第4話 星廉会 前半
お待たせしました!(待っていた人いたら教えてください!)
第4話です。月1ペースはいけそうな感じです。
設定は甘めです。矛盾等あれば教えてください。
私の名は天宮蓮奈。大企業天宮商事の次期社長として期待されている社長令嬢。一人っ子で跡取りが私しかいないという理由なだけで他のライバル社から目をつけられ、裏社会の人間を使って命を狙われる毎日を送っている。
そんな私を守ってくれているのが裏社会最強の掃除人であるカラス。ただその正体が誰なのかははっきりと分かってはいない。そして営業部の私のバディの葛原美代子さん。美代子さんのコードネームはキャット。その名を聞けば震え上がるほどに恐れられているという凄腕の掃除人よ。
人材としては申し分ない二人のおかげで、この1ヵ月ほどは平穏に日々を送れている。
そしてこの1ヵ月、ずっと観察している人物がいる。それは私の不出来な幼馴染である葛原粕男。毎日女の子をナンパして撃沈され、酒浸りの生活を送っているクズでカスな男。だとずっと思って生きてきた。
でも1カ月前、入院してた私に今まで見せたこともない慈愛に満ちたあの微笑みが頭から離れない。私は粕男のことを本当は知らないんじゃないかと思い始めている。でも観察して分かったことは今までと変わらないクズでカスのままだった。
多分このままじゃ粕男の新たな一面は見られない。だから私から行動して粕男を見極めないといけない。
「ねえ美代子さん。今日から少しの間だけバディを粕男にしたいんですけどいいですか?」
営業部の皆がこちらを見て固まっている。私変なこと言ったのかしら?
「ええ!もちろんいいわよ!あの子の根性叩き直してやってちょうだい!」
興奮気味な美代子さんに気圧されながらも粕男と行動を一緒にとることになった。
「え~!蓮奈とバディ組みたくねえよ~!絶対説教しかされないじゃ~ん!」
「ほら!つべこべ言わない!行くって言ったら行くの!ついてきなさい!」
耳を引っ張りながら強行する。文句言いながらもついてくるし、何気に嬉しそうじゃない。もしかして粕男ってマゾ?
※
「ひゃ~!疲れた~!もう蓮奈とバディ組みたくない~!」
粕男の態度、言葉遣い、見た目などを指導しながら営業先を一日中回りに回った。途中で根を上げると思ったのに最後までついてきたのは褒めてあげるわ。心の中だけ、だけどね。口にすれば絶対調子に乗るから。
「じゃあ、次は飲みに行くわよ!ついてきなさい!」
美代子さんは目を輝かせながらこちらを見ているけど、それ以外の営業部の皆はまた固まっている。私そんなに変なこと言ってる!?
「蓮奈、何かおかしい!どうした!?頭でも打ったのか!?」
粕男が意味不明なことを言い始めた。あんたいつもやけ酒って言って飲みに行ってるでしょ?それについていくだけじゃない!
「頭もどこも打ってなんていないわよ。それとも何?私と飲みに行くの、そんなに嫌?」
「い、嫌ってわけじゃないんだけど~。ほら、蓮奈もプライベートは忙しいんだろ?俺に無理に合わせなくてもいいんだからさ~!」
何、こんな粕男初めて見た。すごい困った顔をしている。いつもお調子者のくせに、こんなあたふたしてる姿なんて、ふふふっ、可笑しいわね。
「な、何笑ってるんだよ~」
「ふふふっ。だってそんなあたふたする粕男見るの初めてだから。それでどうするの?行くの?行かないの?」
「分かったよ~!蓮奈についていけばいいんだろ~!行くよ~」
そうそう、最初からそう言えばいいのよ。何だろう、何か分からないけどワクワクしてきたわ!
いつもは残業を1時間ほどして帰ってる私だけど、粕男は残業なんてしないから定時で上がるのなんて本当に久しぶり。
「ねえ、粕男がいつも行ってる居酒屋に連れてってよ」
「いいけど……、ちょっと待って電話かかってきた!出ていい?」
「ええ、もちろんいいわよ。少し先で待ってるわね」
そう言って少し先に進んだところで私は思わず「あっ」と声が漏れた。なんとずっと会いたかった大唐昴君がいるじゃない!
