますよ」
声をする方を振り返ると全身黒で覆われたタイツスーツの男が立っていた。蓮奈はすぐ後ろの存在に気づかなかったことに驚くと共に、その異様な姿に恐怖を感じた。
「なんだ、カラスか。無報酬でやるとはどういうことだ?」
カラスという声に蓮奈は目を見開いた。彼が自分の身を護ってくれている裏社会最強の掃除人だと知り、その存在に圧倒され声が出せなかった。
「昴はね、僕の身内なんだ。身内を助けるのにお金はいらないよ」
「だが依頼は依頼だ。無報酬ではだめだ」
「そうよカラス。彼女に裏社会を利用するということがどういうことか体験させないで甘やかすのはいけないわ」
マスターとキャットがカラスを諫める。
「その前に二人とも、注文は済ませたのかい?注文しないのは礼に欠けるよ」
「あ、そうだった。蓮奈ちゃん、ここはおばちゃんが出してあげるから飲みたいものを注文して」
蓮奈はキャットの声にハッとして我に返った。
「じゃ、じゃあ私はカシスオレンジで」
「私はマスターのおすすめで」
蓮奈は隣に座ったカラスと目が合った。蓮奈はその目にデジャブを感じた。普段から終始ふざけている幼馴染のことが浮かんだが蓮奈は頭を振った。そんなはずはないと。
「じゃあ僕はいつものを頼むよ」
目で「はいよ」と合図したマスターは酒を作り始めた。
「それでカラス、無報酬でやるのはダメよ。蓮奈ちゃんのためにならない」
蓮奈は困惑してしまった。無報酬でやってくれるならそれに越したことはない。普通ならそれでいいはずだ。でもまさか反対されるとは思ってもみなかったのである。
「いい?蓮奈ちゃん。裏社会っていうのは蓮奈ちゃんが思っているような場所じゃないの。平気で殺しの依頼もあるし、盗みの依頼だってある。そういう物凄い汚い世界なの。そういうところに足を踏み入れるということはそれなりにリスクを伴うの。もちろん裏稼業の人間だけじゃなくて蓮奈ちゃん自身もね。そういう覚悟の上で依頼するのがこの社会のしきたりよ」
「わ、分かりました!200万円払います!それで昴君を助けてください!」
「だ、そうだが。受けるのか?カラス」
「もちろん。でも蓮奈さん、無理はしていないですか?お金がないのに無理はよくないですよ?」
「大丈夫です!特にやることがないのでお給料は基本貯金していて払える金額はもってます」
「では、早速昴を助けに行ってくるよ。それで蓮奈さん、何か必要なら昴に伝えておくけど?」
「そ、それじゃあ一度きちんとお話したいのでお時間もらえませんか?とお伝え願えますか?」
「分かった。伝えておくよ。それじゃキャット、ちょっとの間だけ蓮奈さんの護衛ができなくなるから頼んだよ」
「ええ、任せておいて!」
キャットがカラスにそう伝えるとカラスはスッと姿を消した。
「ふう。めちゃくちゃ緊張しました。あの人がカラスなんですね。すごい威圧感を感じました」
カラスがいなくなったことで一気に脱力した蓮奈。どうやらかなり緊張していたようだ。
「そう?あいつが殺気なんて出そうもんなら一般人ならそれだけで金縛りにあうか失神するから普段通りよ」
「あいつめ、酒を頼んでおいて飲まずに出て行きやがった。よほどお嬢さんの力になりたかったんだな」
マスターのその言葉に蓮奈は疑問に思った。自分はただの護衛対象。そんな護衛対象でしかない人間の力になりたいと思うほど、カラスが自分のことを考えてくれるものなのか?と。
※
カラスは昴が攫われることになると予測していた。なぜなら今回昴を攫ったのは日本に残された星廉会の生き残りだということが明らかだったからだ。先日マスターと話していた通り、日本のみならず各国のマフィアなどの裏社会の勢力は名乗りを上げることができず動けないでいた。
そうなると星廉会の生き残りが必ず報復に出る。そして昴と蓮奈が一緒にいた時に仲間が襲われた際の会話は聞かれていた。やったのはカラス。そこから生き残りの連中はカラスが星廉会の本部を潰したと判断したのだ。
事前に昴には発信機がつけられていたのですぐに居場所を特定することができた。場所は星廉会の本部があったように山奥だった。
(へえ、こんな山奥にこんな建物があるとはね。うまく日本に潜伏できたわけだ)
今回は昴を救出することだけなので、さっさと終わらせようとカラスは建物へと足を踏み入れた。そこには星廉会のボス、王碗韻の弟である王龍明と構成員数十名。そして構成員とは明らかに違う雰囲気を醸し出している男が1名いた。
『こんばんは。こうやって出迎えてくれるとはね。嬉しい限りだよ。昴を返してもらうよ』
『バカがのこのこやってきやがったぞ!』
カラスのことをバカにして笑う龍明と構成員達。
『上を見ろ』
見上げるとそこにはロープを体中に巻かれ、ぶら下がった状態の昴がいた。
『お前が動けばロープが切れ、あの男は落ちて死ぬ。お前は黙って俺らに殺され……』
パン!プツリ
カラスはぶら下がっているロープを銃で撃ち、昴は体にロープを巻かれながらも体制を立て直してサッと着地した。
『なっ!』
『彼は僕の影武者だよ?それなりに訓練を積んでるんだから、こんなの朝飯前』
カラスはどこからか出したナイフでロープを切り裂き昴を自由にした。
「昴。蓮奈が君と会って話がしたいと言っていた。今ロウタイドにいるから話をしてくるんだ」
「先輩、それって話によっちゃあ、先輩の望まない結果になるかもしれませんよ?」
「僕の望みは蓮奈が幸せになることだよ。それが叶えばそれでいい」
カラスは顔を隠した状態でも分かるような蓮奈を思いやる表情を見せた。
「分かりました。このまま行ってきます。大丈夫だと思いますが、お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
昴がアジトを抜け出すのを確認してから再び龍明達と相対した。
『ふはははははっ!なかなか面白いじゃないか!こんな腑抜けた集団の用心棒なんてつまらんと思っていたが、お前とは楽しめそうだ』
他の構成員とは少し違う雰囲気を醸し出していた男が笑いながらカラスに言った。
『君は誰だい?星廉会の者じゃないみたいだね』
『俺は中国の裏社会最強の掃除人と呼ばれているスコーピオン。お前と対戦してみたいとずっと思っていたんだ』
『じゃあ一対一で勝負するかい?』
『それは願ったり叶ったりだ』
それを合図にカラスとスコーピオンは星廉会の生き残りを銃で撃ち始めた。
『おい!スコーピオン!裏切る気か!』
『俺はカラスと一対一で勝負したいんだよ!それにはお前らが邪魔だ!死ね!』
スコーピオンは構成員を狙いながらもカラスの動きを観察していた。
(はん、最強という割には大したことないな。これなら俺の方が上だ!)
あっという間に構成員達は血の海に沈み、残りは龍明だけとなった。
『た、頼む!俺だけは殺さないでくれ!お前たちの邪魔はしない!』
パン!
スコーピオンが容赦なく引き金を引いた。
『さあ、これで心置きなく勝負ができるな』
『自分のところのボスをあっけなく殺すなんて報酬ないけどいいの?』
『別に大したことじゃない。むしろお前と勝負できる方が価値がある』
『なるほど、少しは楽しませてよ。中国最強さん』
こうしてカラス対スコーピオンの戦いの火蓋が切られた。
お読みいただきありがとうございました。




