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【完結】その言葉後悔いたしませんか?  作者: 夢子


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23/23

登場人物紹介

後書きにオマケ有ります。m(__)m

○デリシア・リガーテ

12歳

リガーテ国の王女

妾妃の娘

黒髪、黒目を持つ美しい少女

小生意気な性格

大人びている


○グレン・ルヴィダ辺境伯

34歳

キリエ国の辺境伯爵

笑わない、氷の辺境伯と呼ばれている

(アレクシア)が亡くなっている

デリシアとの結婚は王命であり不本意

水色の髪と瞳


○アレン・ルヴィダ

14歳

ルヴィダ辺境伯家の子息

グレンとアレクシアの息子

母が自分のせいで亡くなったと思っている

王命による結婚に反対していた

水色の髪にアレクシアと同じ蜜色の瞳


○フラン・ツィーテ

35歳

グレンの側近であり幼馴染

はとこにあたる

薄緑色の瞳

飄々としていて掴みどころのない性格


○グレタ

53歳

メイド長

真面目、責任感が強い


○フラタ・ツィーテ

フランの父

王都のタウンハウスに居る

55歳


○エラ

15歳

平民ながらよく気がつくためデリシアつきとなる

気弱な少女


○キアラ・レンドル

20歳過ぎ

デリシアが気に入らないメイド

男爵令嬢

婚約を解消した過去有り


○チャーリー

62歳

料理人

半分引退中


○アンドレ

35歳

料理人

チャーリーの息子

デリシアの行動力に驚く


○アレクシア

薄い黄色の髪に蜜色の瞳

グレンの亡くなった妻

グレンの一つ歳下

18歳でアレンを産んだ

19歳で亡くなる


【神からのお告げ】


そろそろ起きる時間か……


朝の光が窓辺を照らし、グレンが起き上がろうかと思ったところで、ドタドタと廊下を歩くあり得ない音が響いて来た。


「グレン様、大変です!!」


「フ、フラン?」


「神の、神のお告げがあったんです!!」


「はぁあ?」


バンッと勢い良くグレンの寝室に入って来た相手は、自分の幼馴染であり、従者であるフランだった。


寝間着姿に寝ぐせが付いたままで、フランがどれ程慌てていたかが分る。


辛うじて寝間着の上に上着を着てはいるが、普段のフランではあり得ないその様子に、ただ事ではないことをグレンは理解した。


「と、とにかくフラン、落ち着け、それじゃあ話も聞けないだろう」


「何言っているんですか、貴方は馬鹿ですか! 落ち着けるわけがないでしょう! 神のお告げ! 神のお告げがあったんですよ! しっかりしてください!」


主人に対して馬鹿は無いだろうと思ったが、相手は兄の様な存在でもあるフランだ。不敬だろうとグレンは突っ込むことはしない。


フランは「まったくもう!」とぷんぷん怒りながら、グレンのベッドサイドに置いてある水差しから直接水を飲んだ。


「あ、あの、フラン? 大丈夫か?」


ゴクゴクと喉を鳴らし「ぷはー」と水差しの水を一気に飲み切ったフランに、恐る恐る声を掛ける。


余りにも普段のフランとは違い過ぎて、グレンはちょっとだけフランの事が恐ろしくなっていた。


「神が言ったんです。私の枕元に立って」


「はっ?」


何を言っているんだコイツ?


グレンのフランを見つめる目が鋭くなる。


だけどそんな主人の様子など気にすることなく、フランの話は続く。


「グレン様のせいで話が進まないと……」


「はっ?」


「だからグレン様のお尻を叩いて話しを進めろと、従者であり幼馴染な自分だからこそ、その役目を引き受けろと」


「はっ?」


フランの言葉の意味が分からず、間抜けな声ばかりが出る。


けれどフランの目つきが一層鋭くなったことで、フランの言葉が本気であると分かった。


「さあ、グレン様、お尻を出してください、私が力一杯そのお尻を叩かせて頂きます。ご覚悟を!」


「はぁ? ちょ、ちょっとまて、フラン、手に持っているのは靴ベラだろうが、それで俺を叩く気か?」


「当たり前です。グレン様の鍛えあげられた尻を私の手でたたけば、私の手が痛んでしまうではないですか! さあ、早く尻を出してください! これは神からの指示なのですよ!」