「大唐くーん!久しぶり!元気にしてた?」
「あれ?天宮先輩じゃないですか!お久しぶりです!」
ニコッて笑顔で返す大唐君。そのスマイルがずっと見たかったの!
「今日はお一人ですか?それともどなたかとご一緒で?」
「覚えているかしら?営業部にいた会社のお荷物って言ってた葛原粕男と飲みに来たのよ」
「もちろん覚えていますよ!でも葛原さんの姿はどこにも見当たりませんよ?」
あれ?ほんとだ……。いつのまにかいなくなってる……。あいつめ!逃げやがったな!
「粕男のバカ!私をほっぽって逃げるなんて!やっぱりあいつはクズでカスだわ!」
「まあまあ、天宮先輩落ち着いて。もしなんでしたら僕が飲みのお付き合いしましょうか?」
「え?いいの?私なんかと行っても面白くもないわよ?」
「何でご自分を卑下されるんですか?天宮先輩は素晴らしい方ですよ。葛原さんの代わりにはなれませんが、今日こうやってお会いできたのも何かの縁。お付き合いしますよ」
やったー!なんだかよく分からない展開になったけど、これはこれでラッキーよね!でも何だろう……。さっき粕男と一緒に飲みに行くってなった時のようなワクワク感は起きない。それに粕男に拒否されたって感じたのかしら、ちょっとショックを受けてる自分がいる……。
※
Side???
ここは場末のバー。もうお分かりの通り、裏稼業の人間が仕事を受ける斡旋所である。今宵も一人、依頼人がやってきた。
「マスター、依頼だ」
「おや、珍しい客人だな。まだ生きてるとは思ってもいなかったぞ」
「相変わらずだなお前は。儂はまだ死ぬ気はないぞ。とりあえず一杯いただこうか」
「それで、依頼内容は?」
「アメリカの暗殺者シャドウ、それに不動組がやられたろ?そのせいで今裏社会が荒れている。その中でこの日本に乗り込んだ中国のマフィアがいるんだ。星廉会と言ってな、そいつらが日本の裏社会を乗っ取ろうとしているんだ。そいつらの壊滅が依頼内容だ」
「かなり厄介な組織じゃないか。それに対抗できるとしたら——」
マスターがそう言いかけた時、バーに客が現れた。
「やあ、マスター。何かいい……って爺ちゃん!なんでこんなところにいるの!?」
「なんだ、鹿鴉雄か。ちょうどいい。鹿鴉雄、星廉会を潰してくれないか?」
「待て、虎太郎!今カラスは天宮家の令嬢、天宮蓮奈の護衛任務中だ」
蓮奈をなんとか撒いたカラスは仕事をもらいにバーを訪れ、ちょうどそこにカラスの祖父である葛原虎太郎——コードネーム「トラ」が依頼をしに来ていたという状況である。
「マスター、とりあえず爺ちゃんの話を聞くよ。それで星廉会ってあの有名な中国マフィアだよね?そこがどうしたんだい?」
トラは事情をカラスに話した。
「なるほどね、それって天宮商事にも影響出る?」
「もちろん、というより天宮どころか他の大企業も困るだろうな。日本の企業同士で内輪揉めをしている場合ではないぞ」
「んー、じゃあ僕が動くしかないね。爺ちゃんは手伝ってくれないの?」
「この情報を掴んだのが儂だけじゃからな。依頼主が仕事を請け負うのはルール違反になってしまうからのお」
「それじゃ、天宮社長に事情を話して天宮社長からの依頼ってことにしてもらうのはどうかな?社長もそんなマフィア来られたら嫌だろうし、乗っかってくれると思うよ」
「おお!そういうことならそうしてくれ!マスター、それはルール違反にはならないか?」
「天宮社長からの依頼ということならば、虎太郎が参戦するのはOKだ」
「じゃあ決まりだね!どうする?この際だから一家総出でやっちゃう?」
「鷹司もやってくれるならだいぶ助かるな。聞いておいてもらえるか?」
葛原鷹司——コードネーム「ホーク」はカラスの父であり、トラの息子である。
「そんなの僕が言えば一つ返事で快諾してくれるよ。父さんはもちろんだけど、爺ちゃんも引退はしてても鍛錬は怠っていないんでしょ?」
「おいおい、3人が揃うなんてそんな贅沢なことはないぞ!裏社会のドリームチームじゃないか!仕事を休みにして見に行きたいくらいだ!」
