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第1話 正当な評価はありません

 僕は僕を助けることが出来なかった。

 誰も助けようともしなかった。

 世界のすべてが僕を追い込んだ。






 だから僕はもう世界を救わないって決めたんだ。

































 この世にはじめて怪獣が現れた時、世界の半分以上の人間が死んだ。

 次に現れたときはユーラシアと南アメリカが消えた。

 その次はアフリカと北アメリカ。

 さらにオセアニアが消えて、この世界は日本だけになった。

 世界中から難民がやってきて、日本はパニックになった。

 だけどそれはそのうちに落ち着いた。

 怪獣を倒しうる絶対兵器プーパ・エクテスが開発されたからだ。

 そして全国からパイロットが選抜された。その一人がこの僕だった。

 そりゃ選ばれた時は光栄だったさ。難民問題のせいで、ハーフだった僕は肩身が狭かったし、これで少しでも社会の偏見を消すことを貢献できるならと思った。

 国を守ることにも名誉を覚えていた。いじめられっ子だった僕にとってそれは誇りだった。他の人ができないことをやれる自分をほめてあげたくなった。



















 全部間違いだったと気がつくのにそう時間はかからなかった。

















 僕に与えられたプーパ・エクテス23号機はよく任務に耐えたと思う。毎週のように現れる怪獣を僕は斃していった。僕が配属されたのは東海道方面だったがもっとも怪獣制圧の成績が良かった。一桁ナンバーの成績に迫るレベルだったと自負している。シミュレーションでも彼らの実力に肉薄するレベルまで僕は自分を鍛え上げたと思う。


令了(はるあき)、あんたって真面目よね。そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?」


 学園の屋上で僕は女子と二人でお弁当を食べていた。


「成績が上がれば、給料も配給もよくなるからね」


 幼馴染の逸琉(いちる)はお嬢様だからわかってない。庶民の生活は過酷なのだ。俺は必死に家族に仕送りしている。


「でもそれであんたの地位って上がった?つかいつぶされてるだけじゃないの?」


 イチルは僕のことを心配そうな目で見ている。確かにいまだに階級は上がらないし、同僚たちの中では一番地位が低い。他のパイロットが皆日本人の中で唯一外国系であることが上層部にとって気に入らない何かなのはうすうす気づいているつもりだ。


「大丈夫だよ。真面目にやってればいつかはちゃんと報われる。神様だって見てるよきっと」


「そう。そうだといいわね。この神に見放された世界で神様に見初められるといいわね」


 イチルは物憂げだった。確かにこの世界は理不尽だ。だけどまだ希望はきっとある。僕はまだ諦めたりしない。





 教室の空気が嫌いだ。同じパイロットの渡辺日向(ひゅうが)がカーストトップで睨みをきかせているからだ。


「おい。ガイジン。いい加減、冠凪(かんなぎ)さんにつき纏うのはやめろ」


「僕にも盈月(えいづき)令了って名前がちゃんとあるんだ。ガイジンっていうのはやめてくれ」


「うるせぇんだよ!ガイジンはガイジンだろうが!」


 渡辺は僕の胸倉を掴んでくる。


「冠凪さん、イチルは僕の幼馴染だ。一緒にご飯食べるくらいは普通だよ」


「いいや。お前は俺たち防人の権利で彼女につき纏っているんだろう?!」


「そんな権利使ったこともない」


 いい加減に飽き飽きしてきた。僕は彼の腕の手首のツボを思い切り握る。


「ぐぅう!」


 そして怯んだところで彼の身体を回して背中で腕を取って固める。


「これ以上つかかってくるなら…ん?サイレン?」


 うぅんんとサイレンが鳴る音が響く。出動の時間だ。僕はすぐに渡辺の手を放して屋上に向かう。そこには防人を迎えに来たヘリが待っていた。僕はそれに乗り込み、他の面子を待つ。そして全員が揃ってヘリは基地へと向かった。