靴ベラを片手に持ち、もう一方の手に当てパチンパチンと音を鳴らしながらフランが近づいてくる。


その顔には薄っすらと笑顔が浮かんでおり、途轍もなく気持ち悪く、何か悪い霊にでも取り付かれたのではないかと疑うレベルだ。


「フ、フラン、落ち着け、お前に神のお告げが降りてくるわけがないだろう! 勘違いだ! 絶対に違う!」


「フフフッ、グレン様、逃げようとしても無駄ですよ、扉は死守してあります。この屋敷の皆もまた神には忠実ですからね……」


ニヤリと笑うフランの視線の先には寝室の扉があり、そこにはこの屋敷のメイド長であるグレタ、料理人のチャーリー、アンドレ、それにデリシア付きのエラまで揃っていて


それぞれはたき、フライパン、フライ返し、箒と、グレンの尻を狙うであろう獲物を持って構えている。


「グレン様、さあ、早く! さあ、さあ、尻を出してください!」


「やめろ! フラン! 止めるんだ―――――!」







「……ン」


「……レン」


「グレン!」


「ハッ!」


目を覚ますと、そこは夫婦の寝室だった。


グレンの横には愛らしい妻であるデリシアがいて、黒水晶のような美しい瞳が心配気に揺れていた。


「デリシア……?」


「大丈夫? 凄く魘されていたわよ」


デリシアが嫁いで来てから早五年が経った。


幼かったデリシアは成長し、誰もが見惚れるような美しい女性となり、グレンとは本当の夫婦として生活をしている。


リガーテ国の王族が持つ黒髪、黒目は変わらず美しく輝き、持って生まれた肌の色の白さは透き通る様で、清楚さの中に妖艶さをも醸し出していて魅力的だ。


結婚が決まった当初、幼妻ということで陰口をたたいていた者たちも、デリシアのその美貌と教養の高さから何も言える事がなくなったのか、悪い噂話など聞くことも無くなった。


夜会に出ればその美しさから人目を引き、誰とでも会話を成立させることが出来るデリシアは、辺境の地に咲く美しい百合だと称えられている。


そんな自慢の妻が魘されていたグレンを心配し、額に手を置き汗を拭ってくれているのだ。


悪夢を見た気持ち悪さも一瞬で消え去った。


「フランが、俺の尻を……」


「フランがグレンのお尻を? まあ、ウフフ……一体どんな夢を見ていたのよ」


クスクスと笑うデリシアが可愛くって、グレンは引き寄せ自分の胸にしまい込む。


デリシアの甘い香りと体温を感じ、グレンは一層幸せを実感し、結婚できて良かったと安堵する。


「ああ、幸せだ……君がいてくれて、心が安らぐよ」


「まあ、初夜の夜に愛人を勧めた人が言う言葉とは思えないわね」


「シア、もうあの日の事は忘れてくれ、思い出すと穴にでも入りたいぐらいだ」


「ウフフ……絶対に忘れないし、ずっと貴方に言い続けるわよ。私との結婚を後悔させないためにもね」


グレンを揶揄うデリシアが可愛くって、グレンはギュッとデリシアを抱きしめる。


自分の愛情がどこまで深いのか分かって貰おうと、口づけを交わすため顔を寄せようとした途端、デリシアはパッとグレンから離れ起き上がった。


「さあ、そろそろ起きましょう。アレクシアも戻って来る時間よ」


「……もうそんな時間か……残念だが起きるか、それにアレクシアからの報告も聞かなければならないしな」


アレクシアは夜になるとルヴィダ辺境伯領の見回りに飛んでくれている。


デリシアが成長したことでアレクシアの力もかなり強くなり、ルヴィダ辺境伯領内なら自由に飛べるようになったし、デリシアが活動する昼間の間ならば、アレクシアの気持ち次第で姿を現すことも可能になった。


デリシアは大人になったとはいえまだ十七歳、能力値はまだ上がるだろう。

なのできっとアレクシアが出来ることも増えるはずだ。


ルヴィダ辺境伯領の為に自分に出来ることがある。


それが嬉しくてたまらないアレクシアを、グレンもデリシアも愛おしく感じていた。



「おはようございます、グレン様、デリシア様、お目覚めのお時間ですよ」


扉の外からフランの声が聞こえ、グレンの肩がびくりと揺れる。


それを見てデリシアはクスクスと笑い、グレンの頬に口付けを落すと


「私の可愛い旦那様、また後でね」


と言い残し、自身の部屋に繋がる扉へと向かっていく。


「はあー、本当にデリシアには敵わないな……」


ポツリと零れたグレンの言葉は本心で、幸せ過ぎる今の生活を大切に思うグレンが、デリシアとの結婚を後悔するはずなど絶対に無いのだった。


おわり

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