普段は冷静沈着なマスターが興奮しているのも無理はない。なぜならトラは元元最強、ホークは元最強、そしてカラスは現最強の掃除人だからだ。そんな最強チームが結成されれば、敵からすれば恐ろしいの何者でもない。
「では鹿鴉雄、手筈は頼んだぞ。どうだ?今夜はここで久しぶりに語らおうじゃないか」
「はははっ!そうだね。じいちゃんとは久しぶりだからね。じゃあ僕の話からきいてもらおうかな」
こうして久しぶりに場末のバーに少し活気が戻るのであった。
※
Side大唐昴
「それでね!粕男ったら何て言ったと思う!?『山田さんのパンツ見せて~』だよ!ホント最低でしょ!?」
はあ、本当に先輩は厄介なことをしてくれるよ。折角二人きりで飲みに行くことになったんだからイチャイチャしたらって思ってたのに……。天宮先輩は酒が入り過ぎると絡み酒になって質が悪くなるんだなんて聞かされてないよ……。
「ちょっと!昴君!話聞いてる!?」
「はい、ちゃんと聞いてますよ。葛原さん最低ですね」
とりあえず分かったことは聞いた内容をオウム返ししてたら満足してくれるってことだ。でもそれにしても先輩の話ばっかりだなこの人は……。そうだ!
「天宮先輩はさっきから葛原さんの話ばっかりしてますけど、葛原さんのこと好きなんですか?」
「なっ!バッ!バカ言わないでよ!あんな奴好きでもなんでもないんだから!嫌い!嫌いよ!大嫌い!」
「そんな大声出したら周りの人に迷惑ですよ!どうしてそんなに嫌いなんですか?」
「……、絶対言わない?」
「はい、誰にも言いません!僕は口が堅いが評判なんで安心してください!」
「あいつ!私を女として見てくれないのよ!それにさっきも折角一緒に飲みに行けるってなって嬉しかったのに!逃げたのよ!そんな奴大嫌いよ!」
はあ、こっちはこっちでだいぶ拗れてるな……。もう好きって言ってるようなもんじゃん。でもこの感じだと無自覚なんだろうな。
「はあ~っ。なんかやけになってきた!この際だから聞くね!昴君がカラスなんでしょ?」
「しーっ!それは大声で絶対言わないでください。天宮先輩の命にも関わります」
マズい!こんなところでそんな話、裏稼業の誰かに聞かれてたら僕もそうだけど天宮先輩の命が危ない!
「ねえ!言いなさいよ!白状するまで今日は帰さないからね!」
「静かにしてくれたら教えます。とりあえず落ち着いて深呼吸しましょう」
「分かった。深呼吸するね。スー、ハー。スー……。スー。スー」
ふう、深呼吸一回で効くなんてやっぱり先輩の作る薬は効き目がすごいな。とりあえず睡眠薬を吸入させたからこのまま自宅まで連れて行って寝かせよう。
※
Side???
『おい、ターゲットが出て来たぞ』
『了解、このまま人気のないところまで行ったら女の方を攫うんだ』
『男の方は?』
『殺しても問題はない』
『了解』
指示役からの指示を受け、暗殺者が二人の跡をつける。
『今公園の中を通っている。人気はない』
『よし!行け!』
『了……』
『ん?どうした?返事をしろ?』
『……』
暗殺者からの返事がないことに指示役は困惑する。何か問題が起きたとしか考えられなかった。
指示役の考え通り、暗殺者は後頭部に銃口を向けられている状態だった。
『暗殺者って名乗るなら、もっと殺気を押さえないとだめだよ』
『お前、中国語が分かるのか?』
『そんなの裏稼業の者なら話せて当然でしょ。殺されたくないならどこの所属の者か教えるんだ』
『断る。答えるくらいなら死を選ぶ』
『へえ、中々優秀な暗殺者じゃないか。でも残念だけど君がどこの所属かなんてすぐ分かっちゃうんだよね』
『残念だが分かるはずがない』
『星廉会でしょ?』
『……』
『ほら、当たりだ』
『なぜ分かった?』
『冥途の土産に教えてあげよう。「カラス」と言えば分かってもらえるかな?』
『なんだと……』
暗殺者は自分の死を覚悟するのと同時に星廉会も終わったと悟った。
パン!
