カエル化現象希望
田舎育ちだったから、蛙は身近過ぎる存在だった。
だから余計に嫌いだった。
春、水を張った田んぼを蛙がぐんぐんと泳いでいく。蛙は腿が発達しているから、後ろ足だけでぐんぐん進むし、実は足がとても長い。泳いでいる姿を見るとものすごく筋肉が発達した人間のような姿にも見えて、それが余計に気持ち悪かった。田んぼに大量の卵があるのはなんだかおもしろくて好きだった。
梅雨の季節、歩いていると道を渡る蛙が私の足の上をジャンプ台にして飛んでいく。それくらい蛙だらけだった。車にひかれた蛙の死体も道にたくさんあって、雨の日の道路はいつも生臭いにおいがしていた。乾くとそれはそれで、カピカピの物体が道に張り付いて、風が吹くと転がってきたりするのも嫌だった。
夏、保育園や小学校で山登りの企画があった。山に登るとなぜか蛙の死骸だらけだった。しかも、その蛙たちがとにかく大きかった。大きな死骸は斜面で伸びた状態になっていて50㎝とか、下手をすると1mくらいあるんじゃないかと思う死骸もあった。色は白っぽくなっていた。なぜあんなに山が蛙の死骸だらけだったのか、今でも謎だ。
秋、庭の木々に鳥が蛙をぶっさしていく。我が家の木は蛙の干物だらけだった。庭仕事中に帰ると見つけると、父が飼い犬に「蛙だぞー」と居場所を教える。すると犬が一生懸命蛙を追い詰める。その様子がとてもかわいらしく、その時だけ、蛙にも感謝する気持ちが芽生えた。
そういえば、中華で蛙に挑戦したことがある。ぷりぷりしすぎて気持ち悪かった。やはり蛙は好きになれない。
夫のことも蛙くらい嫌いになれたらいいのに。