 プーパ・エクテスの操作は意外と難しくない。レバガチャもペダル踏みも慣れればどうってことはない。もっとも本来人体にないミサイルやら各種兵装などはコンソールやレバーをうまく操作しないといけないけど。


「しかしなんでこの兵器は人型なのかね」


『それを知る理由はあなたにはないわ。盈月三尉』


 オペレーターから僕のひとり言への小言が飛んでくる。コックピットに甲高い声が響いてウザい。


『くだらない疑問よりも作戦に集中しなさい。あなたはいつもどうでもいいことばかり考えて不真面目極まりない態度で任務にあたる癖をどうにかしたらどうなのですか?』


「俺は作戦中はちゃんと真面目にやってるんだけど。むしろ他の連中を叱れよ。僕なんてただのひとり言だろうが」


 俺以外の防人連中なんてぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋ってやがる。それをオペレーターも参謀たちも叱ったりしない。僕だけがターゲットだ。


「総員傾注。敵怪獣は現在駿河湾の上空を飛行中。レーダーからは甲種タイプと予想される。上陸前に叩け」


 参謀殿が作戦とも言えない何かを披露する。簡単に言ってくれる。


「威力偵察はなしですか?」


 僕は一応質問してみる。


「すでに目標の種別がわかっている以上無駄だ。くだらん質問をするな」


 ほんと腹立つな。一言が余計なんだよ。


「では作戦はわかったな!総員発進!」


 僕たちのプーパ・エクテスは地上に出てそのままカタパルトの上に乗る。そして順次発進していった。その数六機。これが東海道を守る全戦力である。


「お前は静かにしてろよガイジン。いつもみたいなスタンドプレイでズルしてスコアを稼ぐのは認めないからな!」


「はいはい。わかりましたよ。どうぞどうぞ。僕は大人しくしてますからがんばってくださいね」


 鬱陶しい。だけどどうせその除け者にした僕にあいつらはいつも助けを求めるのだ。


「う、うわぁああ!た、援けてくれぇ!!」


 渡辺の機体が怪獣の尻尾に掴まれていた。必死に剣を振り回しているが当たらない。他の連中は怪獣がビームを本土に向かって撃つのを阻止するために必死だった。


「言わんこっちゃない」


 僕はすぐに背中から剣を抜いて怪獣の尻尾を切り裂く。渡辺の機体はこれで自由になった。そしてそのまま怪獣の切れた尻尾の断面にパイルバンカーを突き刺してトリガーを引く。


「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」


 打ち出した針は怪獣の腹を裂いて内臓を巻き込んで飛び出てくる。そして僕はそのまま怪獣の腹に剣を突っ込んで頭の方まで一気に斬り上げてやった。


「Gaaa...」


 怪獣はそれで沈黙した。生体反応の一切が消え去った。


「撤退許可ください」


「…わ、わかった。直ちに撤退しろ」


 僕はすぐに本土の方に飛んでいく。任務は終わった。撃墜スコアは一つ増えた。












 基地に帰って待っていたのは叱責だった。


「君は仲間をなんだと思っているのかね?」


「ちゃんと助けたじゃないですか」


「そもそも捕まる前にサポートしてやるという発想はないのかね」


「彼の独断専行でしょう。僕にはそれを止める権限がない。階級も彼より低いですし」


「君は彼を仲間だと思っていないのではないのかね?防人として恥ずかしいとは思わないのか?」


「そんなのただの個人的印象でしょう。規律も作戦も守った。へまをしたのは彼の責任だ。僕には関係ない」


「全く生意気な。なぜガイジンなぞに貴重な機体の一つを預けているのか上層部も理解に苦しむよ。君には和を貴ぶような心意気がない」


 イラっとさせられる。和を貴ぶというならば普段渡辺がやっていることは一体なんだ?僕は何も悪いことをしていないのに。


「まあ今日はもういい。帰り給え。よくよく反省するように」


 僕はそれで解放になった。そして基地内部の寮の部屋に帰る。


「何も間違えてないのに、なんで間違ったことにされるんだろう」


 僕はベットで独り言ちて眠りについた。











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