「爺ちゃんの情報収集能力は流石だね。もう動き出してる。しかも蓮奈を狙うとはね」
※
ううっ……。頭が痛い……。完全に二日酔いだわ。私そんなにお酒強くないのに飲み出したら止まらなくなっちゃうのよね……。
それにしてもいつのまに自分の部屋に帰ったのかしら?そうだ!昴君とお酒を飲んでる途中で眠くなっちゃったんだ。ということは昴君が介抱してくれたってこと?
「お嬢様、おはようございます。昨日は珍しく夜遅くまで飲んでいらしたのですね」
「おはよう。ねえ、昨日私どうやって部屋まで帰ったの?」
「大唐様という方がお屋敷までお嬢様を運んでくださったのです」
やっぱりそうだったんだ……。折角会えたのにお酒に負けて肝心な恋心について聞けなかった……。でも私、昴君に指摘されて少し分かったかも。
粕男はやっぱり粕男だってことが。ホント最低な奴だわ!大嫌い!
「あと、これを大唐様からお預かりしました。目が覚めたら渡してほしいと」
メイドが渡して来たのは一通の手紙だった。
『昨日はありがとうございました。楽しい時間を過ごせました。もしかしたら覚えてないかもしれませんが、天宮先輩が最後に聞いた僕がカラスかどうかの答えを書いておきますね。信じる信じないは先輩次第です。残念ですが、僕はカラスではありません。名前の中にカラスが入っていますが、ただの偶然です。でもこれだけは書いておきます。僕はカラスの関係者です。これ以上は言えません。答えは先輩が見つけてください。答えが分かったら、きっと先輩に素敵なことが起こりますよ。では、またいつかまたお会いできる日まで!』
昴君はカラスじゃないけど、カラスの関係者?ということはカラスと関わっているってことなのね?ならカラスの正体も当然知ってるってことになる。でも答えは自分で探せって書いてあるから私の力でカラスの正体を掴まないといけないわけね!
いいでしょう!天宮蓮奈、カラスの正体を絶対掴んで見せるわ!
でもその前に二日酔いをなんとかしなきゃ……。
※
Side???
早朝、まだ出社時間には早すぎる時間に天宮堅次郎は社長室でカラスが来るのを待っていた。昨晩寝る直前にメッセージが届いたからだ。
「失礼します」
カラスが社長室に入室し、昨晩起きたことを話した。
「中国で有名な星廉会が日本に乗り込んできたというのか。そして早速蓮奈を狙うとは……」
「それで社長にお願いがあります。星廉会を野放しにしておくと日本が潰れてしまいます。各企業に星廉会を理由に休戦協定の締結を取り交わしてください。それと裏社会に星廉会の壊滅を依頼してください。その依頼、葛原一族が引き受けます」
「分かった。休戦協定は問題なく進められるだろう。それよりも葛原一族総出じゃないと太刀打ちできない相手なのかい?星廉会は」
「正直にお話をしておきますね。僕一人でも十分にぶっ潰せます。ですが中国に乗り込んで本体を壊滅するにはある程度の日数が必要です。そうなると蓮奈の命が危なくなってしまいます。時間短縮と蓮奈の護衛のために一族総出で迎えます。と言っても僕と父と祖父、それと妹だけです。僕らが中国にいる間は妹と、今まで通り叔母が蓮奈の護衛に入ります」
「うーん、蓮奈にはカラスが直属でついていてほしい。他の者の腕に信用がないというわけではないよ。私はね、蓮奈にはカラス——いや鹿鴉雄君が相応しいと思っているんだ」
社長がカラスに妙案を告げた。
「ええっ!そんなの返って危なくないですか!?それにこれから手配するにしても時間とコストがかなりかかりますよ?」
「何を言ってるんだ。君のいる会社は天下の天宮商事だぞ?人や物を動かすだけのお金だけは十分にある。それに君自身も蓮奈とはあまり距離を取りたくはないだろう?そう考えると私の案は実に妙案だと思うのだが」
それに裏社会最強達が集まったチーム、この目で見てみたいというのもあるんだけどね。というマスター同様、社長の個人的な私情が入っていることをカラスは知らない。
「流石に大企業の社長ですね。分かりました。その案に乗らせていただきます。そして何があっても蓮奈は僕が守り抜きます!」
こうして星廉会壊滅作戦が幕を開けた。
お読みいただきありがとうございました。




